XGが日本の未来を変える(かも)

先日、これを読んだ友達が感想を送ってきて、その流れでKPOP全般について熱い議論が勃発したんですよ。その友達とはハンガンのほとりでサイファーしたほどの仲なのでバチバチにやりあったんですけれども、今一番アチい奴に関しては意見が一致したんですね。

今一番アチい奴らは誰か。

XGでしょ。

音楽もダンスもラップもファッションも世界観も全部アチい。それがXG。

XGは他のKPOPグループとは一線を画している、と私は思います。私から見たXGの特徴を挙げると、

・全員日本人の7人組だけど、韓国を拠点にしてる
・フルコミットしてるプロデューサーが日韓ハーフのアメリカ人
・KPOPベースだけどHIPHOP/R&Bの要素もたっぷり
・グローバルな活躍を目指していてアメリカのチャートでも好成績

こんなところでしょうか。これを一文にすると、「グローバルなチームで、グローバルな音楽を作り、グローバルなヒットを目指す」というのがXGというプロジェクトの特徴ですね。

突然ですが、私はこのXGが日本の未来を変える可能性があると考えています。もう少しぶっこむと、XGが大成功すると日本はフロンティアになれるかもしれない、ということです

…は?ってなってると思うので、順を追って説明させてください。

まず、世界史の話からします。

この世界はざっくり政治・経済・文化の3つから説明できます。そして、時代の変化を最も早く表すのは、文化、特に芸術の分野です。というのも、文化は人の心を形にしたものであり、とりわけ人は精神をイメージにすることはすぐできるので、人が考えることはまず芸術として表れるのです。これを言い換えると、世の中は文化(芸術)→経済→政治の順に変化していくということです。

例えば、かなり広い視点で見ると、我々が生きる近現代というのはルネサンスという文化運動から始まりました。自由・平等を代表とする近代的な世界観は、まずそのイメージが芸術の分野で表現されたのです。

ルネサンス運動の影響で人々はキリスト教の束縛から離れ、合理的な考え方をするようになった結果、科学技術の発達が加速します。ガリレオやコペルニクスも重要ですが、グーテンベルクが発明した活版印刷が情報伝達を容易にし、羅針盤の改良が東方への航海を容易にしたことも同じぐらい重要です。これらの技術は「イギリスの商業革命」ひいては「大航海時代」を可能とし、ヨーロッパ経済の在り方を一変させます。

大航海時代を通じて獲得した広大な植民地との間で行われる貿易はヨーロッパ諸国の国力を増大させ、同時に緊張も増大させました。各国は主権を強化し、イギリスとフランスは植民地と商業の主導権をめぐって100年以上に渡り戦争を繰り返しました。この覇権争いに敗れたフランスは深刻な財政危機に陥り、第三身分(農民や都市の民衆)に重税を課します。その結果始まったのが、フランス革命です。このフランス革命が身分制社会の枠組みを壊し、ついに自由・平等の理念が政治的に確立されます。

つまり、ルネサンスという芸術分野で始まった時代のうねりは、フランス革命という政治的事件でようやく社会全体に広がったのです。歴史の新しい動きはまず芸術に表出し、そこに経済、政治が合わせるように変化していくとはこういうことです。

さて。

ここまでのポイントを復習すると、

  1. XGには「グローバルなチームで、グローバルな音楽を作り、グローバルなヒットを目指す」というユニークな特徴がある

  2. XGが日本の未来を変える可能性がある

  3. 世の中は文化/芸術→経済→政治の順に変化する

という3つです。そして、XGは文化パートにあたります

つまり、XGが成功する(文化)→???(経済)→???(政治)という流れが生まれる(かもしれない)というのが私の主張です。そして、そこに横たわるのがXGのグローバルな世界観です。

…どういうことなんでしょうか。文化、経済、政治の順に追っていきましょう。

まずは文化パートから。

XGの最高のパフォーマンス、音楽は同時代の人の心を動かします。彼女たちは理屈抜きにかっこいい。XGが成功する過程で、彼女たちに憧れ、力をもらう人たちが沢山出てくるでしょう。

その人たちの中には単にXGをエンターテイメントとして楽しむだけでなく、「グローバルなチームで、グローバルな音楽を作り、グローバルなヒットを目指す」という目標に共鳴する人も出てきます。XGというプロジェクトの在り方、グローバルな姿勢がクールだという世界観を手に入れるのです。

そんな世界観を手に入れたファンたちの大半はアイドルになるわけではありません。社会に出て、様々な場所に散らばって生きていきます。それは同時に、グローバルな姿勢がクールだという世界観を持つ人たちが社会に出て、影響を与えていくということも意味します。リスクをとって韓国に飛んだXGのように、スタートアップの世界に飛び込む若者たちもいるでしょう。

ここからが経済パートです。

この若者たちは、グローバルなチームを組むこと、世界に打って出ること、真っ向勝負のプロダクトで本場に殴り込むことをかっこいいと考える若者たちです。XGに憧れるような若者たちですから、そうなります。

彼ら/彼女たちは、日本を拠点とすることにはこだわりません。チームメンバーも日本人にこだわりません。デザイナーはインドネシア人、エンジニアはインド人、投資家は中国人みたいな感じになるでしょう。そして、Day1からグローバル展開を前提としたプロダクトを作り始めます。アメリカのユニコーンをタイムマシン経営の要領でパクろうなんてしみったれたことはしません。

どうでしょう。このスタートアップは明らかに期待値が高いのです。確かに打率は低いかもしれません。それでも、一発当てたらとんでもない飛距離を叩き出します。そして、誰かが一発当てた時点で歯車が回り始めます。その成功を見た周囲の人々もそのやり方を真似し始めるからです。

このようにして生まれるのが、活気あるカオスです。日本人が創業したグローバルなスタートアップがユニコーンになったけど拠点は日本じゃない。本社は日本だけどチームはグローバルすぎてどこの国の会社かよくわからない。海外から日本に創業しにくる。日本から海外に創業しにいく。そうこうしてるうちにデカコーンが生まれる。そういうカオスです。

成功した彼/彼女たちは経済的に力を持ち、さらにその一部は政治の世界へと近づいていきます。

政治パートの始まりです。

高額な納税者となり政治への意識が向く、有識者として招集され政治家とのパイプができる、友人の官僚が昇進する、海外で過ごす中で日本人としてのアイデンティティを再認識する…様々なパターンがあるでしょうが、必然的に政治との距離は縮まっていきます。

元来バイタリティのあるタイプの人々です。政治家を目指す人も多数現れるでしょう。ここからは確率の問題で、政治家としても卓越した能力を持つ個人が現れた場合、状況は一変します。若く、能力もあり、資金もある。この三拍子が揃うと、新政党を立ち上げ、本格的に政権を狙う集団が現れてもおかしくありません。例えるなら、かつての原敬と政友会のような存在です。

この新政党はどのようなビジョンを持っているのでしょうか。XGに刺激を受け、起業家として世界を股にかけた彼/彼女らのグローバルな世界観から導き出されるのは、以下のようなビジョンではないかと思います。

世界中から「日本に住んでみたい」と考える人がやってきて、肌や目の色が違う「新しい日本人」がこれからの日本を創っていく社会が当たり前になっていかねばならない。世界中から日本にやってきた人が、逆に「純日本人」に対して「君たちは日本人のスピリットを失っていないか」と叱るぐらいになるべきなのである。
(中略)
日本という国は歴史的に見ると、アジアの中のリスクテイカーが集まってくる国だったのである。我々はもう一度、日本をフロンティアとして、その勇敢な精神を取り戻す必要があるのではないだろうか。

瀧本哲史「君に友達はいらない」

世界中のリスクテイカーが集まり「新しい日本人」として暮らすフロンティア。まるで彼/彼女らが作り上げたスタートアップの在り方が社会に広まったような世界です。

まるで突拍子もないことのように聞こえるかもしれませんが、これを実際にやってのけた人物が存在します。ローマのカエサルです。

当時のローマは、単なる都市国家から地中海全域を覆う大帝国へと成長したものの、急速な領土の拡大は大混乱を招き、内乱が一世紀にわたるなど混迷を極めていました。そんな弱体化の一途を辿るローマに現れたのがカエサルです。カエサルは、当時権力を握っていた元老院の機能不全を見抜き、様々な改革を行います。

そんなカエサルが最初に手をつけたのが、首都ローマの城壁を壊すことです。

元老院は、イタリア・ローマが全地中海の支配者でなければならないと考えていました。それに対してカエサルには、国境という概念がありませんでした。ローマの覇権が及ぶ地は全てローマだと考えていたのです。城壁は人々の心に内と外の区別を生み出します。カエサルは首都ローマの城壁を壊すことで、都市国家ローマの時代は終わったことを宣言したのです。

さらにカエサルは、侵略した領土の人々も元老院議員になれるようにします。元老院の定員を600人から900人に増やし、ラテン語もおぼつかないガリア(現在のフランス)の部族長たちを迎え入れたのです。カエサルの考える「新しいローマ」にとっては、敗者をも同化していくことで共生を実現することが必要不可欠でした。

カエサルはその後道半ばで暗殺の憂き目に遭いますが、その後のローマは彼が描いたグランドデザイン通りに発展し「パクス・ロマーナ」と呼ばれる繁栄を謳歌しました。これこそ、「肌や目の色が違う「新しい日本人」がこれからの日本を創っていく社会」の良い教科書と言えます。

つまり、世界中のリスクテイカーが集まってくるフロンティア日本は、実現可能なのです。東洋と西洋の違いを超え、技術と伝統を融合させる新しい国家として再出発する。そんな革新的な政治の担い手となるのは、グローバルなスタートアップを立ち上げた若者達。そしてそんな若者達をインスパイアしたのが、国境の壁を取っ払い突き進むXG。

…とまあこんな感じで、XGが日本の未来が変えるところまで到着しました。

ざっと振り返ると、XGが成功する(文化)→グローバルなスタートアップが誕生する(経済)→日本がフロンティアに変わる(政治)という流れです。XGという芸術分野で始まったうねりが、全く新しい政治に帰着する。XGが大成功すると日本はフロンティアになれるかもとはこういうことです。

いやいや、ちょっと風呂敷広げすぎじゃない?って思うかもしれないですけど、XGは本当にそんなことを考えているんじゃないかなと思います。というのも、彼女たちのファンクラブ「ALPHAZ」にはこんな説明があるんです。

What's "ALPHAZ"?
ーーーXGを象徴する動物であるオオカミ。オオカミの群れのリーダーは「ALPHA」と呼ばれており、ファンのみなさん一人一人がリーダーとなり、XGと共鳴し、世界中に新たなムーブメントを巻き起こしていくという気持ちが込められたファンダム名。
(中略)
言葉も、国籍も超えたGLOBAL COMMUNITYの渦を作り出し、XGと共に世界中にムーブメントを起こす

https://xg.pasch.fan/introduction

いや、超かっけぇわ…

だから、この激アツなXGを推していこうよ!応援していこう!!!

…という話を、冒頭の友達にしました。

おい!!!!!

ーーー

番外編(参考文献)

歴史の見方をもっと学びたい方は、ぜひこの本を読んでみてください。私は著者の塾に通っていたんですけど、先生のおかげで今でも歴史が大好きです。ちなみに先生のことも大好きです。

起業を通じて潤沢な資金を得る人が多数生まれることで、政治も変わっていくのではないかという考えは、この本にチラッとだけ登場します。

近代日本の歴史において最高の政治家とも評論される原敬は、実業家としての資金力や、官僚時代の藩閥とのパイプ、元来の卓越した能力をフルに活用し、政友会を押しも押されぬ大政党へと育て上げました。政友会の系譜を継ぐ自民党を真に倒す(あるいは分裂させる)ものがあるとすれば、原敬のような人間が率いる新政党でしょう。彼は一次大戦中から終戦後に形成される新しい国際秩序をほぼ正確に予測し、それに適応する構想を実行していった超一流のビジョナリーでもありました。

私の大好きな瀧本さんの愛がこもった、一風変わったチームビルティングの指南書です。確かに、瀧本さんは友だちが少なそうですよね(そういうことじゃない)。

ローマといえば塩野七生先生。私もちびちび「ローマ人の物語」を読んでますがとにかく長いので、まずはエッセイから始めるのが良いと思います。

最後に、XGの足跡を辿るのにはこのドキュメンタリーを見るのが良いと思います。

幸あれ!

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