消費者の妄想 『クラフトカクテル「koyoi」』※飲んでない
twitterのタイムラインを眺めていたら、低アルコールのクラフトカクテル「koyoi」についてのツイートが流れてきて目に止まりました。
「へえ、低アルコールのクラフトカクテルってのがあるんだ?」と興味を持ちました。なにか目新しい予感を感じて、良さそうなら買うつもりでさっそく販売サイトを見てみました。
サイトにはこう書いてありました。
ぼくはお酒は好きだけど、そんなに量は飲めません。気に入ったものだけ少量飲むという感じです。だからこそ量より質で、いいなと思ったクラフトビールやワインをネットで購入することも割と多いです。でも、これまでカクテルはノーマーク。だからこそ 面白いカクテルなら試してみたいなと思ったのでした。
まずラインナップを調べてみるとかなりの数のカクテルがあって驚きました。数えてみると15種類。「抹茶と柚子が共鳴する梅酒のクラフトカクテル」や「リンゴの香りが広がる甘酒のクラフトカクテル」など、この時点で気になるものもいくつか。
ちなみに「アルコール度数3%の低アルコール」と書いてあるものの、普段カクテルを飲まない自分には通常のカクテルがアルコール度数何パーセントなのかがわからなかったので調べてみると、20度前後が一般的で、「弱め」は10度前後だそうです。ということは「koyoi」はかなりアルコール度数が弱いといえます。ただ、市販されている缶カクテルのアルコール度数も調べると、そちらも約3%から5%のようで、これと比較すると「koyoi」もあまり変わらないともいえそうです。
いま、世の中一般的にはノンアルがトレンドとされているようなので、「koyoi」を知った最初は「あれ?ノンアルじゃなくて”低アルコール”なんだ」と思いました。ノンアルではなくて、あえて軽く酔える低アルコールにこだわっているのはネーミング(=小酔い)からも分かります。かわいいネーミング。
クラフトカクテルの「クラフト」とは「原料や製法にこだわっていて且つ小規模生産の物」のことです。「クラフト」という言葉にはわくわく感があります。
「koyoi」の特徴をまとめるとこんな感じ。
と、ここまで調べてみましたが、どうでしょうか。
ぼくとしては、んー、買うに至るまではもう一歩という感じでした。
多分、特別な目新しさと魅力があるのでは?と期待しすぎてしまったのが原因です。
自分は以前ライターとして様々な商品を紹介するページを作っていた時期も長かったので、商品についてサイトで調べていくうちに、ライター脳になってしまい、もう少し個性的な訴求ポイントがいくつかあると書きやすいな(=売りやすいな)などとも思ってしまいました。
たとえば「年間に100本しか作れない幻の原料を使っている」とか「古来人が飲んでいた人類最初のカクテルのレシピが発見されそれを再現した(原始人のイラストをラベルに…)」 とか「飲み進めていくうちにカクテルの色が変わる(女子歓喜)」とか「ビールと混ぜるとやたらうまい(ビール好きがこぞってハマる)」とか…。 こんなカクテルだと「おや!?」となります。
そして、3本セットで4,950円ということは1本あたり1,600円以上です。印象としては高いと感じる人が多そうなのでそれなりの説得力も必要です。
※でも、原料にこだわりさらにロット数も少なく、送料も考慮しなくてはいけないとなればこのくらいの値段になってしまうのは想像できます。また、氷で割って飲むとするなら1本あたり3杯飲めるとして1杯500円ほどになるので実はそこまで高いわけではないと思います。あくまでも印象としての値段の高さです。
ただ、この値段から受ける印象からも、自分用に買うよりも贈り物として買う商品なのかもとも感じました。実際、父の日や母の日などギフトセットなども販売しているようです。
せっかくここまで調べたのだから今でなくても、いつか誰かにギフトにとも思いましたが誰がカクテル好きなのかもわからないし、いきなり3本セットを届けるのもちょっと気が引けます。
さらに、「約5,000円のギフト」と考えると別にアルコールである必要は無いし5000円あればいろんなギフト候補があります。
勝手に興味を持って、勝手に興味を失って。申し訳ないくらいに消費者とは勝手なものです…。
しかしここで疑問が沸いてきました。
一体自分はどんなクラフトカクテルを期待していたのだろう?どんなクラフトカクテルだったら「買い」だったんだろう?と。面倒な消費者を、もうひとりの自分で見つめてみました。
「本格派」を強化して、原料と地域を紐づけ
たとえば、「本格派」がもっと強化されていたら。
サイトには「保存料、人工甘味料、着色料を一切使わず、フルーツやハーブ、スパイスを約30種類組み合わせた自然由来のナチュラル製法も「koyoi」のこだわり」とあります。本格的なつくりなのは間違いなさそうです。
一般的にカクテルというと、ジュースのように甘かったりすることもあって、同じアルコールの日本酒や焼酎などと比べて本格的なイメージは低いです。でも「koyoi」は本格派を志向している。飲んだことはないけど、きっと「甘ったるくてもう飲めない」というものではなさそうです。
であるなら「本格派」「本物」ということを具体的な根拠も含めてもっと伝えてくれていたら買ってしまっていたかもしれません。「なぜ今本格派のカクテルなのか」の説明とか「すごい素材に出会ってしまい…」のストーリーとか。
たとえば現状の商品の主原料が特定の地域と紐づいていたらますます惹きつけられていたと思います。
たとえば「リンゴの香りが広がる甘酒のクラフトカクテル」だったら、長野県産のリンゴと同県の酒蔵の酒粕から作った甘酒を使っていたりといったことです。リンゴと言えば思い浮かぶのは青森県かもしれませんが、あえて一番有名な産地以外のものを目利きして選んだというストーリーがあれば、説得力が違ってきます。ちなみにリンゴは実は全国で栽培されていてどこのリンゴもそれぞれに美味しいので、もちろん長野でなくても山口県でも新潟県でもよさそうです。むしろブランド化されていない産地の方がおいしいながらも原価を抑えられそう。酒蔵も同様に全国津々浦々に力を入れて作っているところがあります。
「バニラが上品に香るラズベリーのクラフトカクテル」だったら、福岡県久留米のバニラとレッドラズベリーを。外国産よりも割高になるかもしれませんが、珍しさが話題になって費用対効果が出せれば可能性があります。
地域を限定すると供給が大変になりますが、原料の供給が間に合わず売り切れてしまうのも本格派っぽいです。値段の高さの裏付けにもなります。
「抹茶と柚子が共鳴する梅酒のクラフトカクテル」だったら?「すだち香る爽やかなウイスキーのクラフトカクテル」だったら?どの商品でも国産の原料を探すことはできそうな気がします。
本格的なつくりで、原料の素材にも根拠を持って目利きして選んでいるとなれば、「選んで間違いなさそう」な商品になりますし、飲む前の「おいしそう」のイメージは、飲むときの「おいしい」に直結するので、満足度も高くなると思います。(人は舌だけでなく、頭でも飲食しているので)
ストーリーがあれば説得力があるし、ギフトにも使いやすいし、多少値段が張っても買ってしまいそうです。
出身地ボトルで、相手がさらに喜ぶギフトに
さらに、商品数を多めに揃えて提供するというのが「koyoi」の楽しさなので、この際47都道府県や日本の各地の離島に特化するなどして、ラインナップを増やしていっても楽しそうです。
ギフトにするときも、贈る相手の”出身地ボトル”を選ぶこともできるので贈られたほうも嬉しいし、贈る方もチョイスが楽です。もし好みに合わなくても出身地ボトルを選んでくれたという気持ちは伝わるので、ギフトの本質である「思い」は伝わりそう。
全国の地域に根ざした産品(=カクテルの原料)を活かすことで、一緒に協業できる地元企業もいるかもしれないし、ますます生産者の顔が見えて応援されるかも。
和カクテルの充実
カクテルの本質は、語源にもあるとおり、素材を組み合わせる、混ぜることで元々の素材が活かされ合って、よりおいしくなることにありそうです。
組み合わせが無限で自由だからこそ作り手にとっては簡単であり、難しいはず。そう考えると無限の組み合わせの中から生き残ってきた定番カクテルはやっぱり見事です。
そんなことを考えていると、解釈が自由だからこそ、突き詰めていくことを良しとする日本人の「道」の概念にも通じるところさえありそうな気さえしてきます。その方向で、「和カクテル」というのも面白いかもしれません。今あるラインと別ライン(和ブランド)を作ることで国外にもアピールできそうな気さえします。
すでに「koyoi」にも「リンゴの香りが広がる甘酒のクラフトカクテル」や「柚子と抹茶の香りの梅酒ベースカクテル」など、和テイストの商品もあるのでこの方向が拡充されて押し出されると、オリジナリティもあって魅力に惹かれそうです。お酒、お茶のバリエーションのほかにも和のハーブもたくさんありそうで広がりそうです。産地との紐づけとも相性がよさそう。さらに言えば商品写真は和室や和風の庭で逆光で撮って雰囲気モノにしたいです。
カクテル言葉でますますギフト仕様に
さらに調べてみると、カクテルには花言葉ならぬ、カクテル言葉というものがあるそうです。オリジナルカクテルを創作するなら、カクテル言葉だって創作したっていいはず。
実は「koyoi」のカクテルには既にそれぞれの商品イメージに合わせた短い小説(ストーリー)が付いてくるとのことですが、これに「親愛」「感謝」「仲直り」などのオリジナルのカクテル言葉&簡単なテキストを加えるとますますギフトに使いやすいように思います。そういうのが得意な作家やライターもいそうだし、やってみたいと思う人も多そうです。
シンガポールからの「逆輸入」で、気になる気になる
現在の「koyoi」の販売場所はネットと催事が中心のようですが、同じ商品でも売り場が変わると爆発的に人気が出たりします。
「koyoi」は逆輸入にも合いそうに感じます。
日本人なのに、先に海外で成功していて、あとから凱旋帰国というストーリーはやっぱり気になるもので、それは人でなく商品でもきっと同じなのでは。
というわけで思いついたのは、台湾、香港、シンガポール。台湾と香港は現状やや不安定なので、シンガポールでしょうか。富裕層も多そうです。
「シンガポール カクテル」と検索すると、カクテルのシンガポールスリングばかりが出てきます。シンガポールスリングとはジンベースのお酒で、元々はシンガポールのホテルのバーのチーフがつくったものとのこと。
シンガポールスリングについて知りたいわけでないので検索方法を変えると、シンガポールでのお酒事情が見えてきました。シンガポール国民はやはりビールを良く飲むようです。そして、自宅でなく酒場で飲むことが多く、酒場も多いそう。
シンガポール(および海外)で売るならば、なおさら日本らしさが欲しいところ。
そこでやはり和カクテル。既存ラインナップの「リンゴの香りが広がる甘酒のクラフトカクテル」などはやっぱり日本らしくていい。桜の花びらを浮かべたりとかして。
日本で「シンガポールスリング」が飲まれているなら、シンガポールで「ジャパンスリング」が飲まれたっていいはずです。もしヒットしたら(あるいはそこまでヒットしなくても)、逆輸入的に「シンガポールでも好まれて飲まれている」という話題を作ってPRできそうです。日本人がシンガポール旅行で酒場に入ったときも、日本名のカクテルがあったら試してしまいそうです。
そしてシンガポールは富裕層の数も多いので、「koyoi」を割高に感じる人も日本より少ないような気もします。今は超円安なので輸出も良さそう。余談ですが、お酒に詳しくてシンガポールに繋がりのある人がちょこちょこいそうなのをネットで見つけました。
カクテルゼリーを日常のおやつに
世の中にはカクテルを固めたカクテルゼリーも一部で取り扱いされているようですが、このカクテルゼリー化も「koyoi」は相性が良さそうです。重量が軽くなるし高級感も出るのでカクテルと一緒にお試しで売ってたら気になりそうです。アルコールが飲めない人のためのノンアルコールのカクテルゼリーなんかも日常のおやつに楽しみたい気もします。
しつこくなりますが、カクテルゼリーも、ギフトにも輸出にも良さそうです。カクテルとゼリーのセット販売で2,800円くらいなら贈りやすそうです。「カクテルとゼリー」のほかにも「カクテルとパン」とか「カクテルとおつまみ」など、「koyoi」さんはPRやコラボがとても得意そうなので、パン屋さんやお惣菜屋さんとのコラボもはまりそうです。
…いよいよ妄想がエンドレスになりそうなのでこの辺にします。
まとめ
まとめると、ぼくが期待する妄想上の「koyoi」はこんな商品です。
クラフトカクテルには、「クラフト」らしい個性や遊び心と、「カクテル」らしい様々な掛け合わせの可能性が無限大です。
こんなのあったら絶対買います。
というわけで、次回はシンガポールで「koyoi」は売れるのか、「シンガポールに行ってみた編」です。
…好き勝手書いてごめんなさい。「koyoi」を製造販売している会社SEAMさんでは、マーケターを募集しているそうです。いち消費者が勝手に妄想の風呂敷を広げ過ぎた罪滅ぼしに貼っておきます。
と、ここで終わりにしようと思ったら、古巣の食品会社で「koyoi」の販売が始まった様子。なんと取り扱い商品はやはり和カクテルの2本でした。考えることは同じということでしょうか。
正直なところ、数日間の調べ過ぎと書き過ぎで愛着が生まれ始めてしまい(単純接触効果)、飲みたくなってきて両方注文しました。今月友人が遊びに来るので一緒に飲みたいと思います。
妄想を膨らませ過ぎたので飲む楽しみも膨らみました。自分で書いた「飲む前のおいしそうが飲むときのおいしさを高める」を自己完結することになりそうです。