2024年5月度のSES業界 by TSUMUGU
TSUMUGUとは
TSUMUGUは、株式会社Cre-Coが開発したSESの案件/人材情報検索システムです。日々新たに数百件の単位で集まってくる情報から、IT案件と人材の最適マッチを実現するべく誕生いたしました。
弊社に集まってくる主にメールの情報を、機械学習モデルを利用し必要な情報(要求スキル、提供可能スキル、単価、場所、リモートや外国籍の受容状況等)を抽出、分類し、膨大な情報のなかから案件や人材を効率良く抽出しております。また、自動マッチングシステムも搭載し、登録した案件/人材情報に対して最適な人材/案件情報を提案する機能もあります。
弊社ではこのシステムを活用し、現場へ最適なエンジニアを送り出しています。
TSUMUGUは一般利用も可能ですので(現在一般向けには検索機能のみ提供しております)、ご興味のある方はこちらよりお問い合わせください。
TSUMUGUから見た2024年5月の業界動向
TSUMUGUに集まる案件、人材情報は月単位にすると数千件。ある程度業界の市場を反映していると考えられます。したがって、このデータを分析することで現状のSES業界の動向を把握することができます。そんなわけで2024年5月のTSUMUGUが観測した動向をチェックしてみます。
分析対象数
分析対象案件数:1942
分析対象人材数:1429
案件要求スキルトップ40
案件情報に記載されているスキルを多いものから順に40個並べたグラフがこちらになります。言語ではJava, C, C#, JavaScript, PHP, Python, Reactあたりに言及されている案件が多いです。
一方、インフラ系はAWS, Linux, SQL, Oracle, Azureあたりの言及数が多い。
要員提案スキルトップ40
続いて、要員の提案スキルのトップ40です。言語では、Java, JavaScript, C, HTML, PHP, VBA。インフラではSQL, Linux, Oracle, AWSあたりのスキルが多く出ています。
特に言語の方は、案件と比較してフロント寄りの提案が多いように見えます。
需給差について
続いて、案件が要求するスキルに対して、人材のスキルがどれだけ充足しているのかということについて、スキル数(案件) / スキル数(人材) の比を算出し、これを需給差と呼ぶことにします。案件の要求スキルTOP40をもとに各スキルの需給差を求めたグラフが以下となります。
各スキルについて、募集案件よりも提案人材の方が多い場合には、1を下回ります(赤で表示されています)。つまり、1を下回っている場合は供給過多(人余り)の傾向があるということです。これをみると、ほとんどのスキルが1を下回っていることになります。
唯一Lambdaが1を上回り青く表示されています。どうようにAWSやAzureといったインフラ系のスキルも1を下回っているものの比較的高い数値になっており、クラウド系のスキルは人余り傾向の中でも需要はある方と考えられるでしょうか。Lambdaについては、Lambda自体がスキルというより、Lambda内にPython等の言語を使ってスクリプトを書くということを求められるので、Lambdaの機能を理解した上で、コードを書ける人材が求められていると解釈してもいいかもしれません。
レベル(単価)別需給状況(全体)
全体的な需給状況では、供給過多の傾向があることがわかりました。ただし、スキルにはレベルがあり、SES業界ではそれは「単価」として表れてきます。高いレベルを求める場合には高い単価を提示します。自身のスキルに自信のあるエンジニアも同様です。
そこで、単価別の需給分布を見てみることにします。まずはスキルをすべて混ぜた全体の分布です。横軸が単金(10万円単位)、縦軸が案件あるいは要員数です。
これを見ると、60万から80万円のレンジあるいは、90万円以上のレンジで案件の数が多くなっていることがわかります。つまりこのレンジでは需要の方が多いということになります。
一方、60万円よりも下のレンジになるとエンジニアが案件を上回っていることが見て取れます。つまり、
一定レベル以上のスキルを要求する案件は人材が不足傾向
いわゆる初級案件は人材が余剰傾向
という傾向が出ているということになります。
レベル(単価)別需給状況(スキル別)
さて、同様の傾向はスキル別で見ても見られるのでしょうか。ここでは案件で多かったスキルのいくつかのレベル別需給状況についてみてみることにします。
まずは言語、Javaから。
Java
Javaの単金別の分布は以下となります。Javaはどのレベルのレンジもエンジニアの方が大きくなっています。ちなみにSpringなどの個別フレームワークでも見ても同様の傾向でした。
C++
つづいて、組み込み等の案件で用いられることの多いC++の単価別分布です。こちらは全体と同じような傾向がでていますね。60万以上は需要の方が多い傾向。60万未満は過剰傾向。
Python
次に、Python。PythonはDjangoなどのWebフレームワークを用いた案件と、データ分析系の案件で需要があります。特にデータ分析の人気の高まりを受けて希望するエンジニアも増えている状況で、Javaと同じく全体的に人材余剰、そして余剰傾向は単金が低い方がより強く出ているように見受けられます。
React
JavaScriptのフレームワークであるReactの状況です。Reactは若干分布がいびつですが、傾向としては全体と似た感じでしょうか。
AWS
続いてインフラ系。AWSの分布。同様ですね。
Azure
こちらAzure。これも同様の傾向がでています。
Oracle
Oracleは、全レンジで人材が多くなっています。ちなみに「SQL」なども同じなので、SQL系は人材余剰と考えるべきでしょうか。
SQLはインフラ系のエンジニアが習得する言語として重要視されておりますが、SQLだけで入れる現場というのはかなり少ない(そしてあったとしてもかなり激戦)かもしれません。
データ分析
スキル別のラストは、データ分析です。データ分析領域は需要が高まっているのはもちろん、それに応じて、業務を希望する人材も増えているように見えます。
結果は以下となりますが、まず、SES業界としては(少なくともTSUMUGUが観測した限りでは)データ分析系の業務は多くはありません。ただ、その少ない需要に対して、人材側の単価のレンジが他のスキルと比べて非常に広くなっていることがわかります。初級余りになっている部分は変わりませんが、高単価帯まで幅広く人材は広がっています。その数は多いわけではないのですが、それに応じた案件がほとんどないという状況です。
以上、スキル別で見てきましたが、概ね
・全体的に供給過剰の傾向が見られる
・一定レベル以上のスキルを持つ人材への需要はあるが、
それ以下の供給は過剰気味である
という2つの傾向があることがわかりました。
外国籍受入状況
最後に、外国籍の受入状況についての分析結果です。分析対象は案件情報で、案件情報の中に明確に
・外国籍可
・外国籍不可
のように主張しているものはそれぞれ「OK」「NG」とし、特に明確な記述がないものについては「不明」とカウントして集計したグラフが以下です。
OKとNGの平均比率は0.079。つまり、全体でみると外国籍OK率はおよそ8%となります。「不明」の部分はわかりませんが、おそらく問い合わせたらそれくらいの割合で受入是非の返答が返ってくるのではないでしょうか。
スキルごとに眺めても、概ね似たような比率になっているのですが、唯一SAPだけはOK15件、NG23件でOK率が39%となっています。SAP技術者は若干特殊なところがあり、国籍関係なく受け入れる傾向があるのでしょうか。これについても、単月のみではなんとも言えず、継続的に見ていきたい部分ではあります。
外国籍エンジニアは長期的に見るとIT業界に不可欠な人材なのですが、入り口が狭い状況が続いています。
まとめ
今回は弊社システムTSUMUGUを用いて、2024年5月の業界動向を出してみました。
おそらく多くのSES事業者、とりわけ営業の方々が普段肌で感じているのとほとんど同じ結果がデータとしても表れていたのではと思っております。
色々な場所で「IT人材が足りない」と言われておりますが、足りないのは一定以上のスキルをもったエンジニアであり、いわゆる初級レベルのエンジニアは過剰になっているというのが現状です。
高度なレベルのエンジニアの不足を補うにはもちろん、今いる初級レベルのエンジニアを教育することが欠かせません。そしてすべてのエンジニアが上級エンジニアになれるわけではないことを考えると、現状の初級エンジニアが余っているという構造は必ずしも不健全なわけではないことになります。初級エンジニアのみなさんが育ち、その一部の人たちが上級へとステップアップしていけば、不足部分は補えるわけです。
一方で、上級レベルまで供給過剰になっているスキルもあります。これらについては、成長後も力を発揮できる現場が少ない可能性が少なからずあることを示唆しています。
このような視点で今回の分析結果を活用し、どういった領域に力を入れればいいのかという意思決定の一助となれば開発者、分析者としては幸いです。
この手のデータは時系列で見ていくとさらに深い分析ができるようになってきます。今回は初回なので単月のみの分析となりましたが、次回以降は時系列比較などの視点も入れていこうと思っております。
ではまた次回!!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?