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全部答えないと不正解! 複数の読みが許されている漢字クイズ【慣用読み】
こんにちは。
漢字辞典を眺めるのが好きな、毎日ペンギンクイズと申します。
まえおき
いきなりですがクイズです。以下の漢字の読みは何でしょう?(辞典に載っていれば正解です)
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正解は「ちょうふく」または「じゅうふく」です。
どちらを答えても正解です。
実は、熟語には「本来は誤読だが、広く一般化されてしまったために正しくなった読み方」が存在することがあり、こういった読みのことを「慣用読み」などと言ったりします。
上の例では、「ちょうふく」が本来の読み方で、「じゅうふく」が慣用読みとされています。
(『広辞苑(第7版)』や『デジタル大辞泉』『明鏡国語辞典(第2版)』にも「じゅうふく(重複)」という項目がある)
そこで、今回はその漢字の読みとして相応しいもの「すべて」を選ばないと正解にならないクイズを考えました。
例えば、
A.じゅうふく
B.ちょうふく
C.おもふく
というように出題されます。この場合、「A.じゅうふく と B.ちょうふく」と答えれば正解になります(AとBのどちらか一方のみを答えたり、A・Bとともに間違いであるCを選んでしまったら不正解となる)。
また、正誤判定については『広辞苑(第7版)』『デジタル大辞泉』『明鏡国語辞典(第2版)』のいずれかにその読みが載っているかで判断します。
例えば、
ちょう-ふく【重複】
同じ物事が幾度も重なること。重なりあうこと。じゅうふく。「話が―する」「―を避ける」
『広辞苑』第7版より引用
と載っていた場合、「ちょうふく」に併せて「じゅうふく」という文が記載されているため、「じゅうふく」と「ちょうふく」の2つが正答となります。
問題は全部で5問です。
第1問
A.いぞん
B.えぞん
C.いそん
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答えは「A.いぞん と C.いそん」です。
本来の正しい読みは「いそん」の方でしたが、「いぞん」も慣用的な読み方として許容されています。
また、「依存症」という熟語について辞書で調べたところ「いぞんしょう」という項は存在せず、「いそんしょう」の読みでしか掲載されていませんでした(『デジタル大辞泉』では "「いぞんしょう」とも" と記載されてはいる)。
ちなみに、NHKの放送では「依存」の読みについて「いぞん」の読み方を優先しているとのこと。
確かに、生活では「いぞん」の読み方のほうが一般的ですよね。
第2問
A.はりつけ
B.ちょうふ
C.てんぷ
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答えは「B.ちょうふ と C.てんぷ」です。
本来の正しい読みは「ちょうふ」ですが、最近では「てんぷ」という読み方も慣用読みとして許容されているようです。
「はりつけ」については「貼り付け」や「貼付け」といった形でなら辞書に掲載されています。
第3問
A.よろん
B.せろん
C.せいろん
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+
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答えは「A.よろん と B.せろん と C.せいろん」です。
本来の正しい読みは「せろん・せいろん」ですが、最近では「よろん」という読み方も許容されています。
実はこの漢字、「せろん」と読んだときと「よろん」と読んだときでは意味が異なります。
『広辞苑』(第7版)によると…
・せろん【世論】 → 「世間一般の論。せいろん。」
・よろん【輿論・世論】 → 「世間一般の人が唱える論。社会大衆に共通な意見。(後略)」
と記載されています。
2つの言葉が混同しないためにも、「よろん」の意味で用いる際は「輿論」の字を使うのが良さそうですね。
第4問
A.しょうもう
B.しょうとう
C.しょうこう
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答えは「A.しょうもう C.しょうこう」です。
本来の正しい読みは「しょうこう」ですが、誤読の「しょうもう」も慣用読みとして許容されています。
ちなみに、「しょうもう」のほうが誤読なのにもかかわらず、辞書で調べてみると「しょうもうひん」は載っているのに「しょうこうひん」は載っていないという逆転現象? が起きていました。
「しょうもう」の読み方が広く浸透しているという証拠でしょう。
第5問
A.ぜいじゃく
B.ろうじゃく
C.きじゃく
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答えは「A.ぜいじゃく」です。
この漢字は「きじゃく」という誤読が多いのですが、上の3つの辞書ではそれを慣用読みとして掲載していませんでした。
もしかしたら、これから慣用読みとして辞書に掲載されるようになるかもしれませんね。
さいごに
いかがだったでしょうか。
今回、このクイズを作ろうと思ったのは「慣用読み」という概念を知ってほしかったからです。
たとえば、漢字のテストで「依存」の読みを問われたとき…
a.「いそん」と「いぞん」のどちらを書いても正解となる場合
b.「いそん」が正解で、「いぞん」は間違いである場合
c.「いそん」が間違いで、「いぞん」が正解である場合
の3通りの採点方法が存在してしまいます(c の場合はあまり無いとは思いますが…)。
こういったズレがあると、試験の際にどちらを書けば良いか悩んでしまいますよね。
このような場合、試験の出題範囲で慣用読みできる漢字を確認して、どれが正しい読みとして採用されるのか確認しておくと良いでしょう。
皆さんも、大事な試験がある際は「慣用読み」に気を付けてください。
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それでは、別の記事でお会いしましょう!
参考:
・新村出 編『広辞苑』第7版 岩波書店(2018)
・北原保雄 編『明鏡国語辞典』第2版 大修館書店(2010)
・『デジタル大辞泉』 小学館
・NHK放送文化研究所(2014年5月1日) "「依存」の読みを[イゾン]に変更"(https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/202.html)(閲覧:2021年8月31日)
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更新履歴
2021/09/06 本文を一部修正