LINEの生活#8 絵文字工場
「絵文字工場」のドアが開いた。ここは二階建ての工場。一階が受付で、二階が工場だ。ここは、誰でも好きなように工場に入って絵文字を作って良いわけじゃなく、一年以上、「『ボス』の家来」という肩書きがないと入っては行けない仕組みになっている。
「お」が受付の前に歩いていく。受付は相変わらず清潔だ。受付にいる、「管」の文字が、「お」に言う。
「カードをお見せ願います」
「お」は持っていたカードを受付の目の前に持っていく。
「では、このカードが本物かどうか確かめます...多分本物でしょうけど」
「早くしてくれ」
「管」の文字は、奥から虫眼鏡をとってきて、カードにかざした。
「...」
「...」
しばらく沈黙が流れた。少し経って、カードの隅々を虫眼鏡で見ていた「管」の文字は、
「本物でした。やっぱりね...。では、工場まで...」
「いや、別に良い。自分で行ける」
「...では」
「お」は二階へ行くための階段を登る。
ここには何回もきている「お」。だが、毎回カードを調べられる。何回ここにきた文字でも、武器なんか作られて街中でぶっ放されたらたまったもんじゃない、と思っているのだろう。
「お」は二階についた。ここにも受付がある。「お」は受付の「作」の文字に言った。
「パソコンと、印刷機の絵文字を作ってくれ。もちろん、ネット環境とか細かいこと全部やっといてくれ」
「かしこまりました。では、少々お時間いただきます」
「作」の文字は、工員たちに指示を出す。そして、三分ほど経って(早いな)、「作」の文字が、箱を持って歩いてきた。
「相変わらず早いな」
「はい、それがモットーですので。では、こちら、パソコンと印刷機です」
「ありがとう」
「少し伺ってもよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「これ、何に使うんでしょうか?小説でも書いて、本にするんですか笑」
「まあ、ちょっとね...」
「まさか...例の件...!?」
「黙ってくれ」
「お」は一階におりて行き、工場の外に出た。
「どうだった!?」
工場にもたれかけて座っていた東は、「お」がくるとすぐ立ち上がり、「お」に聞いた。
「お」は箱の蓋を開け、中身を東に見せ、ニコッと笑いながら、言った。
「これで準備OKだ!じゃあ、『広告』作ろうぜ!!!!」
「ちょっと待って、あんまり目立つことしたら...」
「殺されるかもって?それとも捕まる...。お前、結構この世界のシステムわかってきたじゃねえか。...まあ、実際そうだけど、俺たちもそんな馬鹿じゃない。捕まっちまったら、抜け出すも何もねえ。家のポストに、こっそり入れれば良いじゃねえか。ここの世界の新聞配達のやつに紛れて...」
「家!?家なんてどこに...」
「お前馬鹿か?!家がなけりゃどこで寝れば良いんだよ」
「野宿...」
「お」は大袈裟なため息をついて言った。
「あっちに家がある。あっちで俺たちは過ごしてるんだ」
「お」が指差した先は------地平線の向こうだった。
「さ、もう遅くなったし、家に帰ろう!」
「あんなところに...家なんてあるのか!?」
「あるったらある!!!こい!」
「お」は東の頭をがっしりと掴んで、引っ張った。
「ちょっ!いてえ!やめろ馬鹿!!」
東の声が、誰もいない工場の周辺に響いた。
続く
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