【掌編小説】古風な喋り
だいぶ前に書いた小説です。恋愛でも勉強でも仕事でも色々ありすぎてめちゃくちゃ病んでた頃に書いたもので、暗い内容です。途中までしか書いてないです。
世に出したことがない小説です。
反響次第で続き書きます。
森見登美彦にハマってた時期で、読者を意識するみたいなメタ要素や文章の書き方がそれによってますね。
noteの引用機能を使って、紙に書いたみたいな表現してみてました。
ちょっと読み返すと恥ずかしいような……。
【掌編小説】古風な喋り
他人が経験した出来事をまるで自分が経験したように感じてしまう。仕方のないことだ。しかしながら、君は私以上に困った人間なのでその共感か同情かに惑わされてしまう。つまりだ、君は繊細でかつ情動的なのだ。少なくとも夢の中では。さて、ここまで何を書いているのかは読者に何一つ伝わっていないだろう。それもそのはず、文章はある程度感情的でないと書けないため、思いついたことや考えていることを書き連ねるため訳のわからない文を構成するからである。私のような人間は恐らく文章を書くのに適した人間ではないのかもしれない。いわんや常に相手を楽しませることを念頭に置いておかないと、社交辞令もろくにできず、事実を淡々と伝えるような人間だ。何かにつけて自己肯定感を下げようともする。つまり、私は矛盾を抱えて生きている。致し方ないことだと思っている。人間だから。そうしたなかで、出会ってしまったのは倫理に反するとわかっていながら自身の狂気的な一面について語るY君である。彼とは長年の仲というわけではなく大学で知り合ったといった程度のものだ。その程度に関わらず彼は私にずけずけと様々な詮索をしてくる。彼が異常な人間だとわかるまでにそこまで時間はかからなかった。しかし、彼の本能に追随するソレはいつまでたっても確信に至らなかった。「少女よ、どうしたのかね」と古風なしゃべりをするのが、そう、彼である。さらには、二十歳でありながら「大正時代から生きている」などと嘘をついている。彼にとっての嘘というのは知りようのないことと、自身に利益をもたらすためにつくのだ。なにゆえ私が彼のことを熱く語るのかといえば、彼は私のことが好きであり、支配下に置こうと企てていることにある。私からすれば稀有で心底面白い人間だと思って彼も私も詮索に詮索を重ね、もはやとてつもない高度な会話が行われていた。知ることに関の山が存在することもなく、永遠話し続けた。Y君は残念ながら私のことを首ごと食いちぎりたいらしい。
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「なんで食いちぎりたいのさ」聞くと彼は「人肉を背徳感を感じながら食べてみたい」と話す。神経の通っているところは特に美味しいらしいから指も食べてみたい。できれば焼いて。そう付け加えた。多くの人間はアホらしいと思うが興味がある私はきっと彼の成分ををとりこんだからだ。成分と言うには理由があって、具体的表現を隠さざるおえないということである。私たちは倫理も哲学も人並み以上に理解している。共感も感じすぎるほどである。しかし彼は闇に染まっているので自身の目的のためなら人を揺さぶり傷つけたり、喜ばしたりする。そのためにあらゆる努力も惜しまない。彼の本性を形容するなら「悍ましい」であろう。
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時々彼はどうして傷つけたのかと泣く。どうして気づかなかったのかと泣く。私がこんな人間でなければと泣く。それが私に見せた最初で最後の涙であった。「心に穴が空いているんだ」過呼吸になりながらそう云うものだから私は心配してあらゆることを想像した。彼が話す暗号のような言葉を真剣に聞く。「心に穴が空いている私は悪魔なんだ君には知る由もないだろうこんな悪魔になってしまった」断片的なその言葉は物事の良し悪しをわかったうえでの言葉だ。君はいつもそうだ。勝手な想像に任せるのは嫌だから、どうにか聞き出そうにも教えてなどくれはしない。ぼそっと彼は「君には彼氏がいるじゃないか」という。しかし、その意は嫉妬ではなかった。大切な人を失ってしまった悲しみのようだった。初恋の人か何かだと今も思っている。その人も古風な喋りをするらしい。桜を見ると思い出すらしい。パソコンの待ち受けもスマホの壁紙も写真のフォルダにも桜が映っていた。彼の瞳、そのしずくも、記憶も、声も忘れたくないものなのだと直覚した。送ってきたその詩には待ち人の声を聴きたがっているものだ。傍に飾ってあるおみくじにも「待ち人と逢えよう」などと書かれている。ずっと探し続けている。貯金をはたいて、いくつもの県を越え、夜の街を、昼の家を、若者の騒ぎを、神社を、自転車で駆ける。なぜそこまでしていたのか、数年越しに知った。そしてまた彼は静かにいつも通りの古風を装った。
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アタマにオモイエガク感情に死人の顔がシカト映る。今夜もマタ、泣くのは君ダ。安心ナンテ言葉はナイ。死ぬだけダ。友モ男子モ女子モ喚いていて、殺シタイ。飽クナキ君の精神にモハヤ敬服スラしてイル。