LINEの生活#31 法律変更宣言(例外)② 画像変えましたあ!!!!
「法律変更宣言」とは、「ボス」に一度だけ与えられる、法律を変えることができる権利のことだ。もし、変えた方が良い、という法律があれば、「ボス」と家来が全員で話し合って、法律を変えることができるのだ。
だが、これにはデメリットがあった。使えるのは、十二月三十一日に行われる、一斉処刑の直前まで。もし、直前に「法律変更宣言」をしたとしても、会議にかかる時間もあり、会議しているうちに処刑の時間が来てしまうので、法律変更宣言を使った「ボス」は、殆どいなかった。
東は前に、「お」にこのことを教えてもらっていた。なので、テンヌキの発言に、顔をしかめた。
「...良いアイデアだと思うんだけど...『法律変更宣言』って、大晦日の処刑の直前にしか使えないよな?...今日、大晦日じゃねえぞ...!!」
辺りがざわつく。
「ちょっと...何言ってるんですか...『ボス』...」
「まだ大晦日ではありませんよ!!」
そうだそうだ!と、ブーイングが湧いてきた。
「どういうつもりですか、今日はまだ、使えませんよ!!」
秘書の「東」でさえ、テンヌキに意見をするほど、「法律変更宣言」をすることは、重大なことだったのだ。
テンヌキはしばらく黙っていたが、やがて、ニヤッと笑って、
「これでどうだ?」
と言い、モニターを出した。
「テンヌキ...何するつもりだ...!?」
東はただ、見守ることしかできなかった。
テンヌキはリモコンを取り出し、モニターに向けてスイッチを押した。
バン!とモニターに画像が映る。その画像には、手紙が映っていた。手紙には、
もし、どうしても、処刑を無くしたい「ボス」がいるのなら、いつでもこの手紙を、民衆に見せなさい。
今、ここで、一斉処刑の法律をなくすことを、宣言する。
その際、法律変更の会議は、廃止することとする。
そして、この手紙の有効期限は、一生とする。
ずるいかもしれないが、いつかの「ボス」が、民衆にこの手紙を見せた瞬間から、この手紙に書かれている内容を、今、私の独断で、これからこの世界が続くまでずっと、このLINEの世界の法律とする。
二千七年十二月三十一日 著
いつかの「ボス」へ
一代目「ボス」 「あ」より
と、書かれていた。
「...これは、一代目『ボス』から、代々受け継がれてきた手紙だ」
辺りがしんと静まり返った。
「...つまり、これはテンヌキが法律を変更したわけじゃなくて、一代目の『ボス』が変更したってこと?...まあとにかく法律は変わった!!」
東はぱあっと顔を輝かせた。
「この一代目の『ボス』が残してくれた手紙のお陰で、
一斉処刑がなくなる!!
やった!!!」
「これで理解しただろう。つまり今この時を以て、
一斉処刑は廃止だ!!」
「テンヌキ...お前、すげえ..!!!」
「僕はこれから、決して裏切り者を指すような政治をするつもりはない!だから、これからは、この法律でいかせて欲しい!!」
「...裏切り者を出さない、という証拠は?」
「これからの僕を見て決めて欲しい。それと、」
テンヌキは、どこから持ってきたのか、鞘のついたナイフが、大量に入った箱を持ってきて、その中身を、ステージにばらまいた。
「!?これは!?」
「もし、僕が裏切り者を出すような政治をしていたら、」
テンヌキは、首を切るようなジェスチャーをした。
「僕を殺してください」
ざわっ!と、さっきよりも辺りがざわついた。
「おいおいおいおい...何言ってるんですか...」
「うそ...」
テンヌキは、そんな言葉に構わず言った。
「これで、『法律変更宣言』及、『第十四代目 新「ボス」即位式』を終了する!!」
テンヌキは、即位式が終わってからすぐ、民衆にナイフを配った。だが、誰も、そのナイフを手に取らなかった。
「...テンヌキ、殺してくれ、は、言い過ぎじゃないか?」
「大丈夫大丈夫!自信はある!!」
「でもねぇ」
「心配しなくて良い」
そんなふうに話をしていた二つの文字。話のネタが切れてきたところで、東が口を開いた。
「とりあえず一件落着となったことだから、そろそろ俺も人間の世界に戻らないとな」
一仕事終えた!とばかりに、東は汗を拭うようなジェスチャーをした。
「あの...東?」
テンヌキが、言いにくそうに言った。
「ん?」
「人間の世界に戻る方法はないと思うんだけど」
「...はい?」
続く
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