失敗への糾弾を温かいエールに変えていきたいのです。
我々の研究室は「化学安全」を専門にしていて、その研究対象には爆発性を持つ化学物質も含まれる。
その代表例の1つとして挙げられるのが、ロケット推進剤などに用いられる固体・液体燃料である。そうした背景から、当研究室では宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも繋がりがあってお世話になっている。
先日、そのJAXAのある施設を見学する機会を頂いた。普段一般公開されている施設はもとより、特別な関係性があるからこそご案内いただいた場所もあって、大変貴重な機会だった。
こうして見学をして思ったことは、一般の我々がイメージしているロケット打ち上げの様子(地面に向かって火炎を噴いて煙を出しながら飛んでいく様子)を見ても、具体的にどのような機器が使われて宇宙に向かって飛んでいくのか、あまり現実味を持って感じられないが、それを間近で見せられると、どことなく「手作り感」というか、「これがエンジニアリングの世界かぁ」と思わずにはいられない、ということだった。
この10月12日に、JAXAはイプシロンロケット6号機の打ち上げを試み、失敗(指令破壊)した。
こうした宇宙開発分野おいても、それに限らずあらゆる新技術開発の現場でも、失敗はつきものである。そのような失敗を繰り返しながら、成功するまで試み続けることが大事なのだと思う。
しかしながら日本においては、まだまだそのような失敗を許容しない世の中の風潮があるような気がしてならない。
確かに大きなお金(税金)がかかっている大きなプロジェクトだから、失敗しない方がいいのは確かだ。でも、その失敗がなければ最後の成功も無いのであって、失敗したことをいちいち糾弾していたらプロジェクトは一向に前に進まないだろう。
また、このような派手な失敗は一般に広く知れ渡るが、その裏には表に出ていない失敗も多数あるはずだ。
だとすれば、なおのこと失敗を気にしている場合ではないことになる。失敗は少ない方が良いのだけれど、失敗したことを責め立てるような社会風潮には大いに問題があると思う。
日本がもっと、失敗を許容して温かいエールを送れるような人に溢れた社会になれば、皆が生きやすい社会に繋がるのではないか、と思った。