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令和の「オトナ帝国」化

(ヘッダー画像はAmazon商品ページより)

映画クレヨンしんちゃん屈指の名作「オトナ帝国」

 映画クレヨンしんちゃんは、今年で33周年、今年の夏公開の映画で通算32作目となる。そんな長い歴史を持つクレヨンしんちゃんの歴史の中でも、特に高い評価を受けている作品の1つに「嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」が挙げられる。

ストーリー
“20世紀博”というテーマパークにハマっていたひろしとみさえが、大人であることを放棄ししんのすけとひまわりの前から姿を消した。いや、ひろしとみさえばかりではない、春日部中の大人たちがいなくなってしまったのだ。そしてその夜、ラジオから“イエスタディワンスモア”と名乗る組織のリーダーであるケンとチャコが、見捨てられた子供たちに投降するよう呼びかけてきた。実はケンたちは、21世紀=未来に希望を持てなくなった大人たちを洗脳し、大人だけの楽園”オトナ帝国“建設を企んでいたのだ。このままでは、未来がなくなってしまう! しんちゃんを初めとするカスカベ防衛隊は、ケンたちの計画から大人たちと自分たちの未来を取り戻すべく20世紀博へ乗り込むと……(以下略)
(映画.comの作品紹介ページより)

とても高い評価を受けている作品で、20年以上経った今でも人気がある作品なのではないだろうか。(その証拠か、新作が公開される度に本作と比較したレビューが顕在される。別に比べなくともいいと思うのだが……)

令和のオトナ帝国化

さて、映画に描かれたのは2001年、21世紀を迎えた最初の年である。
「21世紀に希望はない」ということで大人を洗脳し、「21世紀を終わらせる」「20世紀を取り戻す」ことが(しんちゃんたちにとっての)敵組織の考えであった。
その際に、敵組織が手段が「20世紀博」という20世紀の追体験ができる施設で、かつてオトナたちがハマった遊びやアニメ、おもちゃなどに触れさせ、「懐かしい」「20世紀は良かった」というオトナたちに植え付けることであった。
変わって現代、令和である。
街を見渡すと、街中が「20世紀博」、いや、「昭和•平成博」となっていると感じる。

昭和や平成の番組を特集したり、オマージュしたりしたテレビ番組。
昭和や平成に人気だったキャラクターグッズの再展開。
昭和や平成のキャラクターグッズが封入された食玩やガチャガチャ。
昭和や平成のアニメのリメイクや続編の公開。
本来、子供向けで展開している作品がスピンオフや劇場版でオトナ向けになっていることもある。

映画「オトナ帝国」内で行われたことが、現実に侵食してきているように私には感じる。
なぜこうなったのか。
単純に、オトナ向けに展開した方が儲かるからだろう。
(昭和や平成に「懐かしさ」を感じる世代は、自分で支払う能力がある世代がほとんどだ。)
結果として、「オトナ帝国」と同じく、街中に「懐かしい」「あの頃は良かった」が溢れかえっているのだ。
と、なると、「オトナ帝国」同様、「令和に希望はない」と感じている人も多いのではないだろうか。
コロナの流行、物価高、円安、世界情勢の悪化・・・・・・
身近な悩みの種まで掘り下げたら、お先真っ暗である。
これでは「令和に希望はない」、だったら、「輝いていた昭和・平成に浸りたい」となる。
このような現状・考察から、タイトルに書いたような「令和のオトナ帝国」化を感じているわけである。


でも、本当に令和に希望はないのだろうか。
過去だけを振り返っていていいのだろうか。
(ネタバレになるが)映画のしんちゃんたち同様、これからの「楽しいこと」を目指して、希望のために走り出さなければいけない時がきているのではないか。

そう頭では思いながら、寒さに震え、リビングでお茶を啜る佐倉であった。

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