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ブルーノタウトとシュールストレミング

夢の中で私は大学の体育の卒業テストをされていた。なぜ体育だったのかは全くわからない。とりあえず水泳や陸上競技、チームプレーなどのテストをさせられた上で大きめの教室に学生たちが集められ、そのあと成績発表が行われた。そこでなんと私がトップの成績だったのである。私は中学時代、体育は得意だったが、高校に入るとサボるようになり、決して成績が良かったわけではない。しかも大学の体育というものは単位さえ取れたらいいという考えで怠けていた。夢と無意識の関係はわからないが、私はもしかしたら無意識のうちに体育の授業が好きだったかもしれない。その上、その体育の教師がなぜか小学校5年生の時の担任の村上先生だった。これも謎である。
ただ、卒業がかかったテストといえば大学時代の卒業設計の合格発表は冷々ものだった。この日記でも以前書いたことがあるが、多摩美術大学の建築科は厳しさではたぶん日本一だろう。なにせ一発合格できた学生は60人中私を含めてたった15人ほどだったからである。その他の学生は不合格で留年が決定したり、再提出が求められて、それをクリアしないと卒業できない。そんな思い出があるので卒業の夢は未だによく見る。
夢はその後場面が変わって大学の謝恩会のシーンに移った。謝恩会が開かれるのはなぜか私が卒業設計で模型の代わりに設計施工した和風の木造家屋の大広間だった。その謝恩会が始まる前に私は大学の理事をしている偉い教授に呼び出されて、「君をブルーノ・タウトに紹介しよう。」と言われた。
ブルーノ・タウトは19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍し、鉄のモニュメント(1910年)、ガラスの家(1914年)が評価され、ジャポニスム、アール・ヌーヴォーを通して日本に関心をもち、晩年来日し、長期滞在したドイツの東プロイセンの表現主義の建築家である。来日の翌日、桂離宮へ案内され、桂離宮を世界に広めた最初の建築家であった。日本では建築関係の仕事に、余り恵まれなかったことを少なからず不満に思っていたようだが、その一方で建築理論の構築に勤しみ、桂離宮を評価した著書を著し、熱海の日向利兵衛別邸でインテリアデザインを行った。
なぜ夢の中でブルーノ・タウトが出てきたのかはわからない。時代も違うし、デザインの嗜好も違う。私はどちらかというと現代のノーマン・フォスターやリチャード・ロジャースなどのハイテックデザインやバウハウスなどのモダンデザインが好きで、表現主義は苦手である。しかし、ともあれ著名建築家に紹介されるのは気分のいいものだ。謝恩会は酒肴の乱痴気騒ぎの様相を呈してきたが、急に雨風が大広間に吹き込んで来て、雨戸をみんなで閉めたところで夢はぷっつりと終わってしまった。
目が覚めたときは13日の午前13時を回っていた。お酒を飲んで直ぐに眠ってしまったので喉がカラカラになっていた。思わず烏龍茶を一気飲みしてしまう。その後は烏龍茶を飲みながら日記を書き、Facebookのチェックなどして仕事の時間を待った。午前1時から仕事が始まる午前4時までの間、一切飲酒欲求はなかった。迎え酒を飲むためにコンビニまで買いに行く行為が面倒くさかったからだ。
午前5時過ぎに仕事が終わると、ミニストップに立ち寄って「バーリアル(BARREAL)糖質50%オフ」500ml缶を2本買って帰った。今日は午前中に内科の診察があり、心電図と胸のレントゲンの検査もあるので2本以上は飲まない。
飲みながら日記を書いていると、部屋全体が揺れはじめた。本箱の上に設置してあったステレオの上に置いてあったデュスクが何枚か落ちただけで済んだが、午前5時33分ごろ兵庫県淡路島で震度6弱の地震があったそうだ。大阪も結構揺れた。テレビをつけて見ると大阪は震度4だったらしい。
「バーリアル(BARREAL)糖質50%オフ」の500ml缶をちびちび飲みながら日記を書いていると朝になった。今日は内科の検査がある。最近、毎日体がだるいのでないかの病院で診察してもらったら、血圧と脈拍が高く、レントゲンと心電図の検査しようということになった。病院に行くのでさすがに酒臭くてはダメだと思って烏龍茶に切り替えた。
午前9時半に病院に行く。一通りの検査を終えて診察室に入ると、医師は特に心配はいらないという。血圧と脈拍を測ってみたら正常値だった。症状が落ち着いてきたというので4週間分の薬を受け取って病院をあとにした。帰りに「SAKE市場グランマルシェ」に立ち寄って「SUPER PRIME 糖質50%オフ」500ml6本パックを買う。今日は午後から近所のコリアタウンの公園でシュールストレミングの試食会があるのだ。
家に帰って「SUPER PRIME 糖質50%オフ」500mlを1本飲みながらテレビを見ていると、いつの間にかウトウトしてしまっていた。午後1時過ぎに電話の呼び出し音で飛び起きた。もう集合時間の時間だ。集合場所は今里の交差点にあるファミレスの「ガスト」の前だ。慌てて駆けつけたのでせっかく買った「SUPER PRIME 糖質50%オフ」とタバコを忘れてしまった。一度取りに帰って4人でぼちぼちとコリアタウンへ歩いていく。
コリアタウンではシュールストレミング開缶の前に宴会をしようということになって、ビールやキムチ、蒸し豚、コチュジャン、チャンジャなどを買って公園へ向かった。それから4時間は飲めや食えの大宴会だった。私が持参した「SUPER PRIME 糖質50%オフ」500mlの残り5本を飲み干して、ほかの人が買ってくれた瓶ビールを何杯か飲み、いい感じに酔ってきたところでシュールストレミングを開ける儀式になった。
缶を開けるのはジャンケンで勝ち残った男の中の男の勲章だ。しかし、私はそのジャンケンで名誉にも勝ってしまい、渋々ながら私が缶を開けることになった。シュールストレミングの缶詰は内部で発生したガスによって缶自体が膨れている。開封する際にそのガスによって汁が勢いよく飛び出すので、屋外(噴出を抑えるため水中も含む)で開けることが推奨されている。原産地では缶を開けるための専用の小屋も存在する。だから我々はダンボール箱を組立て、レインコートを着込み、缶詰をビニールのゴミ袋で2重に包んだ状態で、いざ開缶の運びとなった。缶切りで開けた瞬間、ガスと強烈な臭気を伴った液体がゴミ袋の中に飛び散った。缶の中身は発酵が進み過ぎて魚の原型をとどめていず、ドロドロに溶けてしまっていた。この臭気に私は悶絶した。
気密性が高い缶の中で二次発酵を進めているのは、Haloanaerobium と呼ばれる嫌気性細菌の1種である。この細菌が醗酵の過程で、強い悪臭を生成している。悪臭物質として、刺激臭のプロピオン酸、腐った卵のような硫化水素、腐ったバターのような酪酸、酸っぱいにおいのする酢酸などである。その強烈な臭いは、魚が腐った臭い、または生ゴミを直射日光の下で数日間放置したような臭いともいわれる。
実際の匂いは、直感で言って下水の匂いだった。しかも、you tubeの動画で見たような魚の形はまるでない。ただ強烈な臭気を放った濁ったドロドロの液体が缶の中に残っていただけだった。参加者の半分はその臭気でやられてしまい、全く近寄ってこない。レインコートを着込んだ我々3人が試食を試みる。トーストしたパンに半分くらいその液体をつけて食べてみると、強烈な吐き気が襲ってきて私は吐き出してしまった。これは正常な状態では食えたものではない。私は納豆が食べられないが、シュールストレミングを試食するというイニシエーションをすると納豆が美味しそうに感じてしまうので不思議だ。
結局私はほんの少しシュールストレミングの液をつけたトーストをひと切れ食べただけでギブアップしてしまった。これ以上は食べられない。しかし、中には「なかなか塩味が効いていて思ったよりも美味いな」といって何度も食べた人がいるので人の味覚はわからないものである。散歩に来ていた犬もなぜか我々に近づかない。
一通り試食会が済むと我々は4人で「Ms」に向かった。「Ms」に到着する前に残ったシュールストレミングを同じ今里新橋通商店街にある別の立飲み屋の「桂の木」のママに預けた。それがその後どうなったのかはわからない。
「Ms」ではいつもの麦焼酎のロックを6杯飲んだところで記憶が遠くなってしまった。今日のトータルの酒量はかなりの量になっている。最後は泥酔して自宅に帰り、泥のように眠ってしまった。

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