ビデオドロームを見た
まずビデオドロームなのか、ヴィデオドロームなのか
英語の日本語表記なんて根本的に意味がないのでどっちでもいいのだが、一応劇場のポスター準拠でビデオドロームということにする。
VIDEOをヴィデオと発音するのは一昔前の、そしてこの映画が公開された後の感覚な気もするので、オリジナルとしてはビデオドロームが正しいのかも。
WEBやとヴィデオが多い印象。
まぁ。どっちでもいいんですけど。
気になる人はWikipediaでも見てください。
なんとなく近所の映画館の上映スケジュールを確認していたら、ビデオドロームがあったのでなんとなく見てきました。
ビデオドロームの監督、デビッドクローネンバーグといえば、名前を知っている方も多いのではないでしょうか。
ザ・フライやスキャナーズなどを撮った、古いカルト映画作家です。
僕はこの人の映画が特別好きであるわけではないけれども、劇場で見れるのならばと、近所の映画館で鑑賞してきました。
以下感想
映画の最中には睡魔に襲われつつ、なんとか最後まで見切ったのだが、全体としてはうーん、という感じ。
なんというか、映像に関する認識が今の感覚ではない。
この映画のキモは、映像によって人間の意識を変容させるという映像版サピアウォーフ仮説といったところなのだが、今日に至って、サピアウォーフの仮説など誰も信じていないし、映像が意識を変質せる。みたいなことを信じるほど無垢でもない。
僕らは映像に対してそこまで素直で純粋じゃない。
全ての映像は誰かによって恣意的に切り取られ、意図を持って編集されていることを僕たちは全員が知っている。そして映像に僕たちの意識を直接操作するほどの力がないことも。
この映画に通底する映像への信頼は僕の中ではとうに死んだ感覚ではあるが、公開当時1983年というのはそういった時代だったのかもしれない。
思い返せば、僕が小学生の頃にも見たら呪われるビデオや、三回見たら死ぬ絵などがあったので、結構最近まで生きていた感覚なのかもしれない。
という感じに内容の消費期限は明らかに過ぎているのだが、映像としてはすこぶる面白い。
主人公の腹には拳銃がすっぽり収まるサイズの肉感的な濡れそぼった”穴”が突如出現し、クライマックスでは人間が内側から捲れ上がるような映像も見ることができる。
テープはどくどくと波内、ビデオデッキには血管がびっしりと浮かび上がる。ブラウン管に至っては画面が大きく隆起し、手が飛び出して主人公を飲み込もうとする。
ペルソナ4のテレビに入っていくシーンの元ネタは意外とこの映画かもしれない。
また、ニッキーの耳にピアス穴を開けるシーンは官能的で、ぶっちゃけめちゃくちゃエロかった。
笑ってしまうほど肉体が損壊される割には生理的な嫌悪感は少なめなので、ザ・フライの顔面から絞り出される大量の膿とかでクローネンバーグを忌避している方には復帰作として面白いかも。
劇場でなければ確実に中断か爆睡していたので映画館で見れてよかった。
同じくクローネンバーグ作品であり、最後まで見ることに二度ほど失敗しているスキャナーズも映画館であれば最後まで見ることができるかもしれない。