女風つれづれ話「勘違い」綾子
幼稚園の頃は友だちたくさんいて誕生日会でたくさん集まってくれたなあ。
24歳の誕生日である今日、うだつもあがらない同居人と近くのスーパーで買ったパックに入ったショートケーキをストロング酎ハイで流し込みながら思い出した。
同居人は今年で42歳一応付き合っている。同居人からしたら20歳ほど若い彼女が私。
一般的には羨まれるのかな。
ただ、この男は借金まみれで生活はかつかつ、おまけにパチンコ、競馬に競艇とギャンブル好き。まあ、私もきらいじゃないけど。
年上の男と付き合っているからと言ってバースデーケーキをシャンパンで流し込めるんじゃないんだよって、親と同じくらいの彼がいてもこんなこともあるんだよって最悪な答えを身をもって表現してる実感すらある。
これがリアルよ。芸能人の歳の差夫婦なんて一握りのまた一握りなんだよ。
ってね。悪態つく話術の才能は絶品だわ。ママと同じで。
小学生4年生のころね。
両親が離婚して1人娘の私はママに着いていったの。
パパは優しいけど酔っぱらうとママを叩く。
その時の”バコッ”って音がすごく嫌で右耳がほとんど聞こえないのはこのせい。
だからといってママも優しくない。
「ほんとオマエは不細工だよ、私に似てるからね。」
ってパックに入った焼酎を氷だけで飲みながら、睨みつける。
私って不細工なのかな。
ママのことは大好きだから不細工だなんて思ったことないけど、同級生のママと比べると体はずんぐりむっくりで、ママの目は黒いところが見えないくらいの線なだけ。
中学生になったころ、同じクラスのちょっと悪い子に
「あやこちゃ~ん あんたさあマジで不細工だね!笑える」
って言われた時、同級生のママと違うところがわかった。
私は不細工なんだ。
ママが言った。
「不細工は目立たないのが良くて、誰でもいいから早く男見つけて結婚しな。」
現実から目を背けるのはいけないことだと思った。
だから、こんな同居人でしょうがないと思っている。
ただ、どうしても彼と言いたくない...嫌いではないんだけどね。
付き合ったきっかけというより、出会ったきっかけは私の好きなアニメのイベント。定番だよね、不細工が走る道として。
同居人はそこではそこそこ有名人だったの。そこで声掛けられたのが私。
産まれて初めて選ばれたってのを経験したものだから、こうなった。
だけど現実は借金まみれの低所得者、一応正社員で働いてるだけマシか。
私だってストロング酎ハイでケーキを流し込むなんてしたくないけど、同居人は自己管理ができないんだ。病気レベルで。
だから私が管理してる。
私も働いてるからスーパーのケーキじゃなくても普通のケーキ屋さんのケーキは食べれるけど、
こいつに借金の清算させて、別れてからの預金を作るために節制してるんだ。
だけど、ちっともよくならない。
もう、うんざり
そんな時に女性用風俗のことを知った。
Twitterのアカウントを作って見よう見まねでプロフィールを作り、フォローを開始したら、びっくりするぐらいフォローバックされる。
それより、男たちが続々とフォローする。
更にDMが来る。
内容は
お会いしたいと。
なんだこれは
私なんかと会いたいのか。いやいや向こうは商売なんだ。
一旦冷静になるも、「会いたい」が容赦なく刺さる。しかも連続で。脳内の今まで締め切ったというより閉じていた部分に。
私は嬉しくて一つひとつに返信したけど、徐々になれてくると多少の違いはあれど、意味合いはただひたすら
会いたい
だけ。
脳内麻痺を起こしていたのだろう。あれだけ嬉しかったのに
なにこいつら私に会いたいだけなの?
私の体は一つしかないのだよ。
私に会いたいならそれなりの資格が必要じゃない?
ぶっちゃけ彼らの容姿は、同居人なんか比べ物にならないほどイケメン(隠しているが全体のスタイルとか)それなら同居人と同世代でいい人を見つけようとある男とやり取りを続けた。
彼はコウイチと名乗った。同居人より歳は上だが、背が高くスリムでおしゃれだった。本来でそういうものだろう40代のメールは一つ一つ丁寧で、時折の冗談にセンスを感じた。
日程調整をして会うことが決まってから、ドキドキとワクワクが半端ない。
会う日がきた。
パネルの画像と同じかそれよりもかっこいい。性感も上手くどうしようもないほど喘いだ。私はコウイチをお気に入りにした。
彼はメールのやり取りが丁寧だけど、兼業なのでスケジュールがそれほどあがらないから思うように入れない。
私はDMの続きを再開した。
ちょっと気になるなんて言おうものなら、そこからの猛アタックがすごい。
パワーに押されて同年代の男に入った。
「こんにちは〜今日はよろしくね〜笑」
確かに若くてカッコいいがチャラい。そこらへんの女ならホイホイついていくだろう。
だけど若さゆえなのか、ホスピタリティはない。
ガキだ。
いくらなんでも、こんな奴にお金を払いたくない。
DMを再開する。
今度は再度年上の男とやり取りをして
会う。
うーん、いまいち
DMを再開する。
次は思い切って年下とやり取りをする
会う。
ぜんぜんダメ
あれ?
貯金がない
DMを再開する。
最初の男と会う。
あれ?
同じことしてくれたけど
なんか違う。
クレカの限度額もいっぱいになった。
あれ?
あれ?
あれ?
テレビのバラエティで騒ぐ芸人たちに司会者が
「一旦落ち着こ!」
あれ?
あれ?
あれ?
「むかしは勘違いからの戦争もあった。」
中学の老教師が歴史の授業で言っていたのを思い出した。
そう言えば、私はモテてない女だった。
了
あくまでボクが持つイメージと人生観からのフィクションです。実在の人物は存在しません。