NewJeansがお米だという話でGrateful Daysを思い出した
俺は東京生まれ KPOP育ち Hypeな奴は大体友達
ということで、まずこの動画を見てほしい。
この方存じ上げないが非常にわかりやすい!!!
NewJeansの音楽はシンプル。中毒というより平熱の音楽。ブチ上がるというより朝昼夜いつでも日常的に聴けるもの。らしい。実際、公式も「どこでも気軽に楽しめる、洗練されたイージーリスニング」を提供すると言っている。そして、そんなNewJeansの音楽を日本人に伝わるもので例えると、「お米」なんだそうな。
お米って良さを説明しづらいし、朝ごはんお米だよーつってFOO!!!とはならんけど、毎日食える。昼も夜もお米で全然問題ない。それでいて、おいしい。
確かに、「Ditto」は「Kill this love」ほどはブチ上がらんけど、いつでも聴ける。「OMG」も「Attention」も、なんとなく流れた時に「あー今はお腹いっぱいです」ってならない。一方「Kill this love」とか「BOOMBAYAH」はステーキみたいなもんで、朝は食えないし胃もたれしてるとキツい。というわけですわ。
で、ここからが本題なんだけど、
それ、Grateful Daysやんって思ったのよ。
一応説明しておくと、Grateful Daysとは日本のHIPHOP史上最も有名な曲。
MCバトルのおかげもあってHIPHOPがまた盛り上がり始めてるけど、世代に与えたインパクトや膾炙した人口でいうと、まだ当時のDragon Ashには遠く及ばない。単純に90万枚売れて年間オリコン13位になるHIPHOPって空前絶後。無断転載なのにYouTubeではライブ動画もMVも1000万再生を超えてるし、「俺は東京生まれHIPHOP育ち 悪そうなやつは大体友達」というZEEBRAの名バースは今でも有名。記憶にも記録にも残る偉大な作品が、このGrateful Daysなんです。
で、このGrateful Days、ビートが穏やか。The Smashing Pumpkinsの「Today」をアレンジ元としていて、コードの進行もシンプル。リリックも、仲間や家族への感謝を歌っている。曲全体としてハイになるというより心落ち着く雰囲気がある。だから、このGrateful Daysは毎日聴ける。朝、顔を洗う時にも、昼、電車に乗ってる時も、夜、布団の中でも、いつでも聴ける。つまり、Grateful Days=お米 というわけだ。
さらに考えを進めていくと、2002年の「公開処刑」でHIPHOPをやめるまで、Dragon Ashのヒット曲にはお米曲が多いことに気づく。「Viva la Revolution」や「静かな日々の階段を」など、Dragon Ash名義の曲だけでなく、Sugar Soulとの「Garden」や、STEADY&CO.での「Only Holy Story」もお米曲だ。日本でHIPHOPをオーバーグラウンドへ押し上げた当時のDragon Ashは、いわばお米アーティストだったとも言える。
ここで視点を変えると、Dragon Ashと同時期にスマッシュヒットを飛ばし、さらに大規模な社会現象を巻き起こしたアーティストに宇多田ヒカルがいる。最初に紹介したNewJeansの動画でも言及されてる通り、宇多田ヒカルにはお米曲が多く、宇多田ヒカルもお米アーティストと言える。
両者がブレイクしたのは、宇多田ヒカルが1998年12月の「Automatic」、Dragon Ashが1999年3月の「Let yourself go, let myself go」。全く同じタイミングで、宇多田ヒカル・Dragon Ashという二大お米アーティストが日本の音楽シーンに旋風を巻き起こしたことは、偶然だろうか?
ここで一つ「時代がお米曲を求めていた」という仮説を立ててみよう。言い換えれば、「当時のシーンの反動としてお米曲は必然的にヒットした」説、というか、もっと踏み込むと「ステーキが流行った反動でお米が流行る」説、だ。
当時のシーンを振り返ると、小室ブームがひと段落して、GLAYとL'Arc〜en〜Cielが覇権を争っていた。GLAYの「誘惑」もラルクの「HONEY」も、お米かステーキで言ったら完全にステーキ。ほぼビジュアル系で、MVを見るだけで目がチカチカする(俺は大好き)。
やはり、宇多田ヒカル・Dragon Ashがブレイクする前には、完全にお米とは真逆のシーンが広がっていたのだ。「ステーキが流行った反動でお米が流行る」説、結構イケるかもしれない。
ここで視点をKPOPに移すと、状況が酷似していることに気づく。NewJeans登場以前のKPOPシーンで、第4世代の筆頭格だったのはIVEとaespa。IVEはゴージャス、aespaは異世界という特徴(大体そんな感じだよね)があって、お米かステーキかでいうと完全にステーキ。なんなら、さっき「Kill this love」の例を出したように、第3世代の筆頭格BLACKPINK・TWICEもステーキ側(もちろん大好き)。
時系列的にも、日本の小室ブーム('95~'97)→GLAY/ラルク('98)→お米('99)、韓国のブルピン/TWICE('16~'19)→IVE/aespa('21)→お米('22)、で、割と相似になってる感がある。
というわけで、おそらく「ステーキが流行った反動でお米が流行る」説は正しそう。そして、NewJeansはステーキが流行った反動で流行ってる可能性が高い。
とすると、NewJeansの今後の戦略はどうすべきなんだろうか。
まず、ステーキがそんなに流行っていなかった場所では、それに対する反動もなく、NewJeansはそんなに火がつかない恐れがある。韓国はシーンにおけるアイドルの存在感が大きいから、お米への要請も大きかったかもしれないけど、日本や東南アジアではどうなんだろう。
あと、ずっとお米でいくのかっていう問題もある。Super Shyとかもめっちゃお米だけど、宇多田ヒカルの「Traveling」とか、Dragon Ashの「Life goes on」みたいにお米以外の路線でヒットを出すこともいつか必要になりそう。
面白いことに、「Traveling」と「Life goes on」は2002年の年間シングルランキングでそれぞれ2位と4位を獲ってるんだよね。お米でブレイクしてから方向転換するのも同タイミング。となると、NewJeansもお米から方針転換するのに4年ぐらいかもしれない。
ちなみに、TWICEもデビュー曲の「Like OOH-AHH」が2015年。そこから4年経った2019年に「FANCY」で路線変更に成功してる。消費者の飽きるタイミングという意味でも、アーティストの精神/スキル/ビジュアルの成長・成熟という意味でも、それぐらいでベクトルの変化が必要なんだろう。
まあこれ以上はよくわかんないな。でもミン・ヒジンさんだから。きっとすごいこと考えているでしょう。なにかをやってくれる、という雰囲気がある。時代を切り拓いていくという姿勢が見える。俺はNewJeansとそのチームが結構好きです。
とりあえずNewJeansの今後に期待して、pay attentionですな。