安心感と充足感の共存する場所、えのすい
「ぜひ、またえのすいに遊びにきてください! どうもありがとうございましたー!」
何度も耳にしているはずのえのすいトリーターさんのハキハキとしていて清々しい気分になる言葉。
軽快でリズミカルな、ワクワクドキドキさせてくれる音楽。
どの子が鳴くかによって高低や長さが変わるイルカたちの鳴き声。
何度も目にしているはずの爽やかで楽しそうなえのすいトリーターさんの笑顔。
ショースタジアムから見える、穏やかで大きな海とどこまでも続く広い空。
イルカたちの大きなジャンプや細やかに尾びれや胸びれを振るパフォーマンス。
たった、20分ほどのパフォーマンス。
それだけで私は、ああ、今日も来てよかった……。と思える。
それくらい、新江ノ島水族館のショーパフォーマンスは私にとって大好きな場所だ。
私が好きなもの。それは水族館だ。
その中でも、一番好きなのは、新江ノ島水族館、通称えのすいだ。
私にとって、新江ノ島水族館は幼馴染のような存在だ。
いつも誰かに新江ノ島水族館の話をする時は、新江ノ島水族館、という正式名称ではなく、友達をニックネームので呼ぶ時のように、通称の「えのすい」と周りには紹介してしまうくらいだ。
この親近感は、幼稚園時代から通ってきて、一緒に成長してきたように感じられるからかもしれない。
私がえのすいに通い始めたのは幼稚園児の頃、まだ新江ノ島水族館はリニューアル前で、「江ノ島水族館」という名称だった。
今のように綺麗な施設ではなく、今のように光を駆使して見せ方を工夫しているわけでもない、ただたくさん魚たちがを入れただけのような大きな水槽があったのが印象的だった。
それでも自分より大きなエイが泳いでいるのを見るのが大好きで、エイと一緒に写真を撮って! と両親にせがんだりもしていた。
それが「新江ノ島水族館」となった今、展示する魚ごとに見せ方を変えたり、魚の生態を紹介した研究内容が展示されていたり、海が見えるショースタジアムができたりと、見ている人がワクワクするような工夫がいたるところに施されている。
昔と見せ方が変わったことによってえのすいの魅力度が上がったことは嬉しいが、私が一番嬉しいのは、大好きなエイがリニューアルしてからも大水槽の中を優雅に泳いでいることだ。
いろいろ変わったものの中に変わらないものがあるのは、昔からの幼馴染の変わらない部分を見てほっとした時のようで、
大好きな部分を持ったまま、ずっと私のことを待っていてくれたような気分になれるのだ。
子どもの頃は、ただそこに魚がいるだけで物珍しく、うきうきした気分になっていたが、今は、大きな水槽で泳ぐ魚たちを見ていると、忙しい日常から抜け出して穏やかな海の中をみているような気分になって、ほっとできる安心感の方が大きい。
それも、子どもの頃は友達の遊べるだけでひたすら楽しくてしょうがなかったが、今は幼馴染に会うと、どんな自分になっていても受け入れてくれる安心感を覚えるようになったことに近いのかもしれない。
ほっとする、安心する、リラックス……
そういった、ゆったりとした気分になりたくて私はえのすいに通っているのだが、子どもの頃のように、ワクワクドキドキとした高揚感を味わえる場所がある。
それは、「きずな」という名前のイルカ・アシカショーだ。
ショーの時間は20分で、前半はアシカたち、後半はイルカたちのパフォーマンスが見れる。
どこに行ってもショーはやはり目を引くものがあるのだが、
私は他のどこの水族館のものよりも、えのすいのこのショーが好きだ。
私が考えるえのすいの「きずな」のショーの魅力は3つある。
①海の見えるショースタジアムが最高に気持ちがいい!
えのすいのショースタジアムは、観客席からイルカやアシカたちがパフォーマンスするステージが見えるのはもちろん、その後ろには大きな空と海が広がっているのが見える。その景色がいつ見ても最高に気持ちが良いのだ。
朝~昼までは、青い空が広がっていてとても開放感があり、清々しい気分になれる。
夕方からはオレンジ色と紫と青が混じったような空が見れてちょっとセンチメンタルな気分になれる。
そして、夜になってからは、暗くなった空と海が静寂に包まれていて、心の中のざわざわした感覚もなくなり、スッと落ち着ける。
見える景色が一日を通して大きく変わるため、何回ショーをみても新鮮な気分になれるのは、大きな魅力の一つだと思う。
②人間と動物が友達のように触れ合っていて、ありのままのいきいきとした姿を見られる!
ショーの中でいるかに指示だしをするトリーターさんたちは、始終にこにこしながらイルカやアシカたちに接している。
そしてアシカはトリーターさんから離れなかったり、イルカたちは指示をワクワクしながら待っているようにも見える。
そんなアシカやイルカたちをトリーターさんは名前で呼びかけたり、イルカたちがジャンプを成功させたりするたびに「ありがとう」と声をかけていたりする。
その姿は、指示する側と受ける側というよりも、本当に友達どうしのように見える。
他の水族館では、イルカたちの名前を呼びかけることがなかったり、見せることにこだわりがあるのか粛々とショーが進み、静かな中で水音が聞こえるようなものだったり、淡々と進んでしまうショーも多い。
一方で、えのすいのショーでは、全力で一緒に遊んでいる姿や、名前を呼び掛けている姿、時にはトリーターさんの指示を聞かずにいる子がいても「そういう気分じゃないみたいですね~」なんて笑って受け入れたりしているところなんかも見れて、気取らずありのままの姿を見せてくれるところが素敵だな、と感じる。
③クライマックスへのショーの運び方が絶妙。
「きずな」は最後になるにつれてピークがくるように、緩急が入ったショーになっている。
最初はアシカたちやイルカたちの紹介やじゃれ合っている姿をみて微笑ましい気分になり、
次に一匹ずつのパフォーマンスを見て、頑張れー! と心の中で応援し、
終盤に差し掛かってからはイルカたちの連続ジャンプにワクワクドキドキして拍手が止まらなくなり、
そして最後には空に向かって手を挙げたトリーターさんたちに合わせてイルカたちが息を合わせてジャンプするのを見て、もう高揚感でいっぱいになる。
見終えた後には、可愛かった、かっこよかった、ワクワクした、ドキドキした、といろんな感情が渦巻いてとても満たされた気分になり、なぜか不思議と明日からも頑張ろう、と元気が出てくる。
えのすいに行ってからの帰り道は、ほっと息を着いてリラックスできた安心感と、ショーでワクワクドキドキがとまらなくなって得た、明日に向けてのエネルギーを抱えて、満ち足りた気分になれる。
それはまるで、幼馴染と会って変わらない姿を見れた安心感と、一日を楽しんだことで明日も頑張ろうと思える時のようなパワーを得て、大きな充足感のように心地の良いものだ。
安心感と、充足感。
どちらも一日で存分に味わえる。
そんなえのすいが、私は大好きだ。
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