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31.ニヤマ高原スキー場

1年生の時のスキー部での特訓のおかげで2年生になると、そこそこスキーが滑れるようになった。そこで、いつも練習している東山スキー場ではなく、本格的にスキーが出来るスキー場に日曜日などに出かけるようになった。スキーに行くメンツはだいたい決まっている。
函館から一番近い本格的なスキー場は、「ニヤマ高原スキー場」である。「ニヤマ高原スキー場」は函館市街地から23km程度の距離にあり、なおかつ函館本線で30分、仁山駅から300mの近さにあるスキー場でアクセスについては非常に利便性が高い。だが、基本的に古いタイプのスキー場で施設の老朽化や食堂の落ち着きのなさとメニューの少なさや駐車場のキャパ不足と課題は満載である。でも、食堂で食べたジャガイモは美味かった。
 ところで、我々高校生が「ニヤマ高原スキー場」に行く場合、当然車は使えない。どうしても函館本線の普通列車(電化されていなかったから電車ではない。北海道の人はよく汽車と言う言葉を使う)で行かなければならない。ここに問題がある。函館発の時刻表を見てもらえれば分かるが、例えば2010年12月4日改正の時刻表を見ると、早朝に起きて8時17分の長万部行きの列車に乗り遅れると、次に仁山に停車する列車は10時45分の森行きまで待たなければならない。一度、この遅刻をした時には、取り立てて特徴のない函館駅で2時間半待たされた。それだけ列車の数が少ないのだ。東京や大阪の感覚で電車を考えては決してならない。函館本線と言いながら実際はローカル線なのだから。この「ニヤマ高原スキー場」に寮や下宿、それから自宅生混合の4,5人のグループで行く機会が多かった。大阪や奈良では味わえない、北海道ならではのレジャーだ。天気が良ければ大野平野の先に函館山と津軽海峡を望むことが出来る。コースは10コースあり、標高630mから標高130mまでの高低差があり、名物コースの「フリコ沢」の最大斜度は35度だ。スキーをやらない方は想像できないと思うが、35度という斜度はなかなかの斜度である。
最初に行った時は、1年生のときで、スキー部の顧問のみっちゃんが一緒だった、初心者向けのカラマツゲレンデもあったのだが、私はいきなりリフトに乗せられ山頂近くまで上げられた。そこから中・上級者向けの「フリコ沢」コースを根性で降りて来いと言われた。その時はへっぴり腰でボーゲンで何度も転びながら滑走したと記憶する。
2年生になるとその中・上級者向けの「フリコ沢」コースを難なく滑走できるようになった。さらに、それでは飽き足らず、滑走禁止になっている新雪のゲレンデを滑走しようということになった。私は今も変わらないが、いけないと言われることをするのが大好きである。初・中級の「山頂」コースを外れ、そのゲレンデに一歩スキーを踏み入れると、誰も滑走も整備もしていない新雪のゲレンデで、膝のあたりまですっぽりと雪に埋まってしまう。そこを身体中雪だらけになって根性で滑走するので、大げさにいえば人の手のはいらない大自然をスキーで滑走しているような錯覚にとらわれる。
しかし、レジャーにだけ気を許してはいけないところが北海道である。本州などから泊りがけで遊びに来ている親子連れならいざ知らず、我々は寮の門限までに帰らないといけないのである。列車に乗り遅れると大変だ。高校生の門限は19時50分である。北海道のローカル線のスピードの鈍さと、函館駅からのバスの便を考えると18時55分の函館行きがタイムリミットだ。
スキーと言うスポーツは準備と後片付けに時間のかかるスポーツである。手ぶらで行ってさっと帰ってくることができるスポーツではない。スキー板を外してカバーに入れると、ブーツをストーブで乾燥させて鞄に押し込み、大荷物で駅に駆け込む。18時55分の列車に遅れると、次は20時26分しか列車は来ない。我々は一日遊んでいつも帰りの列車の中でぐったりと横になったのは毎度のことであった。

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