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国境廃止

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国境の無くなった世界で繰り広げられるSFサバイバル!
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記事一覧

国境廃止<第一章> 第七話 「α地点 ①」

「う…」 私は目を開けた。目を突き刺すような眩しい光が入ってくる。きつく縛られている。何もない部屋。ここはどこ? 私は記憶を辿る。月を壊した女の子?に会って眠らされた…そうだ。何処かに連れてこられた?じゃあここはどこ? そんな私の疑問に答えるように、部屋の扉が開いた。現れたのは白衣に身を包み、メガネをかけた男。 「誰…?」 「私は北原宇宙(そら)。世界の父だ」 彼が世界の父だということに驚きを隠せなかった。(ていうか名前…) 「なんで私を捕らえたの?」 「それは君が、この世界

国境廃止<第一章> 第六話 「月を壊した女」

一週間空いてすみません!今の忙しさがエグいので六話は短いです。 前回までのあらすじ 十年前、第三次世界大戦が起こり国境がなくなった地球。元日本である「J-17地点に住む国子だったが、国子が高校生の時に、第四次世界対戦が起こる。第四次世界対戦で母親を亡くした国子だったが、母親の残す「『α地点』を目指せ」という言葉を頼りに旅を続ける。 その中で、世界と「ココロ使い」の高市という男と出会い、旅を続けることが決定しかけたが、実はこの二人は、宗教上の関係で、対立関係にあった。この二人が

国境廃止 前日譚「一つの手記」

page2俺はこれを書き終え、予知の力が入った袋を出して、そこらへんの茂みに隠しておいた。手記も一緒に。 俺の予知の能力は、あまり使われなかった。なぜなら、全くあてにならないから。ぼやっとしかわからない。明日が晴れるかも。そんなことしかわからないからだ。 ただ今ははっきりと分かる。あの男が、仲間の女と、この『α地点』に来るということが。 そこからこの世界はどうなるのだろうか。見てみたい気もする。期待外れかもしれないから、見てみたくない気もする。 でも、 「もう遅いか」 後ろの

国境廃止 前日譚「ひとつの手記」 前編

Prologue「α地点」。はじまりの地。 とある集落。その集落は、隣同士の集落と、長い争いを続けていた。争い、は、戦争レベルにものぼっていた。「α地点」のほとんどの人間は、銃なんて普通に持っていたし、大砲まで持っている者までいた。 昔からの伝統、とでも言おうか。伝統なんて生やさしいものではないが…。 「α地点」と呼ばれる島では、国境がなくなる前から戦争が続いていた。 理由はわからない。ただなんとなく、昔からやっていたから。そんな理由で、戦争が起こる。それがこの「α地点」。

国境廃止<第一章> 第四話 「おわりのはじまり」

うん、そうだよね… 多分、そういうことなんだろうな。 私が二人目の、「ココロ」になっちゃったんだろうな… 『そうだよ』 ほら、やっぱり。この頭の奥から聞こえる、ボイスチェンジャーを使っているような、甲高い、ロボットみたいな声。 『お前、死にたいのか?』 ロボットは私に問う。 「なんで、そんなこと聞くの?」 『さあな、俺が知りたいからじゃないか?』 「死にたいかどうか、か…私にもわかんないよ」 『ほう』 「私が死んでも死ななくても、この地球はおんなじようにただ廻ってるだけじゃな

国境廃止<第一章> 第三話 「ただいま、世界。」

ふわふわと、体だけが浮いている。魂はどこに行ったんだ? いや、これは体じゃないのかもしれない。 浮いているのは、未来に対する、漠然とした不安。 体も頭も心も。いじくり回された俺は、この先どうなるんだろう? 『バイバイ、国子』 目覚めたのは、無機質な目覚まし時計じゃなく、誰かの声だった。 温かく優しい、誰かの声。 硬い木のベッドから香る匂いは、なんだか落ち着く。 多分世界の能力っていうのは、「木」でできたもの(武器以外)ならなんでも作れるんだろう。 世界はもう起きているらしい

国境廃止<第一章> 第二話 「はじまりの星空」

暗闇の中、私は私を嫌っている。 私のやってること、思ってること。矛盾している。全部空回りしているんじゃないか。 人と関わるのが嫌いなくせに、関係を大事にしたい? こういうのを自意識過剰っていうんだろう。 私は孤独だ。 こんな悩みを話せる人もいない。話せる人がいないから、環境のせいで、人のせいで、私はこんなことになってしまったんだと、 今はそう、信じたかった。 「はっ」 目が覚めた。私はベッドに寝ている?なんで?全部夢?そんなことあるはずないだろう。「α地点」について書かれた

国境廃止<第一章> 第一話 「わるものの涙」

最近、ふと思うことがある。 私は、どう思われているんだろうか。 私には友達がいる。仲良くやっているつもりだ。そう。「つもり」に過ぎない。 当たり前のこと。他人の考えていることはわからない。自分がどう思われてるかなんて、わかる人はいないだろう。 佐藤恵。彼女とは親友と呼べるくらいに仲がいいと、私は思っている。でも、彼女が私のことをどう思ってるかはわからない。私のことを嫌っているかもしれない。 そんな行き場のない不安が、頭の中でぐるぐる回っている。 他人のことがわからない。そんな