簡易課税制度が全然簡易ではない件
コロナによる影響を最も受けているといっても過言ではない業種、飲食店。
今回はその飲食店を経営されている方向けに、消費税についてのお話しです。
昨年10月にスタートした複数税率により、事業者の方は少なからず経理処理が今までよりも煩雑になったことと思います。
その中でも飲食店の経理処理は、より煩雑になってしまいました。
それはなぜか!?
売上10%(店内飲食)
仕入8%(食材)、10%(お酒)
とバランスが悪くなってしまったためです。
食材とお酒を同じ業者から仕入れている場合には、一枚の請求書で2回処理が必要となります。
これだけでもお腹いっぱいですが、さらに影響を与えるのが簡易課税制度です。
消費税の計算には、本則課税制度と簡易課税制度というものがあり、一定の要件を満たせばどちらの方法で計算・納付するか選択することができます。
それぞれの計算方法はこんな感じです。
本則課税(原則的な計算方法)
売上などで預かった消費税ー仕入れや家賃などで支払った消費税=納める消費税
簡易課税(簡易的な計算方法)
売上高×みなし仕入率(飲食店の場合60%)×消費税率10%=納める消費税
この計算方法は、基本的に2年前の売上高が5,000万円以下でなければ使えない制度で、中小企業の事務負担を軽減しようという目的から作られたものになります。
簡易課税は選択をすることにより本則課税よりも納める税金を少なくできるケースもあり、事前に将来を見据えてどちらの方法が有利かを判定する必要があります。そのため計算方法は「簡易」でも、実務的には判定が必要となるため「簡易」ではないこともあるのです。
ここに今回の複数税率が導入されたことにより、この判定がさらにややこしいものになったのです。
ザックリと、見た目重視で解説するとこんな感じです。
改正前 改正後
本則課税 売上8%、仕入8% 売上10%、仕入8%
簡易課税 みなし仕入率60% みなし仕入率60%
本則課税の売上の率だけが上がっているため、本則課税の方が多く税金を納めるような気がしませんか?
はい。その通りです。
飲食店は家賃などの固定費が低いことが前提となりますが、今までは本則課税の方が有利だった事業者も、今後は簡易課税の方が有利となるケースも出てくるかもしれません。
売上が5,000万円以下で特に飲食店を経営されている方は、毎年きちんと判定をしてどっちがお得か計算してみましょう!
※ 簡易課税を選択すると、2年間は本則課税に戻れないのでご注意を!!
ただし、今はコロナの影響により一定の要件を満たせば、この2年縛りが適用されない、申告直前で課税方法を変えることができる、などの特例があります。