占いの結果
予言の記憶
新婚当時の両親が、占い師に相談する機会があったらしい。
父に対して占い師が言ったことを、母は覚えていた。
「ご主人を言い負かすような子供が生まれます」
そのことを聞いて、思わず苦笑いした。なぁるほど、兄は確かに弁が立つし、理路整然としていないと癇癪を起こす。
まあ、彼にかかれば、完膚なきまで、言い負かされますわなぁと言いかけると、母は顔の前で手を振った。
「あなたのことよ」
え? 俺?
確かに、指示代名詞がぼんやりしていたり、月並みな世俗的道徳論で困っている人を平気で糾弾している時の父を見ると、イライラとしてしまう。
天才や秀才に罵倒されるのは仕方ない。悔しいが、自分の思慮の足りなさを恥じて、悔しがればいい。だが、馬鹿にしてきた人間が、自分より馬鹿だと腹が立って仕方ない。
だから、あれだけ自分をちびだの馬鹿だのと言っていた男が、信じられない程、知識が無かったり、そのことに無自覚だったり、母の純朴な好奇心を小馬鹿にするほど尊大だったりする。
建国記念日
例えば建国記念日。
建国記念日を知っているか。昔から、初代の神武天皇が即位した日として祝ってきたのだぞ。
いや、カムヤマトイワレビコが即位した記述は記紀神話にあるが、日付は明記がない。明治憲法の公布に合わせて、後から作られた祝日にすぎず、近代国家の記念日という意味では、確かに建国の日といえる。
しかし明治以前から祝祭があったというのは嘘。
頭ごなしに言うのではなく、順を追って説明したり、喩え話をする。自分ではちゃんと話をしているつもりだったが、見ようによっては父を言い負かしているのかもしれない。
幸い、占い師の話を父は覚えていない。良かった。
ちなみに自分は占いをあまり信用しない。おみくじを読む楽しむが減るからだ。