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36.喫煙発覚

2年生の時に2人部屋で一緒だったNは3年生になると4人部屋に移っていった。したがって行くあてのない私は1人部屋になった。念願の個室である。何をやってもOKだ。あんなことも、こんなことも、自由自在である。早速私は寮の個室でタバコを吸い始めた。しかし、それは後に難をもたらすことになるとは当初は考えていなかった。
ある日、授業を終えて自室に帰ってきた私は、何か不自然な感じがした。部屋の雰囲気というか匂いが違うのである。誰かが私の部屋に入ったに違いない。そこで目にした光景は、私を失望のどん底に落とし込んだ。毎日吸っていたタバコの灰皿代わりの水を入れた紙コップがなかったのである。
私の喫煙歴は小学校4年生くらいから始まった。最初は気管に入れないいわゆる「ふかし」であったが中学校の2年生くらいから転校してきたヤンキーに教えられた。一服は、頭がクラクラして、何か幻覚剤をやっているような感覚だった。それ以来、私の喫煙は常習化していった。
中学校に入ると給食後は屋上へ上がる階段の踊り場でプカプカ。放課後は教室でプカプカ。家に帰って来てからも自室でプカプカ。とうとう担任の「じゃっかん」に見つかって家庭訪問の時に親に言われてそのあとさんざん叱られた。でも、喫煙は止めなかった。今でこそ立派なアルコール&薬物依存症である私であるが、当時はアルコールよりもニコチンであった。
タバコに含まれるニコチンは、合法的に市販されている依存性薬物である。未成年の使用は「未成年喫煙禁止法」で禁じられている。興奮作用を持つが、神経が興奮している状態では鎮静の効果をもたらす。作用時間が短いこともあり、反復使用に陥りやすい。アメリカでは1987年、精神障害の分類に「ニコチン依存症」の名が登場。WHOでも、アルコールや覚せい剤などと同様、中枢神経に作用して依存を引き起こす「薬物」として位置づけられた。肺ガンのリスクや、間接喫煙の害は言うまでもない。
喫煙が見つかって自室で途方に暮れていた私に追い打ちをかけるように担任で物理の及○先生がやってきてたっぷり絞られた。高校に入って頭に拳骨を食らったのはそれが最初で最後である。
寮の教諭である海老原先生も、前に一度タバコのにおいがすると言って注意されたことはあるので、これが2回目だ。もう言い逃れはできない。唯一の救いは現行犯では無かったことである。タバコを吸っているところを見られたら確実に停学を食らっていた。それでも結局、親が学校に呼び出され、一緒に説教を受ける羽目になってしまった。
その日の夜は実家からさんざん電話がかかってきたが、テレビ室に逃げ込んでいた。親と話すのが嫌だったからだ。それでも何度目かの電話に出なくてはいけないことになって一応謝ったが、母はショックで寝込んでしまったらしい。学校へは父が来ることになった。
考えていただきたい。ここは地元の高校ではない。父親も2日会社を休んで羽田経由で空路函館にやってくるのである。その往復費用がいくらかかったかは怖くて聞き出せない。もし、停学なら親と一緒に実家に連れ帰らされて、実家で謹慎し、また親が同伴で学校に復帰するので、交通費だけでもバカにならない。
説教を食らうだけならまだしも、快適に過ごしていた個室も引き払わなければならないことが辛かった。おそらく一人部屋だとまた喫煙するだろうと寮の方で決めたらしい。その後は1.5寮と呼ばれていたアネックスの部屋に移ることになったのである。

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