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Arc見てきた

ということで今日もシアタス調布に行ってきました。

シアタス調布は映画館の前がちょっとした広場になっていて、いつ行っても中高生がたむろしています。いわゆるたまり場です。

大人数の、しかも広場で集まれるくらいにはイケイケな学生たち。怖いなー怖いなー

そんなことを考えながら歩いていると、女子高生の集団に

「君―!君ー!」

と声をかけられたので目を合わさず逃げました。

あれは多分カツアゲです。


東京のガキは恐ろしいぜ。







映画Arc、面白かったです。

でも絶対流行らないと思います。

僕はこの映画で芳根京子のファンになりました。鼻の穴をアップで映しても画面がもつ最高の美人でした。

「Arc」のテーマを、不老不死になった人間が抱く恐怖だと見る前は思っていたのですが、実際は不老の人間が老いを知らずに延々と生き続ける滑稽さを描いたものでした。

円と弧

Arcは原題で「円弧」らしいです。聖櫃のアークだと勘違いしていました。

円弧とは、円周上に任意の2点を置くことで、円を区切って弧を作ること。要するに〇の一部を切り取った放物線みたいなものを指すらしいです。

途中まで僕は、有限の人生がなのだと思って映画を見ていました。
無限に生き続けられる新人類こそがなのだと。

しかし、風吹ジュンが今際の際に小林薫に語った「生まれ変わっても私をみつけてくださいね」という言葉に現れているよう、この映画には仏教的な輪廻転生の考えがあります。輪廻転生を信じるならば有限の生こそが円となり、永遠になります。

輪廻転生のサイクルの中では、個体の死は終わりではなく、流転する流れのひとつでしかないからです。 

人間が生まれ老いて死んでいく。
死んだ人間はまた生まれ直し、老いて死ぬ。そういった人生の円環の上をグルグルと回り続けるのが輪廻転生なんだと思います(仏教知らないので想像ですが)

新人類は死を失うことで、輪廻転生のサイクルから外れます。
また、老いないということは人生の段階を適切に経ることが出来ないということです。
生まれ、老いて死んでいくという輪廻転生の最小単位である一生という円もまた、永遠に完結しえないことになります。

不完全な円である弧は、有限の命を持つ旧人類ではなく、マクロとミクロどちらの円も描けない新人類だったのです。

老いないことのデメリット

劇中で芳根京子は30歳から年を取ることなく、この映画ではその姿のまま135歳までが描かれています。恐らくもっと生きられるのでしょう。

私は世界に触れる――人類初、永遠の命を得た女性の物語


公式サイトでは不死がもつ「永遠」の側面が強調されていました。

そのため僕は、ただ一人永遠の命を得てしまった女性が、主観的に蓄積した膨大な歴史と知識をもって、人間の一生を俯瞰で見つめる超越的な神の視点の物語を期待していました。

しかし、実際は全然そんな内容じゃありませんでした。

なぜなら、そもそもこの映画は不死について描いていなかったからです。だってそもそも135歳までしか劇中で描いてないんだもの。

135歳とは言えないまでも、120歳まで生きる人間が現実にいる以上、不死を描くのに135年は短すぎます。

不死について本気で考えるなら数百年は生かすはずでし、それをやらないことからも不死は映画のテーマではないのでしょう。

つまり「Arc」は老いないこと、そして逆説的に老いることについての映画なのです。

永遠に30歳の肉体を持つ実年齢135歳の芳根京子は、79歳の風吹ジュン。77歳の小林薫の言葉、感覚を全く理解できません。

135歳の芳根京子の精神は、肉体が時を刻むのをやめた30歳の頃から全く成熟しないのです。

心身相関という考えがあります。

この考えは、心と体が相互に関係しあっていることを表します。

深呼吸をしたら心が落ち着くとか、緊張するとおなかが痛くなる、みたいなことです。

体の変化は心に影響を与えるし、心の変化も体に影響を与えます。

Arcでは老いる事、老いないことが精神にどんな影響を与えるかについての思考実験が行われています

年を取ることによって体や知能が衰え、生殖機能は失われます。それゆえ周囲とのコミュニケーション、自分の体の知覚の仕方が変わります。

体が老化することによって周囲との接し方が変わるのです。

そうした変化に適応することで、あるいは目前に迫る死に対して自覚的になることが精神を発達させるのかもしれません。

肉体の老いが精神の発達に重要な影響を与えるならば、その変化を経験しえない芳根京子の精神は永遠にそこに行きつくことはできません。

肉体の変化を止めた瞬間に、芳根京子の精神もまた停止してしまったのです。

芳根京子は、肉体的に不老であっても自身と世界の関係を知覚することに不能になってしまいます。また、彼女の世界からは色彩すら消えます。

そんな芳根京子が、果たして幸せなのかどうか。

老いに対して期待と幻想、そしてさらなる精神的成熟を見いだす非常にポジティブな捉え方をしていて物珍しかったです。

サイエンスフィクションというよりはスペキュレイティブフィクションのSFという感じもテッドチャンぽくて良かったです。

この映画大好き



ラスト、かなり唐突に映画が終わってしまうので滅茶苦茶驚きました。

映画自体は面白かったのですが、暴力も銃もアクションもなかったのでそこが不満です。

死という永遠の平等が崩壊する中盤でのデモシーンでスピンオフ一本撮ってほしいです。

殺しあえー!

石川慶監督はこれからも面白い映画を撮ると思うので追いかけたいです。
















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