本がつないだ本との出会い
古本サイトで向田邦子の本を買った。
表紙を開くと、あるギャラリーでの個展を案内するポストカードが挟まっていた。
「ご購入ありがとうございました。
お身体くれぐれもご自愛ください。」
青いペンで書かれた、柔らかい筆者体のメッセージ。優しいなぁ。
そのギャラリーをよくよく見てみると、
私の家から歩いて15分くらいの場所だった。
自粛疲れも続いているので、気晴らしに出かけてみることにした。
国立駅は落ち着いた街並みで、「museum shop T」(https://t-museumshop.com/)というギャラリーは少し奥まった通りのビル3Fにあった。
「地域の文化と本のあるお店」とポストカードで紹介の通り、本のセレクトショップにちいさなギャラリースペースが併設されている。
入った瞬間に「わたしの好きな場所だ」とわかった。3年住んでいるのにこんなところがあるなんて全然気が付かなかった。
ある作家さんの個展が開催中。
本に挟まっていたポストカードの作品も含め、色とりどりの作品が飾られている。
偶然、今日は作家さんご本人が在廊だったので、
「実は古本に挟まったDMを見て来ました」と話しかけてみた。
私はこうやって初めて会った人や店員さんとゆるくつながることが好きなのだ。
「えっ、そうなんですか?」と作家さんはご存知ないよう。
古本の売主は誰かわからないし、ショップの店員さんからも話しかけてもらったが、もちろんショップが販売したものではないそう。
「不思議ですね。まぁでも、なんかこんなのもいいですね」
と3人でマスク越しの楽しい会話。なんだか嬉しい。
museum shop Tは、本のセレクトが本当にわたしの「ツボ」だった。
普通の本屋さんでは見逃してしまいそうな個性的な本たちが、宝箱みたいにぎゅっと詰めこまれているみたいだ。
そこで今日手に取ったのは、川上弘美の「わたしの好きな季語」。
川上弘美は、国語の教科書に載っていた「離さない」という短編を読んだのを覚えている。
ちょっとヒヤッとする内容で、解釈を読者にゆだねるような結末で、考えさせられたっけ。
今、わたしは「チベット語」という海をぎこちないバタ足で泳いでいる。
まだまだビート板や先生無しではとても泳げない。
最近気づいたのは、どうやら「日本語」の海でも泳ぎ方を覚えないといけないこと。
チベット語を訳すには日本語の語彙もたくさん知って、言葉を適切に当てはめる技術やセンスも問われることが分かってきた。
やれやれ…自分の力の無さがもう…。
そこで、難しい文学から入るとハードルが上がるので、やさしいエッセイから手に取ることにしてみた、というわけ。
日常って、こんな思いがけない出会いが日々溢れていたんだった。
外に出かけることが無くなって、そんなことに気付いたのだった。
作家さんとショップの店員さんにおすすめのギャラリーのDMをもらったので、また偶然と出会いに出かけよう。無理せずね。
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