No.2 神の島へ
「もういい加減、こちらに来なさい。こんなに呼んでいるんだから、起きたらすぐにこちら(久高島)向かいなさい。」
去年、2023年の9月初め、夢の中で女性の声がしました。
久高島とは、琉球をつくった"アマミキヨ"という女神が降り立ったとされる、沖縄では『神の島』と言われる島です。
「こんなにもサインを送っているんだから、今日起きたら、向かいなさい」
実は1ヶ月ほど前から、久高島に行きたいというゲストが来たり、youtubeで久高島の動画が出てきたり、久高島が頭によぎることが多くなっていました。
「でも、今日もゲストの朝食もあるし、掃除もしないといけないし、そんな時間はなさそうです」
「そこは何とかしてあげる、いいから向かいなさい。そして、"あの場所"に行きなさい」
「"あの場所"って、"光の降りる場所"ですか?でも私、その場所知らないです。地図にも載っていないし」
「それは大丈夫、着いたらちゃんと導いてあげる。だから、今回は歩いて周りなさい。自転車とか乗っちゃダメ。
あと、出雲に行った時に持ち帰った『稲佐の浜』の砂があるでしょ、あれを持って行きなさい。久高島に置いていくわけではないけど、持ち歩きなさい。」
と、そこで目が覚めました。
神の島、久高島。そこには目を閉じても光が見えるという場所があると、ラジオか何かで聞いたことがありました。以前それを聞いた時、ネットで調べましたが、そんな場所があるとはどこにも載っていませんでした。
「でも、これは行かないと本当に怒られる…」
と思い、急いでゲストの朝食や掃除を終わらせ、『稲佐の浜』の砂が入った小袋を鞄に入れ、車で久高島行きのフェリー乗り場へ向かいました。(当宿から1時間以上は掛かります)
何とか、11時発のフェリーの3分前に安座間港に着き、ギリギリで乗り込むことができました。
10年ほど前に、一度だけ行ったことのある久高島。
その当時読んでいた、よしもとばななさんのエッセイでも度々出てきていたので、興味が湧いて友人と日帰りでサイクリングを楽しんで帰りました。(久高島は、自転車や車で周遊するのが一般的です)
神秘的だったり特別なことは起こらず、自分にはそういう縁がないのだろうと思っていました。
去年のその日は晴れて暑く、でも海は穏やかで、久高島の徳仁港に近づくと海の水色がとてもキレイでした。
「さて、どうしたらいいんだろう。取り合えず急いで来てお腹も空いたし、ぜんざいでも食べて考えよう」
と、港の近くにあるパーラーで、美味しそうなお餅などが乗った氷ぜんざいを注文しました。それを窓辺で食べようとした瞬間、窓の外を知り合いの女性が通り過ぎました。
彼女とは7月の下旬に知り合ったばっかり。彼女の旦那さんはよしもとばななさんのお友達で、不思議なチカラを使ってヒーリングをする人でした。(沖縄本島に在住のご夫婦です)
過去にそのヒーリングを受けたという友人に勧められ、7月に私も施術を受けたばかりでした。
「なんて不思議な偶然、こんなところ会うなんて…」
そしてぜんざいを食べ終え、気の向くままに歩くことにしました。
通常の観光客とは真逆に、住宅街を寄り道しながら、一番奥にある御嶽(うたき)を歩いて目指すことにしました。
途中、気になる場所にいくつか立ち寄りながら、一番奥にある有名な御嶽に着きました。着いて、その御嶽に手を合わせてみましたが、特に何も起こりませんでした。
もう港にゆっくりと引き返そう。そう思い、来た道をまた戻ろうとした時、地図にも載っていない、草だらけの農道がとても気になりました。
(久高島にある御嶽や観光名所は、基本的にはちゃんと地図に載っていたり看板があったりと整備されています)
「ここに進むべきかもしれない」
膝あたりまで草が伸びた農道を進むと、農道の奥には林の中にぽっかりとした空間がありました。そして、そこには小さい四角の石板のようなものが置いてあり、木々の間から木漏れ日がちょうど石板に差し込んでいました。
「光が降りる場所は、ここかもしれない」
そう思い、目を閉じて手を合わせました。そこでは鳥の声なのか、「ホーホー」という不思議な鳴き声が聞こえてきました。
ただ、それ以上のことは特に起こらず、取り合えずやるだけはやった、ミッションは達成した気分になり、港に戻って食堂に立ち寄りました。
私が食堂に入ろうとすると、先ほどぜんざいの時に見かけた女性がちょうど出てきました。
驚いて、彼女と目が合うと
「あ、こんにちは、この前の」
と、気づいてくれました。
「主人もこの食堂の中にいますよ」
と、教えてくれました。
食堂にはヒーリングを施術してくれた旦那さんが座っていて、話掛けてみると向こうも私のことを覚えていてくれました。
「僕たちは何となく今朝思いついて、朝一番の便で久高島に来たんです。僕は多分10年ぶり、奥さんは数年ぶりなんです。こんなタイミングで会うなんて、奇遇ですね。」
と、言いました。私は今朝不思議な夢を見てここに来たこと、そして久高島に興味をもったキッカケはよしもとばななさんだと言うことを伝えると、その旦那さんも不思議そうな顔をしました。
私とそのご夫婦は同じ午後2時発の便フェリーに乗り、帰りました。
滞在時間約2時間半とは思えない、密度の濃い滞在でした。
その帰りのフェリーや車で帰る途中、頭の中で何度も同じメッセージを言われました。
「あなたは表現しなさい。体験したこと、考えたこと、今は敢えて表現しなさい。変なこと言う人もいるかもしれないけど、気にしないで。そうすることで、自分らしい仲間が得られる」
そして
「それは誰かの救いになる」
と、言われました。
それからは勇気を出して、SNSでもこうした体験のことを記すようになりました。そうすると本当に、今まで思いも寄らなかった人たちが次々と仲間になってくれました。
沖縄では昔から、「久高島は呼ばれないと行けない島」と言われています。
その意味が、今では何だか分かる気がします。
なお、久高島からの帰り道、立ち寄った古着屋さんには、よしもとばななさんの本のイラストを書いているアーティストが那覇で音楽コンサートをするというポスターが貼られていました。何かと、よしもとばななさんづいている、不思議な一日でした。
いつか、彼女にも会えるのでしょうか。この道が何に通じているのでしょうか。
不思議な旅は続きます。