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誰でも出来る現実魔法、火化術式。
現代人でも簡単な術式で魔法が発動できる。読んだ後是非とも試して頂きたい。
「似て非なる城塞都市」
地下迷宮に潜る異世界人を相手に開かれた100万の人々が暮らす要塞都市。
奥深く潜り名声を手にする冒険譚。
それは、彼らに任せておけばいいのだ。
私たちは普通の営みで、人並みで。
毎日を笑って過ごせばそれでいいのだから。
市街地、中央区。
「おい!いまいつ刻だと思っている!」
鳴り響く怒号。
どうやらここの主人のようだ。
此処は市街地再開発事業の一角。
小洒落た10Gで小料理一品付き、
いわゆる「てんべろ酒場」内でのお話に耳を傾けてみませんか?
「ゆうべ、練習してたんです💦」
言い訳がましくまだ幼さが残る従業員がおずおずと入ってきた。
「ごたくはいい!真言はよう💢」
安い金額だからと手を抜かず客に提供するのに重きを置いている証拠だろう。
「ここでは真言、か。」
先に小さなグラスを手に一杯目を口に運びながらここではトゥルーワードと言う意味だと理解する。
様々な都市を渡り歩き呑み歩いているこの「のんだくれ評論家」は理解する。
地方によっては「マントラ」「呪文」「発動言語」に「魔法」齟齬あれど手順は一緒だ。
「はいっ💦ただいまぁ」
いきなり言葉を発するのではない。
周囲に漂う天気と同じ方法で火を起こし始めた。
左手で水を浸し、回転を始める。
「おぃ!なぜよだれ付けてる💢」
「そこに井戸水あるだろう💢」
頭を軽く小突き、ワナワナと怒りながらも様子を伺う。
再度、左手に浸した水を指先で回転を始める。やがて蒸発していく水蒸気が左手上空に漂い弾ける。
「竜巻🌪️起こすなよ💢」
もはや半泣きの彼の腕には水蒸気から小さな乱気流となり集約を始める。
手首を高速で回転させているためだw。
「右手ぇ💢」
しつこく指示は出すが変わる気配はない。主人なりの優しさだろう。
右手には髪を数本携えている。
これは「火化術式」だ。
左手首、おそらく秒間150000回で回転させた乱気流を毛先に纏わせる。
「左右で擦れ💢」
そろそろ怒りが頂点に達すると思いきや手出しをしない。腰を後ろに組んでいる。
その手首には火傷の跡が見える。
恐らく同じ修練を行ったのだろう。
一本目がそろそろ空になりかけた瞬間。
もはや両手でありったけのチカラを込めて上腕二頭筋が回転させる様は小型台風そっくりの様相そのものだ
「擦れ‼︎」
主人が放った刹那。
髪の毛が激しく輝き小さく瞬く火の粒が二つほど出現した。
そして光の粒を形成させ発動する「術式」を唱え発動した瞬間。
主人の前頭部が勢いよく燃え上がった‼︎
見ると若き従業員は恐怖で目を閉じている!
この一般生活では機械の類など一切利用しない。子供でも知っている日常生活での術式だ。
恐らく裕福で育った若き従業員はこの当たり前の世界を理解していなかったのだろう。
呑兵衛は二軒目へと梯子を掛ける。
「本日休業」と書かれた酒場を背に足早に向かうのだった。