見た目は華やかだけどおいしくない、ハロウィンのお菓子のような友情
ハロウィンが好きになれない。
街が騒がしいからとかコスプレが嫌いだからとかではない。
むしろ、内輪のパーティではノリノリでコスプレをする方だ。
ではなぜ好きではないのか。
学生時代の苦い思い出がよみがえるからだ。
それは、ある年の誕生日プレゼントにまつわる話。
中学生の頃、同じグループの友人どうしで誕生日にプレゼントを贈る習慣があった。プレゼントといっても、お小遣いの範囲内で買うので基本的にはささやかなもの。匂い付きのリップクリーム、プチプラのアクセサリー、キャラクター付きのポーチなんかを贈ったりしていた。
私の誕生日は10月。4月からクラスの友人へプレゼントをあげたり、クラスの人気者が机が山盛りになるくらいのプレゼントと手紙をもらったりしているのをずっと見ていた。私はどんなものをもらえるんだろう……と誕生日を待ち遠しく思っていた。
いざ迎えた誕生日。
はっきり覚えているプレゼントがある。
ふたりの友人から、ハロウィンモチーフのお菓子をもらったことだ。
多少デザインは違うのだけど、どちらもカボチャの容器にビビットカラーのラムネのようなものが入っていた。
図々しいと思われてしまうかもしれない。
……正直、とてもがっかりしてしまった。
なぜなら、プレゼントを「ありぺいが好きそうだから」とかではなく、「10月でハロウィンの時期だから、ちょうどいいしこれにしよう!」と選んだように思えてしまったからだ。
ハロウィンモチーフのお菓子をくれたのが、ひとりではなく同じグループのふたりからというのがきつかった。
私は友人と浅い関係性しか築けていなかったことに気づかされたからだ。私に対して薄い印象しかないから、店頭に置いてある季節性のプレゼントを選ばざるを得なかったのだと思う。
それまでの友人と過ごした時間が、全く意味のなかったようにすら思えてしまった。
もしかしたら、選ぶ時間がなかったり悩みに悩んで定番を選んだ結果のハロウィンのお菓子だったのかもしれない。そうだったら本当に申し訳ない。
でも、私がハロウィンの時期に生まれていなかったら、ふたりはいったい何をプレゼントに選んでいたんだろう。
より当たり障りのないものを贈られてショックを受けている可能性もあるし、好みのものをもらって喜んでいる可能性もある。もしもの話なので、実際のところ何を考えていたのかはわからない。
当時の私は、他の友達からもプレゼントをもらえていた……気がする。
しかし、ハロウィンモチーフのお菓子をもらった衝撃で、他のプレゼントの有無があやふやになってしまった。
ちなみに、ハロウィンモチーフのお菓子は見た目は華やかだけど、ただ甘いだけで全く美味しくなかった。友達と仲良しアピールをしながらも中身のない会話をしていた、当時の友情そのものだと感じた。
それからハロウィンモチーフのものを見ると、当時の虚しい気持ちを思い出す。だから私はハロウィンを好きになれない。
*
今年の誕生日、誰からもモノとしての誕生日プレゼントはもらわなかった。
でも、ご飯に連れて行ってくれたり、誕生日ケーキを用意してくれた人がいた。おめでとうの言葉に添えて「こんなところが素敵だよね」とか「いつもありがとう」と嬉しい言葉をプレゼントしてくれた人もたくさんいた。
前の年もキャラクターやぬいぐるみ好きの私のためにトトロのキーホルダーをプレゼントしてくれた人もいたし、平手友梨奈ちゃんが好きな私のために欅坂46のグッズをプレゼントしてくれた人もいた。
中学の頃は自分のために選んでくれたと実感できないプレゼントをもらっていたが、今は無形のものだとしても、私のために贈ってくれていると感じるプレゼントをくれていると感じる。
きっと、美味しくないハロウィンのお菓子のようだったコミュニケーションは、大好物の海鮮巻きくらい身の詰まったものに変わってきているのだろうと思う。
ハロウィンのことは今でも好きではない。
ハロウィンモチーフのお菓子はできるなら食べたくない。
しかし、あの時ハロウィンモチーフのお菓子をもらったおかげで、欲しいものをすぐにわかってもらえるくらいの関係性は、簡単に得られるものではないと知ることができた。いつも一緒にいてくれる人の時間は、相手に向き合おうと努力して得られたとても貴重なものだ。
ハロウィンは関係性の築き方を考え直すきっかけになったともいえる。
だから、ハロウィンは好きにはなれないけど、嫌いにもなれない。
P.S. 一年中、誕生日のお祝いはお待ちしています。
でもハロウィンモチーフのお菓子はいらないです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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