#1 偏屈なテーマほど愛したくなる話【前】(テーマ:ホーリーナイツ)
はじめに
こんにちは。初めましての方は初めまして。
遊戯王カードを愛して十余年、「ぱすてる」と申します。
学生時代、かつて地元の友人と楽しんでいた遊戯王。社会人となった今では住処が散り散りになってしまい、気軽にできなくなってしまいました。
新弾の情報を報告しても帰ってくるのは薄い反応…
こちらがデッキを5~6個仕込んでいる間も動く気配なし…
それでも私は遊戯王がしたい!
仲間と新規で一喜一憂したり、エレガントなコンボについて語らいたい!
ということで稚拙ながらnoteを始めた次第でございます。
どうぞよしなに。
堅実な自己紹介から打って変わって、ここからは書きたいことだけを並べていく時間だ。推敲は努めて行っているが、誤字脱字等ある可能性があることをご留意いただきたい。
また当記事には筆者個人の見解が多分に含まれるため、お気に召さない人はブラウザバックを推奨する。
「偏屈なテーマ」とは?
「偏屈」について
私は記事タイトルに敢えて「偏屈」という形容を用いた。
日本語に精通した読者諸君には態々意味を説明しなくても良いとは思うが、一応インターネット百科事典「コトバンク」から意味を引用しておく。
物事が中々扱いにくいさまを形容するときに使う言葉のようだ。
うーむ、辞書を引くということが更なる叡智発見の場として良いものだと、ふと思いついた単語からなんとなくブログを始めてしまった筆者は感じている。
冗談はさておき、「偏屈なテーマ」とは何か。
「偏屈なカード」というのはあるだろう。召喚条件がとんでもないカードとか、効果に自己矛盾を抱えたカードとか。
ただし、あまりにも条件が厳しい「不遇」と呼ばれるようなモンスターに関しては、専用の構築を目指したり、ある種のネタとして消化するなど決闘者の興味関心を引くだろう。
《眠れる巨人ズシン》や《絶望神アンチホープ》、《ゲート・ガーディアン》などが該当する(と思っている)。こういったカードは研究が進み、動画配信者などが取り上げることも少なくない。
《ゲート・ガーディアン》に至っては「WORLD PREMIERE PACK 2023」で新規を貰い、召喚が実用的になっている。
しかし、「偏屈」なカードたちというのは、不遇、あるいは不遇に近い立ち位置にいながらもカードとしての興味を持たれにくく、解決法や構築の方向性が少ないものである。某診療所か医学会に『成程、これは重症だ』と取り上げられれば良い方である。
とはいえ、正直「偏屈」と感じるかどうかは知識量や各カードの愛好度によって左右されるので、この論はあくまで筆者個人の見解・感想である。
では、偏屈な「テーマ」というのがどういうものか。
筆者はこう位置づけた。
テーマの弱さをネタにするほどでもなく、かといって強さに注目してもらえるわけではない。
カードたちの実用性・安定性には欠けるが、新規や相性の良いカードが出るという期待が持てない…
「テーマにはしたから、後はいま有るカードだけで何とかして!」
そんな天啓を受たテーマを「偏屈」であると表現させてもらいたい。
テーマの紹介
いざ紹介しようという時に散々なネガティブキャンペーンをしてしまった訳だが、この記事はそんな偏屈テーマに出会ってしまった筆者が何とか使いこなしたいと頭を捻った軌跡をつづったものである。
ぜひ、お付き合いいただきたい。
本日紹介するテーマは、タイトル及びサムネ画像からわかるように
「ホーリーナイツ」
である。
このテーマが誕生したのは2020年12月5日発売、「SELECTION 10」でのことである。
聖夜――クリスマスをモチーフにし、神聖騎士と掛けられたと思われるカードデザイン、闇属性へのメタ効果を持つ竜、キリスト教関連の名前が付いた魔法・罠の数々。
このことから「キリストの降誕」をテーマで再現している、と思われる。
詳細は遊戯王wikiに書いてあるので一読を推奨する。情報も少ないのですぐ読めるぞ。
https://yugioh-wiki.net/index.php?%A5%DB%A1%BC%A5%EA%A1%BC%A5%CA%A5%A4%A5%C4#
余談だが、「ホーリーナイツ」が登場したこの「SELECTION 10」というパック、収録内容が酷かったことは話題だろう。
10テーマ100種のカードを収録したはいいものの、半数が新テーマ(「ホーリーナイツ」と「聖天樹」)であったため残る8テーマの新規は枚数に差があり、再録がないテーマすら存在した。
悪いところを挙げればキリがないので割愛するが、後輩パック「SELECTION 5」ではマスターデュエルからの参入勢にも配慮してか始めやすさに特化していた印象だ。反省を生かしいいパックを作らせたという意味ではよい点だったのかもしれない。
カード解説
テーマの特徴
導入から約2300字、漸くテーマの説明をはじめるとしよう。
属するモンスターは全員「天使族・光属性・レベル4」で統一されており、それらが「ドラゴン族・光属性・レベル7」を出力したり、それを活用した展開を行う、といったコンセプトとなっている。
さながら下級天使たちが信徒、上級ドラゴンがイエス・キリストといったところだろうか。
ちなみに「ドラゴン族・光属性・レベル7」モンスターに関してはカテゴリー名を持つモンスターが存在しない。
では該当するカードはというと…
ふむ、中々個性的なカードがそろっている。
「ホーリーナイツ」で有用そうなカードをいくつか抜粋して紹介しよう。
なお、ここから「ドラゴン族・光属性・レベル7」モンスターについて、単に「竜」と表現する。
文字数の節約と、他のドラゴン族モンスターと混同させないためであるので、ご留意いただきたい。
「ドラゴン族・光属性・レベル7」
「SELECTION 10」収録の実質テーマカード。
ターン1のない破壊効果、闇属性モンスターに対する軽いメタ効果、戦闘補助効果と、その効果は多岐にわたる。特に①の破壊効果を繰り返して使い、相手の盤面を崩していくのがいいだろう。
ストラクチャーデッキR「巨神竜復活」で登場した大型の「竜」。「SELECTION 10」にも再録。①の効果は《復活の福音》などで発動を狙うもよし。
②の蘇生は自身を対象できないのと、先述した《聖夜に煌めく竜》を蘇生する場合、①の破壊効果が発動できないことに注意。
「GALACTIC OVERLOAD」収録の「ライトレイ」モンスター。該当する「竜」の中では《オッドアイズ・セイバー・ドラゴン》とともに2800という最高打点を誇る。相手のセットカードをデッキバウンスする効果は相手の妨害の捲りとして期待でき、名称指定のターン1効果ではないため出し直せば複数回使える。
「ホーリーナイツ」カードの効果でこのカードを特殊召喚した場合は蘇生制限を満たさないので注意。
「LIGHTNING OVERDRIVE」収録のモンスター。②の効果は書き方がややこしいが、要はサーチ後の相手手札をデッキトップとそっくり入れ替える効果である。せっかく行ったサーチを台無しにする、見た目の割に性格の悪い効果である。
他の「竜」に比べ出力は簡単であるが、相手盤面に直接介入する効果を持たない点と攻撃力が同レベル帯に比べ低い点はネックと言えるだろう。
下級「ホーリーナイツ」
先述した通り、「ホーリーナイツ」モンスターは全員「天使族・光属性・レベル4」で統一されている。
効果は2つに分かれており、①は主に自己もしくは「竜」を展開する効果、②は墓地から発動できる効果が主となっている。
また、攻守の合計値が2500で統一されている。「蠱惑魔」と同じ感じだ。
(蟲惑魔はリンクモンスターを除き攻守の合計値が2800である)
頼れる3積み枠。①②の効果がどちらも使い勝手がよく、初手に欲しいカードの1枚である。
「ホーリーナイツ」はテーマ内でのリソース循環手段が非常に乏しく、モンスターと魔法罠両方に干渉できるカードとして重宝するカードである。
また、「ホーリーナイツ」モンスターの中で一番攻撃力が高いため、アタッカーとしても使えなくはない。
服装が結構きわどい。
「竜」お助けキャラその1。①②効果ともに「竜」をサポートする反面、「ホーリーナイツ」カードに触れる効果を持たない。
①の効果は相手ターンでも使えるので、《聖夜に煌めく竜》を特殊召喚すれば妨害にもできる。
攻撃力が低いので、棒立ちや通常召喚時は注意。
「竜」お助けキャラその2。《ホーリーナイツ・アステル》同様「竜」をサポートする効果で構成されているが、発動条件や②の効果の内容は異なる。
「ホーリーナイツ」モンスターで唯一、①②効果の使用が「1ターンに1度いずれか1つ」であるため注意。
「LIGHTNING OVERDRIVE」で登場した追加戦士天使その1。
①の効果は「竜」を回収するのは勿論、召喚時効果を使った《ホーリーナイツ・レイエル》を戻して発動してもよいだろう。
②の効果は滅多に使わない(筆者談)が、返しのターンに展開する手段として使えるだろう。
「BURST OF DESTINY」で登場した追加戦士天使その2。
①②ともに自己完結しやすい効果のため、「竜」さえ出せれば半永久的にリソースを稼ぐことができる。このカードのおかげでこのテーマは1段上の強さを手にしたといっても過言ではない。
現状「ホーリーナイツ」魔法・罠にアクセスする手段がこのカードと《ホーリーナイツ・レイエル》しか居ないため、初手でどちらかを引き込んでおきたい。
「ホーリーナイツ」魔法・罠
「ホーリーナイツ」モンスターの展開をサポートするカードがある一方、「竜」に関連する効果しか持たないカードも存在する。
モンスター達と異なり「SELECTION 10」で5種登場して以来新規を与えられていない。
また、魔法罠はどれもカード名とイラストがうまくマッチしている感じがして結構好みである。ただ、どのカードも「ホーリーナイツ」というルビ振りの該当する部分が「聖なる」「聖夜の」「煌めく」と、かなりややこしい。
日本語読みは気合で覚えよう。
サーチ役。篝火と書いてあるが、レベル4以下の炎属性はサーチできない。
モンスターと魔法・罠の連環が弱い「ホーリーナイツ」にとって非常に重要なリソース確保の手段である。限定的だがおまけ効果で「竜」を出力できるため、盤面を崩された返しのターンに即降臨、という芸当も可能である。
展開補助役のフィールド魔法。正直魔法・罠の中で一番弱い。
いや、語弊がある。『弱くはないが、別に強くもない』『他テーマのフィールド魔法に比べたら随分弱い』といったところか。
①の効果は、自己展開効果をほぼ持たず横並び展開に乏しい「ホーリーナイツ」にとってはありがたい効果である。
逆に②の効果は「自分ターン」という語句を入れた効果デザイナーに2時間ほどお説教したい。絶対要らなかったやろこの5文字。
「竜」をサポートすることに全力を賭している永続魔法。①の効果でサーチして②の効果で展開するという1枚完結型。実は「ホーリーナイツ」カードを指定したテキストを持たないため他の天使族・光属性テーマに出張して使用できる。(実用的かはさておき)
結構使えそうだが、重ね引きした時はどうしようもない点が惜しいところ。《七精の開門》や「アクアリウム」カードのように複数置いても意味のあるカードであったら尚よかったのだが。
「竜」を手札・場で継続的に行き来させられるカード。「竜」を特殊召喚して妨害を狙うのはもちろん、場の「竜」を回収して妨害を回避したり「ホーリーナイツ」カードの効果のトリガーにもできる。こいつがあるから《煌めく聖夜》の②効果に自ターンの縛り要らなかったと痛感してしまう。
「ホーリーナイツ」カードの中で唯一直接相手を妨害するテキストを持つカード。「竜」を手札に戻すという発動コストの特性上、素引きや「竜」のいないタイミングでは非常に扱いに困るカード。
妨害札かつ「竜」を受動的に手札に返すカードとして便利だが、通常罠なのでスペルスピードやチェーンの組み方には注意。
テーマの強みと弱み
さて、聡明な読者諸君は一通りのカードを見て
「ああ、手札から「竜」を出したいんやな…」
「「竜」を手札に戻して色々しつつ何回も出す感じね」
と、このテーマのやりたいことが大凡見えていることだろう。そう、「ホーリーナイツ」の想定される戦略は
『下級で「竜」をサポートし、往復ターンで複数回出力してアドを取る』
といった感じである。
天使たちの祈りによって「竜」を戦場に降誕させ、盤面を駆け巡ったのちに人々の知覚の外――非公開領域に消えていく…
という、「竜」を上位存在であるイエスに見立てたようなテーマの世界観とデザインは、実に美しくマッチしているだろう。
これを踏まえ、このテーマの強さ・弱さについて検討しよう。
テーマの強さ
一番の強みは、このテーマの根幹でもある『「竜」を複数回出力すること』である。
テーマ内には『手札から「竜」を出す』カードと『「竜」を手札に戻す』カードが複数枚存在し、発動タイミングや効果の種類によって棲み分けされている。
これにより、複数のカードを組み合わせつつ「竜」を何度も出力することで、その効果を1ターン、あるいは往復ターンで何度も使用できる。
想定エースとして「SELECTION 10」で収録された《聖夜に煌めく竜》は①の破壊効果にターン1が存在しない。何度も破壊効果を用いて、相手盤面を荒らすことが可能だ。
次に意外な強みであるのが、『テーマ内に「制約」を発生させるカードが存在しない』ということである。
「ホーリーナイツ」というテーマは、その強さの所為か「竜」たちの特殊なカテゴライズの所為か「制約」を付けるカードが一切存在しない。
そのため、優秀な他「制約」持ちテーマを採用可能であり、「ホーリーナイツ」として展開した後、妨害や展開を拝借することもできる。
無論これはテーマ内に「制約」を持たないテーマ共通の話ではあるのだが、「ホーリーナイツ」は種族・属性・レベルが統一されたテーマであるので、拡張性が大きい方だといえるだろう。
テーマの弱み
さて、ここまでカードの紹介と強さを(効果テキスト含め)約10,000文字に亘って綴ってきた訳であるが、勘違いを防ぐために申し上げておこう。
このテーマは弱い。
よく分からなかった人のためにもう一度。
このテーマは弱い。
デュエルリンクスでは強いらしい?が、筆者はOCG一筋のためそのあたりの評価は知らない。少なくとも筆者にとって「ホーリーナイツ」は、致命的な弱点を抱えた偏屈テーマなのである。
一つ目の弱みは『要求枚数が多すぎる』である。
再掲するが、このテーマが想定する流れは『下級で「竜」、魔法・罠を集める→「竜」を出力→「竜」を手札に戻して展開→「竜」を出力…』である。
しかし、これを成立させることのできる明確な単体初動が存在しない。
必ず2枚以上の初動になる上、安定した展開パターンを自テーマ内で完結して用意できるほどのカードパワーを持たない。
テーマとして安定した盤面を供給するには他テーマや汎用カードが必要、という物悲しい矛盾がそこには有る。
二つ目は『召喚権をテーマ内で喰い合う』である。
フィールド魔法《煌めく聖夜》の部分でも少し触れたが、「ホーリーナイツ」モンスターたちはテーマの特性上「竜」を降臨させることに必死なため、自力展開する効果をほとんど持たない。
《ホーリーナイツ・レイエル》《ホーリーナイツ・オルビタエル》以外は単体で召喚しても棒立ちするだけ。追加展開を望むならプラス1枚何か展開しなければならないが、事前に《煌めく聖夜》を準備できなければそこに召喚権を割けないのだ。
三つ目は『突破力がない』という点である。
「竜」、とりわけ《聖夜に煌めく竜》を何度も盤面に出していくという構造上、「ホーリーナイツ」カード内には直接盤面に干渉する効果が存在しない。
《聖なる煌炎》(通常罠)がしいて言えば妨害ではあるが、後攻1ターン目や相手の展開を返していくときには使えない。
戦闘での突破を試みようにも、下級の最大打点は1800。《聖夜に煌めく竜》で一度高打点モンスターを一時除外できるとは言え、打点は2500。光属性のお友達こと《オネスト》を採用できるテーマであるが、素引き前提の不安定要素に戦闘シーンすべての責任を負わせるのは酷なものである。
筆者は悩んだ。
なんとか「ホーリーナイツ」を活用する方法を。
筆者は悩んだ。
偏屈テーマの愛し方を。
そして筆者は、彼らの持つ特徴を最大限に生かすカードを探すべく、
「遊戯王OCG カードデータベース」との地獄のにらめっこを始めるのだった…
(後編に続く)