見出し画像

LINEの生活#16 どこの世界も

東はしびれを切らして、テンヌキに怒鳴った。
「黙ってねえでなんか言えよ!!!なんのために俺たちをここまで連れてきた!?なんであそこまで俺たちに協力した!?なんで...なんで!?...全部...今までのこと全部...演技だったのかよ...」
「....」
「裏切り者。いい加減白状しろよ!俺はもう、うんざりだ!あんだけ騙しといて、何も言わないとか...ずるいぞ...。なあ。テンヌキ。教えろよ。全部...!!俺は捕まったって文句なしだから!!」
「...」
「テンヌキ!!」
「...」
テンヌキ!!!!!!!!!!
東が何度怒鳴っても、テンヌキは口を開かない。
「テンヌキ、お前は何がしたい...?」
「はあ...」
テンヌキは大きなため息をついた。その目は...とても冷たかった
「テンヌキ?」
「わかった。全部話すよ。......『お』!あんた!!
テンヌキは、ビシッと「お」を指差した。
「...あんた、『ボス』のくせに、秘書の顔を忘れたわけじゃないよね...?
「は...?」
東は呟いた。
『ボス』は...『お』、あんただ!!
「...おいおいテンヌキ、何を」
「あんたはあのとき、僕に、『ボス』の濡れ衣を着せた...!!僕を疑うそぶりを東に見せ、て...。あんたは...あんたの計画は、『あの血』を持つ東、そして、この世界から逃げ出そうとする裏切り者を捕まえることだ!!東の方は万事OKだったけど、ここから逃げ出したいと思っている裏切り者が...僕だった。...そこであんたは、僕が東に、あんたが『ボス』だってバレることを恐れて、僕に疑いをかけ、ここまで誘導した...。違うかい?」
「.........」
「『お』、違う...よな?」
東が助けを求めるように聞いた。
「一緒に酒飲んで、一緒に喋って...全部、全部、...『本心』だよな?こんな、お前が『ボス』だなんて、嘘に決まって」
「俺が『ボス』だよ。東」
「お」が静かに、そして少し強く、言い放った。
「ちょっと、まだ僕の話、終わってないんだけど」
「お前の話を聞いてたら、ストレスがたまるだけだ、だから、黙」

テンヌキが、東の言葉を遮って、言った...
仕方ない。人間の世界だって、文字の世界だって、『人間』という残酷な動物が作ったものなんだから、残酷なんだよ...どこの世界も
「...」
東の目から、弱く光る、生温い涙がこぼれ落ちた。
残酷だろう?人間(そっち)の世界も
「そうだな.......。そうだ....」
(ん?)
そこで東は、テンヌキの言った言葉に、違和感を持った。「...お前、もともと人間の世界にいたのに、『人間(そっち)の世界も』って、おかしくないか?まるで...もともとLINEの世界で暮らしていたような...
「そうさ。僕はもともとLINEの世界にいたんだよ」
「!?じゃあ、なんでそんな嘘を...」
「そっちの方がやりやすかったんだよ」
やはり、テンヌキのいう通り、残酷じゃない世界なんてどこにもない。どんなに頑張っても、世界は、「残酷」という鎖に繋がれてる。どの世界も、綺麗事なんかで丸く収めることなど、できないのだ...。
「で、僕の話の続きなんだけど。『ボス』、あんたは東に、『ボス』について、何か嘘を教えていないかい?」
「...テンヌキ、お前のいう間違いっていうのがなんなのかわからんが...俺は『お』に、『ここにいる文字は全員、年末に「ボス」に殺されてしまう』と聞いた」
「それはなんで?」
「毎年、LINEは少しずつ、文字のフォントを変えているから」
違うね。それは間違いだ
東は目を見開いて叫んだ。
「そうなのか!?俺は、俺は...何回、騙される!?
東の心の中に、悔しさがこみ上げてきた。
「文字は、毎年フォントを変えるから殺されるんじゃない。文字は......。

東!!危ない!!」

「へ?」
東が驚いて後ろを見ると、「お」がナイフを、東に向かって振り上げていた!!!

続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?