断易を基礎づける
・「当てる」をめざして
断易に興味をもちを習得したいその動機は、他の占術よりもはっきりと「当てる」ことができるという点に魅力を感じてのことと思われます。わかりやすく白黒はっきり出る特徴が断易であると通説されるのがその理由のようです。
確かに占いである限り当てることはその1丁目1番地であるわけで、そのような動機を否定するつもりはもちろんありません。ただし、そのために大切なこととして、何が必要なのか?そのスキルについてきちんと解説されているものをこれまで見たことがありません。
・構造と解釈、その両者を一体化させる
断易は、易卦の成り立ち、その特徴にしたがい帯電する十二支のエネルギーを割り当てて展開していくことが大前提になっています。
断易で占うとは、この時に、共時律を前提にして、パターン化されたシンボルとなっている易卦(=得卦)のシステムを見定めて、「意味論的類似性」を道具立てにし現在の状況からその成り行きと変化を予測します。
易卦はシステムですから、そのコードから成り立っている構造がありますので、どういった運気のメカニズムが働いているかを見破るために、断易のルールである法則を知る必要が出てきます。この法則とは、「構文」と置き換えてよく、この構文となる断易の原則をまずはしっかり押さえて、その原理から意味を解読する力を養う必要が出てきます。
それは、どういうことかと言いますと、構文をつかみ構造を見破って、さらにその構造に問いを立てたテーマの背景である文脈にその得卦を載せ、初めてそこから「何が言いたいのか」をキャッチできる、ということを「意味」します。意味を見出すとは、真相を知るということです。
断易は、システムとしてその機能的な作用を表現しているゆえに、ドライにに見えるため、得卦をそのまま実在するエネルギーの変化とみなし、現実における物理的な現象として働きかけるとみなしがちです。
しかし、正確にいうと、そこに落とし穴が潜んでいます。
得卦は、物理的現象として具体性をもって顕れるようになる、その構図の骨格を仮想的に示しているとみなすべきです。
考えなければならないこと、それは現象として現れる背後にあり行為を動機づける、人間のもつ自由意志をどのように含有させ、得卦に反映させるかです。そのとき占いたいその心の動機となる感情を無視できません。
断易は感情を一種のエネルギーとして捉えるので、なぜ、占うに至ったのかその背景についての情的衝動が問題視されなければならず、占いたいひとの心理的背景から発現した易卦に、あたかも生きたものとして、息を吹き入れた、その「易神」と対話しているという感覚を養わなければなりません。いわゆる「卦情」を見るということになります。
これが、かねてより僕の言う「易神と対話せよ」という意味になります。
まさに「構造」と「解釈」が表裏一体となり、易神が語ってくるという実感があって、初めて確信をもって未来の行く末を決定的にイメージ化できるのです。
・純粋認識と実践認識を見極める
さらに大切なポイントを申しあげます。
読み方を問題とするよりも、実は、「易卦の出現」したその易神の語り具合を察知するということが重要になるのですが、それというのも、問占者の感情、深層にある潜在的な意識状態に合わせて易神が語ってくるので、テーマである占的に対し問占者が問題としている視点を見極め、問占者と関与させて回答しているのか、あるいは客観的にその事実を解説しているのかのニュアンスの違いをしっかりと掴み、得卦がそのどちらを鏡のように写しているかを見定めなければなりません。つまり問占者の奥深い心の叫びに対し、どのような立場から易神が話を持ちかけているのかを聞き取るように、「問占者」=(易神)=「事態」を一致させ、一直線上に結びつける力が必要になります。
このように得卦の示した内容と占いを必要とした文脈を完全一致させ、正確に易神の語っている内容を理解することで、テーマのニュアンスを捉えるだけでなく、新たに現状認識から視点を変化させ意識転換を図る筋を見つけ、いかなる行動をすればいいか、占的であるテーマとなった問題を見据えて見直し、たとえば目的性を意識し、より価値を高めるための行動や対策へと発展させる方法が示されていないか、テーマに対する態度を変化させ決定づけるための開運法として読み取ることができるものになったりします。
これが分かれば客観的態度を越え、新たに別の行動を起こし働きかけていくための方針決定の方策が導かれていくのです。当てるだけではない占いに変化します。
この判断へとつなぐための序章として簡単な一例を挙げます。
そもそも、どのような状況なのかを知りたいだけであれば、相生相剋などの関係性の位相は捨てなければなりませんが、何らかの形で自分自身が目的を実現させていきたい希望がある場合は、相生相剋は無視できません。
こうした問占者が求めている姿勢について吟味しなければ、得卦を見誤ることに繋がり、混乱をもたらすことは必至です。
断易の扱い方についての極意の一端をお話しいたしました。
研究者のご参考になれば、幸いです。