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きっと差別はなくならないし、それでも私たちは生きていくしかないの
松尾スズキ氏脚本のミュージカル「フリムンシスターズ」を観た。この劇のテーマは、いろいろな差別。沖縄の米軍基地での差別や、セクシャルマイノリティの人たちへの差別なんかが痛烈に、鮮やかに描かれていた。
印象に残っているのは、例えばこんなセリフ。
「レズでも生理が来るのね。なんか損した気分じゃない?」
「ホモとレズは全員殺していい。」
ドキッとした。それからなんだか、いやーな気持ちになった。「そりゃ芝居だから、誇張してるんだよ。」と言う人もいるかもしれない。でも、こういったドキッとする発言の類って、案外日常でも耳にしたことはないだろうか。
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廃れた遊園地の売店で、バイトしていた事があった。パートのおばちゃんがいて、彼女はよくお客さんの愚痴を言っていた。ある日、女の子ふたりがソフトクリームをひとつ買いに来た。その子たちはとても仲良さげで、お揃いのワンピースを着ていた。お金を払ってソフトクリームを受け取り、彼女たちは去って行った。その後ろ姿を見て、おばちゃんは「アベックやん。気持ち悪。」と、言った。その時私は、何も言わなかった。言わなかったけれど、確かに強烈な違和感を抱いた。一体全体何が気持ち悪いっていうの。レズビアンが堂々とデートしていることが?それとも、ふたりがひとつソフトクリームを買いに来たことが?いっそ、レズビアンそのものが?
でも、ちょっと待ってほしい。そもそも彼女たちがカップルだという証拠は、どこにもない。仲のいい友達同士で「おそろコーデ」しているだけかもしれないのに。というか、カップルだったとしても何か問題ある?ふたりの事情なんて私たちには少しも分からないのに、どうしてそんなに軽率に「気持ち悪い」と言えるのだろう。
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劇の最後には、今まで差別を黙って受け入れてきた人々が立ち上がり、デモを起こす。そのときのセリフに、はっとさせられた。
「間違った指図にヘラヘラ笑いながら、自由を差し出すのはうんざりだ!」
きっと、世の中から差別はなくならないだろう。それでも私たちは生きていくしかないし、自由を得るために戦わなくてはならない。誰もが何かのマジョリティーで、マイノリティーなのだ。生きづらい世の中だからこそ、支え合って、声をあげていきましょう。
劇の感想は以上。興味を持った方はぜひ。