内側から発光するような魅力を持つ人になりたい
「クラゲになりたい」
水族館に行ってクラゲ水槽を観るたびに思う。
水の流れに身を任せ、クルクルと水槽の中を回っているクラゲ。彼らは何かに囚われることもなく、海の中を漂って生きている。
一方で、誰かと比べて一喜一憂したり、何者でもない自分に落ち込んだりを繰り返す人間。ボーッと生きているだけでは許されず、義務を果たさなければならない。だから、勉強して、お金を稼ぎ、税金を払う。そうして、やっと生きる権利を得る。
クラゲを見に行くと、煩雑な手続きや年を重ねるごとに増える責任に疲弊する人間と、何の責任も持たずに自由に生きる権利を得ている彼らをどうしても比較してしまう。そしてクラゲの身軽な生き方がとても羨ましく感じるのだ。
ああ、今この瞬間に全ての責任を放棄したい。クラゲは水の流れに身を任せ、流れてくるエサを食べるだけの生活でいいな。そんな受動的な生き方でも許されたい。
そんなことをアクリル板越しに考えていると、いっそのことクラゲになりたい、と思ってしまうのだった。
***
あまり公に言ったことはないが、なりたいものはもうひとつある。
「アイドル」。
歌って、踊って、人を惹きつけて……。
そんな華やかな仕事への憧れがある。
こちらに関しては、「なりたい」というよりは「なってみたい」という表現の方がしっくりくる。今すぐなれます、と言われても絶対に断るからだ。
なぜなら私は、歌も踊りも全然できない。注目されるのも苦手だ。今の私とアイドルはまったくの真逆。絶対に向いてない。でも、だからこそアイドルの生活に憧れる。
ステージに立つだけで歓声を浴びるのは、どんな気持ちなんだろう。
一日に何曲もパフォーマンスするために、どれくらい準備するんだろう。
同じグループのメンバーとは、どんな会話をするんだろう。
笑顔をキープするのはつらくないのかな。
全然知らない人と握手会をするのって嫌じゃないのかな。
テレビに出演したときの画像を大喜利みたいに使われるのは、どんな気持ちで見てるんだろう。
華やかでキラキラしている世界の楽しさ、その裏の苦悩や不安。
それらを丸ごと体験したい。反対側の世界から見えるものを知りたい。
そんな興味から、アイドルは「なってみたい」ものになった。
***
私のなりたいものは、クラゲとアイドル。
無責任で自由なクラゲと、期待に応える責任があるアイドルとでは、かなり違いがあるように思えるかもしれない。
たしかに、なりたいのベクトルがそもそも違う。
クラゲは逃避したい気持ちからなりたいもの。
アイドルは、好奇心を満たしたい気持ちからなりたいもの。
しかし、そのふたつのなりたいものには共通点がある。
それは、”存在するだけで肯定される(場面が多々ある)”ことだ。
クラゲは、水族館で大人気だ。
「眺めているだけで癒される」「動きがかわいい」「綺麗だなあ」
普段と変わらずに漂っているだけで、その存在を讃えられる。
アイドルは、さらに脚光を浴びている。
握手会、SHOWROOMやInstagramなどの生配信、テレビ出演、ライブ……
彼女たち(彼ら)は、姿を現すだけで大歓声が起きる。
「かわいい!」「かっこいい!」と褒められ、もてはやされる。
クラゲやアイドルは、その存在だけで誰かを感動させることができる。
“居る”だけで感謝すらされることもある。
それはどんな体験なのかとても知りたい。
一般人の私も、特別何かをしなくても存在を肯定してくれる人はいる。「居るだけで十分だよ」と言ってくれるなんて、本当に有難い。
その数人の言葉のおかげで頑張ろうと思えたことも、なんとか生き延びようと必死になったこともある。だから、存在を肯定してくれる人の効力は本当に大きなものだと感じている。
クラゲやアイドルクラスだと、その”存在を肯定してくれる人”が何千人、何万人ほどまで増える。単純に考えれば、肯定してくれる数が増えるのだからどれだけでも頑張れるようになるのではないかと思う。
とはいえ、クラゲはその姿と生き様だけで人気を集めている一方で、アイドルはそうはいかないのも知っている。人気が出るまでには、並々ならぬ努力をしていることだろう。
また、アイドルは応援している人が多い分、批判する人も出てくる。その中でもアイドル続けるのは簡単なことではないはずだ。アイドルは今以上の存在であろうと自分磨きを怠らずにいるからこそ、その存在が認め続けられるだと思う。
結局人間であるならば、その存在を多くの人に認められようとするには何かしらの努力が必要なのだろう。クラゲのように自由気ままに生きているだけで存在を認められる生き方は憧れるけれど、何もせずに多くの人に認められるようになると、その大きな声援を受け止めきれなくなりそうな気がする。
だから、私もアイドルそのものにはなれないものの「アイドル的な」生き方をできたらいいなと思う。今以上の存在になるために、目の前の事を頑張り続けたい。応援してくれる人、助けてくれた人たちに報いたい。
外見だけで「いいね」と言われるよりも、努力して得た知識や結果を見て「いいね」とか「応援するよ」と言ってもらえた方がきっと自信にも繋がるはずだ。
そしていつかは、内側から発光していくような魅力を持った存在になれたらいいな、と思う。
このnoteは、オンラインコミュニティ・コルクラボの「#週刊お題note 」の企画で書いたものです。
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