LINEの生活#37 放送
「う...ウ゛....あ...!?」
カーソルも目を覚ましたらしい。カーソルは、目を見開いて、「ボス」の席を見ていた。
「ど、どういうことだよ!?おじいさん‼︎‼︎‼︎」
「......湊太...覚えているか?」
「ああ!あんたは俺たちを助けた...おじいさんだよ!...ってかなんで俺の名前知ってんだよ??」
「...以前、わしをどこかで見た、と思ったことは無かったか?」
どういうことだ!?東は少し迷ったが、すぐに言った...
「!!まさかあんた、俺の-----------」
「急げ急げ!」
東とカーソルが「ボス」の屋敷に入ってすぐ、テンヌキは屋敷の裏口へと向かっていた。
「僕の屋敷にもあったから...多分、ここにもあるはず!!」
裏口の柵が見えてきた。テンヌキは柵を越えた。
「!!あった!」
テンヌキの目の前には、「放送室」と書かれたドアがある。
「よし...」
テンヌキはドアを蹴飛ばした。中には、放送機材が並んでいた。テンヌキは、マイクの音量を上げた。そして、大きく深呼吸をして、マイクに向かい、言葉を発した。
『このスマホの世界にいる文字、全員に伝える!!』
「あんた、-----------------だろ?」
「えっ?」
「そうじゃ、わしはお前の-----------------じゃ」
「なんで...こんなことしたんだよ!!」
「それは...」
テンヌキの声が、ありとあらゆる場所のスピーカーから聞こえ、広場にいた文字は、びくっと肩を跳ね上げた。幸い、テンヌキの世界の文字は、少ししか死ななかった。
『私はテンヌキ。「和樹」のスマホのLINEの世界の「ボス」だ!!』
広場がざわめいた。
「『ボス』...だって!?」
「は!?そんなことのために!!?」
東は「老」の話を聞いて怒鳴った。
『私の世界の文字よ、伝えたいことがある。東は、元々人間だった。だが、「通路」に不具合が起きてしまい、このLINEの世界に迷い込んでしまったのだ。なので、この世界から人間の世界に戻るために、この「東湊太」のスマホに来たのだ。それを許してほしい。それから、』
テンヌキの声が強く大きなものに変わった。
『私の世界の文字を殺したこの世界の文字よ!!』
「守」の文字たちがびくっと肩を跳ね上げる。
『お前たちは、いくつもの命を奪ったことを反省しろ!!...そして、』
テンヌキの声が少し小さくなった。
『今からこの世界にいる全ての文字に、ある「作戦」を手伝ってほしい.........。今からすぐ、屋敷近くの公園に来てほしい』
テンヌキは、マイクを切った。
「ふう」
テンヌキは、放送室から出た。放送中に家来が来なくてよかった。テンヌキはつくづくそう思う。
「あとは...」
テンヌキは屋敷の非常階段を駆け上がった。
「送電室!」
屋敷の最上階には、この屋敷に通っている電気のもとがある。電気を止めて目をくらませて逃げようということだ。
だが、送電室には、家来がいた。
『警報!警報!』
ジリリリリリリ!
送電室では、警報を鳴らすこともできる。
「くそっ...こんなところで...」
『侵入者!侵入者です!放送室に何者かが入り、放送を...うぐっ!』
テンヌキは静かに送電室に忍び込み、送電室にいる文字の口を塞いだ。
『もがっ...だ、誰、か...』
テンヌキは「守」の文字の頭を、銃の持ち手で殴った。
『うあ゛っ!』
「よし...」
テンヌキは階段を駆け下りた。
「うっ!」
テンヌキは階段の途中で足を止めた。さっきの騒ぎを聞きつけて、銃を構えた家来が、数え切れないほど立っていた。
「くそっ、ここまでか......」
家来の文字の一つが、「撃て!」と指示した。家来たちの指が一斉に引き金にかかった。
「......とでも言うと思ったか!!」
テンヌキは玉が一発飛んできたところで、階段から地面に飛び降りた。
「なっ...ここは...六十階だぞ!?」
テンヌキは飛び降りながら考えた。
(...当初からここで飛び降りる予定だったんだ...ここで、東たちが、クッションを持ってきてくれる...)
はずだった。テンヌキがクッションにしっかり着地する...はずだったのだ。だが...
「えっ?」
下には誰もいなかった。
テンヌキの体は硬い地面に...
グシャアッ!
続く
テンヌキ...どうなったんだ!?