大好きなラップを紹介したい
いつもと少し趣向を変えて、俺が大好きなラップを紹介したいと思う。
①Kendrick Lamar - i
様々な苦難と向き合い、世界中を旅したケンドリックが少年少女に伝えたかったことは、自分を愛するということだった。ぜひアルバムバージョンで聴いてみてほしい。俺が一番好きなHIPHOPの曲。
②2Pac - Changes
弱冠25歳でこの世を去りながら、今なお世界中で愛される2Pac。ギャングスタラップの筆頭格でありながら、暴力ではなく言葉で世界を変えようとした。彼はかつてこう言った。「俺が世界を変えると言っているわけじゃない。だが約束する。俺が刺激した脳がやがて世界を変えるだろう」その遺志を俺達が受け継がないといけない。
③Eminem - Lose yourself
HIPHOPの歴史に燦然と輝く伝説的楽曲。人生最大の決断をした夜にレストランで皿洗いをしながら歌った。この曲を聴くと、腹の底から力が湧いてくる。説明不要。
④Jay-Z - Empire State of Mind
高級住宅街に移り住んだことをさらりとアピールしつつ、それでもブルックリンの"hood"ってのが最高にラッパー。シナトラの"Theme from New York, New York"に"If I can make it there, I can make it anywhere"という一節があるんだけど、それを受けた上で"yeah, they love me everywhere"は痺れる。初めて見たマンハッタンの摩天楼は衝撃だった。世界中を見渡してもニューヨークにしかない煌めきが確実に存在する。そんなバイブスを完璧に落とし込んだ、最高のビートとリリックだと思う。
⑤Lil Nas X - INDUSTRY BABY
開始5秒で分かる圧倒的なかっこよさ。「Old Town Road」で大成功を収めた後、Lil Nasのセクシュアルアイデンティティが公にされ、彼は多くの攻撃や偏見に晒された(MV内で裁判にかけられているのはそのメタファー)。そこからLil Nasは困難を乗り終え、この曲で更に強くなって帰ってきた。あらゆるステレオタイプを壊して自分自身を表現した彼は、MVの中でも脱獄に成功し自由を掴んでいる。HIPHOPの精神を体現した力強い曲。
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⑥BUDDHA BRAND - 人間発電所
ここからは日本語のラップ。この曲がリリースされた1995年当時は、日本語でラップをすること自体メジャーではなかった。そこに彗星の如く現れたこの曲は、英語と日本語をミックスした独特のフロウで衝撃を与えた。「You need a heart to play this game 気持ちがレイムじゃモノホンプレイヤーになれねえ」というフックには、一人一人が他力本願ではなく自ら発電する熱い人間になれというメッセージが込められている。色んな意味で、日本語ラップの世界を自由にした永遠のクラシック。
⑦SOUL SCREAM - 蜂と蝶
モハメド・アリの「蝶のように舞い、蜂のように刺す」という名言から着想を得た1999年の名曲。この曲を聴けば、日本語だけでどれほど豊かなラップ表現ができるのかよく分かると思う。オリジナリティ溢れる韻だけじゃなくて、一句一句の表現力も半端ない。例えば、東京はビルが多いから見上げた空は真四角なわけだけど、そんな表現どうしたら浮かぶんだろう。ラストバースには「眠った才能を磨き財宝に 起こせ奇跡 21世紀」。奇跡を起こせた日にはこの曲でウイニングラップをしよう。
⑧TAB001 - 禁断の惑星 feat.志人
唯一無二の世界観を持つ曲。核戦争で文明が滅びた後の世界が描かれている。志人の異常な量の押韻や、SF感のある不穏なビート、聞こえてくる言葉の端々が独特の雰囲気を作り上げている。これだけ救いのない曲であるにも関わらず、最後のリリックは「後世に残せそれぞれの個性」だから、今を生きる俺達に向けて作られた希望の曲だと俺は解釈している。タイムリープして未来の歴史の教科書を渡しに来た人、みたいな。
⑨Steady&Co. - 春夏秋冬
四季を歌うってのは古来より日本人がやってきたことで、それを完璧にラップに落とし込んだのがこの曲。とてもオシャレな韻を踏んでるんだけど、リリックは日々のリアルな葛藤に寄り添っていて、そこがまたいい。この前教授とカラオケに行って歌ったら、なかなかいいですねと言ってた。教授はあいみょんを歌ってた。俺はそれもいいと思う。
⑩Dragon Ash - 静かな日々の階段を
ラップ(あるいはHIPHOP)というのは、誰かをディスったり、自分を誇示したりするものだと思ってる人もいるかもしれないけど、そんなのは上辺でしかない。HIPHOPの根底にある精神は何かに抗うことだと俺は思っている。初めてこの曲を聴いた時、こういうラップもあるんだ、ラップで心が落ち着くことがあるんだ、と感動した。この曲は映画「バトル・ロワイヤル」の主題歌にもなっている。映画の内容と照らし合わせると、より味わい深く感じられるんじゃないかと思う。
⑪Dragon Ash - Deep Impact(feat.ラッパ我リヤ)
2000年当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったDragon AshがHIPHOP界の重鎮ラッパ我リヤと組んで世に放った最高にカッコいい曲。日本の音楽シーンに文字通り"Deep Impact"を与えた。その後Dragon Ashはキングギドラにセルアウトだとかリアルじゃないとか色々言われて(ジャンル/様式としての)HIPHOPをやめてしまう。公開処刑なんてクソ下らん。しけたアングラのルールで誰がリアルかなんか知らんけど、「日本を変える」つって爆音を鳴らしたこいつらが断トツでかっこいいと俺は思うよ。みんなも歌詞を全部読んで、ビートを鼓膜にcontactさせて、自分の感性で自分の意見を持ってほしい。その意見が俺とは違っても全然良い。ただ、こいつらが本当に壁を壊したという事実だけは消えない。
⑫梅田サイファー - マジでハイ
何度か書いているように、日本のHIPHOPの歴史は、そもそも日本語でラップをすること自体認められないという地点から始まった。そこから色んな浮き沈みを経て、今スターとして君臨しているのがR-指定なわけだ。R-指定自身も凝り固まった考えを持つ人たちから色んな批判を受けてきたけど、それを圧倒的なスキルで跳ね除けて今の「合法的トリップアドバイザー」に至ってる。そんなR-指定が"被差別日本語ラップ”の代表を名乗った上で、外来語を一切使わずにブチかましてんのが最高に痺れる。
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【番外編】Dragon Ash - Grateful Days(feat. ACO, ZEEBRA)
日本のHIPHOP史上最も有名かつ売れた曲。俺の心を何度も落ち着かせてくれた曲。そして、公開処刑によって完全にタブーとなった曲。ぜひ聴いてみてほしい。みんなのGrateful Daysがいつまでも続きますように。
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というわけで、俺の好きなラップたちでした。
ぜひ聴いてみてね!
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