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フリーランスが自分の「やりたい」や「得意」の範囲で仕事をしやすくするために(ペンギンの知恵袋 vol.2)

独立した人が最初に直面する悩みの一つが「どうやって仕事をとろう?」ではないでしょうか。言い換えれば、「自分と近い領域で仕事をしているフリーランスや中小規模の企業が数多く存在する中で、どう自分を一番に思い出してもらえるか?」という悩み。今回はフリーランスの強みの作り方について、ペンギンガレージメンバーたちのアイディアをお伝えします。

一方、案件をとれたらあとはオールOK!……とばかりは行かないですよね。進めていく中で「あれ?これも自分の業務範囲だったっけ?」と思うことがあったり、「おっと、ここのボール落ちてるじゃん!そして誰もやる人いないじゃん!」なんて事態に直面したことがある人も少なくないと思います。

そんな業務範囲や責任範囲のミスマッチングはなぜ起きるのか?どんな対策をとれるのか?についても、ペンギンガレージメンバーたちに聞きました!

<はじめましての方へ:ペンギンガレージとは>
「実践と学びでつながるフリーランスのコミュニティ」として2021年1月に設立。一人で奮闘しているフリーランスたちが、好奇心や課題感を同じくする仲間と出会い、一人ひとりが培ってきたスキルや知識を分かち合いながら、もっと身軽に、もっと健やかに生きられる方法を見つけられるようなコミュニティを目指しています。

ペンギンガレージの詳しい情報や具体的な取り組み内容などに関心がある方は、こちらの記事をご覧ください。

今回知恵を出してくれたメンバーは以下の5人です。

●古澤恵太
株式会社PARTYのプロジェクトマネージャーとしてキャリアをスタート。サウンドアーティストスズキユウリ氏の英国事務所、株式会社コンセントを経て、SYMBIを設立。組織規模を問わず、戦略策定からサービス / ブランド開発まで事業リーダーに伴走支援を行う。HCDnet認定 人間中心設計専門家。
https://note.com/symbi_furusawak

●竹中邦嘉
北海道弟子屈町出身。 外資系企業の情報システム部門を経て、SIer、ITコンサル、Webアプリ開発を経て現在はフリーランス3年目のITなんでも屋さん。最近はBtoB Saasの案件ひとすじ。
https://www.facebook.com/kuniyoshi.takenaka
https://twitter.com/chiku_chu

●Shii
ネットワークコーディネーター。小さい頃から絵を描くことが好きで、美大でデザインを専攻。産学官共同プロジェクトで温泉街でアートフェスの開催に携わったきっかけでまちづくりに興味を持つ。その後メーカーのインハウスデザイナーを経て、コミュニティスペースのコミュニティマネージャーとして勤務している。

●こい(ものづくりプランナー)&えり(UXデザイナー):ペンギン卒業メンバー

自分の強みや関心に合った仕事に出会いやすくなるために

フリーランスにかぎらず法人や商品、サービスでも、「他とどう違うか?どんな強みがあるか?どんなユニークさがあるか?」を打ち出せるかどうかは選ばれる存在になるうえで大切ですよね。

とはいえ就職活動のように「自分の強みは?」と自問自答しつづけるのも苦しいものです。誰かと比較して強みや優位性を考えようとするのではなく、少し視点を変えて「強みが伝わるコンセプトを立てる」ことをフリーランスも考えてみるといいとペンギンメンバーの一人は話します。

いやぁ〜コンセプトと言われてもなぁ〜と悩みが深まる人に、より具体的な方法としてオススメなのが「キーワードを掛け合わせる」ことです。

分かりやすいところで言うと、何ができるのかというスキルの要素や、どういう領域や業界に精通していたりネットワークを持っているかというドメイン知識の要素があります。加えて、どういうフェーズに向いているのか……、いわゆる0→1のまだいろいろなことが柔らかい状態で伴走するのが得意なのか、1→10の拡大・成長期に向いているのかという要素もあるでしょう。そして、興味関心。食が好きで数多く食べ歩いているといった趣味のことでもいいですし、保守的な考え方よりリベラルな考え方に共感するといった価値観も当てはまるでしょう。

それぞれ単体の「キーワード」では、他にも多くの“ライバル”が存在するかもしれませんが、複数のキーワードを掛け合わせていくと、あなたしかいない唯一のキャラクターが浮かび上がってくるはずです。。

とはいえキーワードが多くなりすぎてしまっても、かえって特性がわかりづらくなってしまいます。「この内容ならこの人!」と最初に思い出してもらえるように、自分が自身をもって推せるキーワードであったり、自分が取り組みたい領域に関わるキーワードなどを、ある程度厳選するのも大切です。

ちなみにフリーランスとして働いていると、案件の中でいろいろと落ちているタスクや役割を拾っていくうちに、手広く多様な仕事をするようになっていく人も少なくありません。いわば「なんでも屋さん(ジェネラリスト)」になっていく。クライアント側からすると、まるっと依頼できる気楽さや心強さはあるでしょう。でも、「ジェネラリスト」であることを前面に押し出していても、結局どういう人なのかイメージがぼんやりとしてしまい、案件の依頼先を検討する時にすぐに想起されにくい懸念もあります。また、後述するように、あまり自分で「なんでもやります!」を打ち出していくと、気づいた時には業務が雪だるま方式で増えてしまう可能性もあります。あくまでもジェネラリスト性は、やりたい仕事を手にするための最後の一押しとして伝えるのがオススメです。

以上、自分の強みや関心に合った仕事を得やすくするためのポイント、参考になりましたでしょうか?

業務範囲のズレや超越はなぜ起きるのか

さて、案件を得られてやったー!と喜んだのも束の間。蓋を開けてみたら、想定していたよりも広範囲 or ボリュームの多い仕事を担わなければならなかった……という経験はありませんか?

ペンギンガレージメンバーたちも、当初想定していた以上の範囲だと分かっていながらも、業務上必要なものだから致し方なくやったことがあるという人や、性格的にクライアントのためになると思ったらやってしまうという人もいました。

クライアント側がそれに気づいて感謝してくれていればまだいいですが、続けていくうちに超えた部分まで担うのが「当たり前」のように振る舞われたり、超えた範囲に対してまで厳しく責任を問われたりしてしまうと、こちらのやる気が落ちてしまいますよね。

そもそもこうした業務範囲のズレや超越はなぜ起きるのでしょうか。いくつか原因のパターンが考えられます。

①フリーランスへの発注に慣れていない

一つは、フリーランスに仕事を発注し慣れていない人で、業務の切り分けを理解できていない場合です。たとえば、Webサイトを作る案件の場合、ウェブのデザインをすることと、コードを書くことは別の職能で、異なる人をアサインすることが少なくありません。また「制作」と「運用」はフェーズの異なる業務です。しかしそうした業務の切り分けを知らない場合、「ウェブサイトを作ってください」という依頼で、デザインもコードも運用もすべてを一人の人に託せるものという前提でクライアント側が依頼している場合があります。

②ポジションの名称と役割の認識が異なる

クライアントによってはポジションの名称と役割が一般的なものと異なっている場合もあります。

  • プロジェクトマネージャーと言われて、進行管理だけだと思っていたら、実際には全体のプロジェクト設計やディレクション、マネジメントまでやる立場だった場合

  • UXデザイナー(デジタルプロダクトの体験設計)として関わり始めたはずなのに、プロダクトマネージャー(開発機能の要件定義やプロジェクトの推進・管理まで)の役割を期待されていた場合

……などなど、ペンギンメンバーたちの間でもいろいろな"ズレ"の経験談がありました。

③案件の性質上、業務範囲が不明確な場合

特にプロジェクト初期に全体像がまだふんわりしていて、明確な納品物が決まっていない状態からジョインする場合、動いていくなかで当初想定しなかった業務や課題が出てくることは、ほぼ必然です。

ちなみに、自分とクライアントが直接やりとりする場合は、ズレが明らかになった時に調整することもまだやりやすいですが、間に仲介的な立場の会社が入る場合は、あとから軌道修正することがさらに困難になるため、より意識的に確認、すり合わせしておくことが大切だとペンギンメンバー経験者が語っていました。(仲介的な人が入ってくれることで負担が減る側面やケースもありつつも……。)

責任範囲のすり合わせやフェーズごとの契約分割など自分を守る策を

では、ズレが起きないように、あるいは起きた時に対処しやすいように、事前にやっておいたほうがいいことはあるのでしょうか。ペンギンメンバーたちの知恵はこちら。

① 「やること」の流れをイメージして相手とすり合わせる

何より大切なのは、自分がやることの業務範囲あるいは責任をもつ範囲を、事前になるべく相手と具体的にすり合わせることです。

たとえば「ウェブサイトのデザインをつくる」ことがあなたの役割だったとして、いざデザインに取り掛かることをイメージしてみましょう。デザインを考えるためには、そもそも、どういう年代やバックグラウンドの人が一番訪れるサイトなのかであったり、クールな雰囲気がいいのかアットホームな雰囲気がいいのかといったイメージの方向性であったり、どんなメッセージを一番伝えたいのかといった、そのサイトを打ち出す戦略が必要になりますよね。それは別の誰かが担ってくれるのでしょうか、それともあなたがやる必要があるのでしょうか。サイトに差し込んでいくテキストの用意はどうでしょう。ライティングをしてくれる人はいるのでしょうか。相手企業で内製するとしたら、質のコントロールは誰がするのでしょうか。

……といったように、あなた自身が業務を進めるプロセスを脳内でイメージすると、「このボールは誰のものだろう?」「この要件は準備できているんだっけ?」などと、”ぼんやりしている部分”が見えてくるはずです。それを前もって相手と確認するとズレの生じる範囲を狭められます。

②成果物やスケジュールを責任範囲に含めない契約にする

前段落の原因③のようにプロジェクト初期で具体的な業務範囲や成果物をすり合わせることが難しい場合、成果物や結果、あるいはスケジュールに関しては責任をとらなくていいような契約にしておくことも、一つの手段です。

法的には「準委任契約の履行割合型」と言われるものでもありますが、いわゆるコンサルタントのように「月に2回ミーティングを行ってアドバイスをする」といったような一定の業務の遂行を約する契約にしておくのです。

真面目なタイプの人ほど、どういう成果物を渡し、いつまでをデッドラインに行うか……などプロジェクトのすべての責任を背負おうと考えてしまいやすいと思いますが、責任を負う範囲をなるべく手放すことがあなた自身の身を守る一手となるはずです。

ちなみに請け負う仕事の内容がだいたいいつも似通っている場合は、自分自身のサービスプランを用意しておくこともオススメです。「松・竹・梅」ではないですが、シンプルで安価なプランから、広い責任範囲を担い、一緒にチームを動かして伴走するプランまで、こちらから提示し、相手に選んでもらうのです。そうすることで、一層責任範囲のラインを明確に相手と握りやすくなりますし、プラスアルファを求められた時には追加料金を相談しやすくなります。また、先にプラン組みをしておくことで、自分が苦手なことややりたくないことなどを予め除外しておくことも可能です。

フリーランスだからといってクライアントの意向を聞いて柔軟に応じるだけが働き方のスタイルではありません。主導権をなるべく自分が握り、対等なパートナーとなることを目指す。プラン提示はその一歩ともなるはずです。

③プロジェクトのフェーズごとに契約書を分ける

プロジェクト初期から関わる場合や長期的な案件の場合に講じておくといい策として、フェーズごとに契約書を分割する、という方法もあります。

たとえば、どんなものをつくるのかのコンセプトづくりや戦略立てまでを1つのフェーズとして契約書を結び、そのあとの具体的な商品やサービスに落とし込んでいくプロセスは、別のフェーズとして切り分けておく。そうすると、スケジュールが後ろだおした時に追加のフィーを交渉しやすくなったり、実際の稼働量の目安が見えてから、条件面の見直しを相談しやすくもなります。

①〜③のような「予防線」を張って、自分の身を守る道をまずは確保する。そのうえで、自分がこの範囲もやってみたいなと思うことや、もっと自分の経験を広げたいと思うことなどがあれば、相手と合意した役割や責任の範囲から自発的に「染み出す」ことをしてみる。その順序を守ると、クライアント側にも喜ばれたり、自分の価値を感じてもらいやすくなるはずです。

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さて、今回のペンギンメンバーの"知恵袋"はいかがでしたでしょうか?皆さんの”あるある”なお悩みの解決に役立つヒントとなればうれしいです!

ちなみに今回の記事は、Podcast「ペンギンの団らん」の以下の4回の内容をもとに作成しています。こちらもぜひお聞きください!

そして今後もさまざまなテーマでペンギンたちの知恵袋をお届けしていきますので、アカウントをフォローいただいてまたお読みいただければうれしいです!

🐧ペンギンガレージに興味を持ってくださった方は
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執筆:アーヤ 藍

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