シフォンケーキはいかがですか?(飼ってはいけない生き物 その2)
カラスのパー子を手放してからしばらくは新しいペットのことは考えず、チャコやその子猫たち、そして犬のガリンコと相変わらず牛舎の二階やトラクターや農機具がある倉庫のあたりで遊んでいた。しかしやはり少しずつまた新メンバー開拓に対する意欲がフツフツと湧いてきていた。そんなある日、ある出来事が私に新たに大きな希望を与えてくれた。家の前で私の目の前を横切った野ウサギである。「なぜこれにもっと早く気づかなかったのか!」「野ウサギはカラスよりもずっとかわいい。うさぎといえばミッフィー!なでたり、手に手にのせたり、人参を食べる姿をながめたり、もうこれ以上にかわいいペットはいないではないか!」ペットにする前から、私は想像を思いっきり膨らませて新しい友達と過ごす楽しい時間を夢見ていた。そうなると、あとはどうやって捕まえるか、である。とにかくウサギは足が速い。すぐ近くまで来ることもあるが人の気配に気づくとあっという間に逃げてしまう。しばらく私はうさぎをよくみる家の裏の林で張り込みを開始した。そしてわかったことはそこには一匹以上のウサギが出没するということ。どうやらクローバーを狙って食べにやってくるらしい。そしてその日はやってきた。私は草の中にうずくまるどちらかというと小さめのウサギを発見した。そっと近寄るとのらりくらりと動くがそう速くはない。少し様子を見ながらやはりのらりくらりとしか動かないウサギであることを確認して、思い切って両手を差し出し捕まえるとなんなく成功。「やった!」あまりにも簡単に捕まえられたことに驚いたが、それよりも嬉しさと感動で心臓がドキドキしていた。「さてどうしよう。これからどうしよう。」「まずは、、、。」考えた末、一番先にやってみたかった膝にのせてなでなでを実行してみることにした。とはいってもウサギにしてもれば大パニックである。かなり抵抗しながら私の手から逃げようとしていたので、わたしはそのままの体勢でしばらく落ち着くのを待った。「さて、もうだいじょうぶかなあ、、。」私は草むらに腰を下ろし膝の上にそっとウサギをのせ、片手を離して撫でようとした瞬間、思いもよらない悲劇が起こった。ウサギの猛反撃が開始されたのである。小さくて可愛いウサギはその時点で凶暴な野生動物に化した。その強固な前歯で至る所を噛み始めたのである。まず私の手。その反撃は激しくなるばかりで少しの間は我慢していたが今度は私が着ていたお気に入りのピンクのシャツのリボンまでガリガリと噛み始めた。わたしは痛さと悲しさと驚きのあまりウサギを手放してしまったのである。その瞬間、ウサギはあののらりくらりと動いていたウサギと同じウサギとは思えないほどの速さで林の中に消えていった。私は呆然としてしばらく何も考えることができなかった。あれはいったいなんだったのか。子供ながらに裏切られた気持ちで悲しさがこみ上げてきたけど、いま考えると、野生の動物はやはり野生で暮らすことが一番幸せなのだということを教えてくれたいいレッスンだったと思う。結局私の新しいペット計画第二弾の結果は’野ウサギと過ごした数分の思い出’で終わってしまったが、あれはあれで私の子供時代の一日を豊かにしてくれた出来事だったと思うんです。