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お勧めしたい1冊「豊島将之の勝局」〜ビブリオバトル風〜
皆様こんにちは。今日は私が尊敬している将棋棋士、豊島将之九段の本を紹介させてください。
「1手ずつ解説 豊島将之の勝局」
竜王名人の経験者であるトップ棋士の豊島将之先生の将棋を、羽生善治九段や藤井聡太七冠といった対局相手との全15局について、一手ずつに解説コメントが付いています。
これは、棋書(将棋の本)の中では珍しい形式です。
普段目にする新聞記事の将棋の欄には、「棋譜」という数字と将棋の駒の名前で示された文字が暗号のように並んでいます。
指し手には一手ずつお互いの棋士の意図がありますが、ただそれがどんな狙いなのか、特に初心者には棋譜をパッと見ただけでは理解しづらく、途中の解説文にだけ目を通すという方も多いでしょう。
この本の特徴として、その後の展開に持ち込むための手がかりの一手だった場合は、単純にそこだけ切り取っても意図がわからないのですが、それについても最後に「ワンポイントまとめ」で一連の手順について詳しく補足説明されているところです。
豊島将之九段は、序盤・中盤・終盤スキが無いというキャッチフレーズで有名ですが、つまりは全ての局面において、なんとなくこの手、という選択ではなく、しっかりと局面の危険度や次の展開を十分に見極めた上での駒運びをされる先生です。
将棋は選択の連続です。将棋に興味を持ち、自分でも指してみようと始めた時に真っ先にぶつかる問題は、次に自分がどうするべきなのか、途方に暮れてしまうところではないでしょうか。
将棋の序盤(1手目から30手目前後)には「定跡」という、先人たちの知恵を集約し整備された舗装道路があり、その通りに指していけば概ねひどい失着を指す心配はありません。
プロの先生方ともなると、定跡通りの進行であれば持ち時間をほとんど消費せずにハイペースで指し進めていきます。
問題は互いの駒がぶつかり始める中盤からです。自分の攻め駒が飛び出していくには、陣形に穴が空いたり、相手の攻め駒から逆に標的にされたりと、同時にリスクも背負います。
だからといってグズグズと攻めあぐねていると相手にどんどん追い込まれて、逃げ回るだけの展開になってしまいます。そんな時にはトップ棋士の先生方はどう指しておられるのかを知る事が解決の糸口になります。
一体どこで斬り合うのか。真剣に間合いをはかる殺陣のような展開は、一手の解説の意味をじっくりと読み進めていくごとに臨場感たっぷりに読者に伝わってきます。
あっと驚くようなタイミングで大駒を切っていく読みの正確さや、ジリジリとした膠着状態を鮮やかに打開し流れるように攻めを繋げていく指し手の発想力は、トップ棋士の中でも特に優れた能力を持つ豊島先生のお手並み拝見で、ただただ感心してしまいますが、大切なのはその考え方自体を自分の将棋観に活かしてみることです。
まずは将棋盤と駒を持っていない方でも、無料アプリで簡単に将棋の局面は作れますので、実際の盤面で1手目から指してみることをお勧めします。これが将棋の練習方法でいう「棋譜並べ」です。
自分の発想に無い手だった時は解説文を読み、豊島先生や対局相手の先生の意図を理解します。自分も同じ手を指そうと思った時は素直に嬉びましょう。
劣勢なのではないか、と思われる局面に対しても、豊島先生の確実な駒の連結による受けの指し回しは、ただやみくもに駒を埋めるのではなく、攻めに転じた際にも遊び駒にならないように工夫されています。
対局相手にとって決めきれない苛立ちを誘うだけではなく、真の強者とはこれなのかと、凄味を感じずにはいられません。
この本を読むことで、自分の将棋でも仕掛けの駒の使い方を工夫し、相手の王様の周りをうろつくだけで仕留めきれずにいることが少なくなりました。
強い先生の模倣をする事で、将棋の力も自然に備わってくるのは、美しいお手本を真似て書いてみる書道などに通じるところがあると思います。
将棋を好きな方の中には、将棋は自分で指さないんだけど、和服姿の凛とした美しさや将棋棋士ご本人のファンという方もいらっしゃいます。
そんな方にこそ、好きな先生のお考えを理解し、一体感を持って将棋を観戦する楽しさを、この本を通してぜひ味わってほしいと思います。
本と将棋アプリだけで気軽に始められるので、カフェで過ごすちょっとした時間にも楽しむことができます。ぜひ、お手に取ってみてください!
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