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朝起きてから、眠るまでの「最高の一日」を考える
《7:00》
目覚ましが鳴る前に、自然と目が覚めた。
暖かな光が差し込む部屋で迎える朝は、本当に心地がいい。
隣で寝ている彼は、すうすう寝息を立てている。
私は、そろそろとベッドから抜け出した。
《8:00》
朝ごはんは、トーストと目玉焼きとサラダ。
それと、ハンドドリップで淹れたコーヒー。
ゆっくり噛みしめるようにしてご飯を食べ終えたら、もう一杯コーヒーを淹れる。
今度は一粒のチョコレートとメモ帳の束を用意して、ペンを握りしめる。
ささっと10分くらいで今日やることを書きだす。
さて、今日はどんな面白いことが起きるかな。
《8:30》
お気に入りの紺のワンピース。ゆらゆら揺れるイヤリング。こっくりとしたこげ茶色のリュック。
好きなものを身にまとうと、それだけで一日ご機嫌で過ごせるからいい。
「行ってくるね、っと」
まだベットの中で寝ている彼に向けて、書き置きを残す。
彼に向かって、「出かけてくるね~」と声をかけると、「んんん……」と声が返ってきた。
もう少しだけ部屋に留まりたい気持ちになりつつも、ぐっと力を入れてドアを開けた。
柔らかな風がびゅう、と吹き、コートの裾をはためかせた。
《8:45》
ぷしゅー。
気が抜けるような音を立てて、電車のドアが閉まる。
私はいそいそとカバンの中から小説を取り出す。
半分を少し過ぎたあたり、しおりがはさまっている場所のページを開く。
意識だけが瞬間移動するかのように、少し不思議な世界へ飛び込んだ。
《9:30》
突き抜けるような青い空。
潮の香りがするこの場所は、都会よりも空が高く広く感じる。
「生きてるー!!」と叫びそうになる衝動を抑えながら、速足で目的地へ向かう。
今日は、水分補給の日。
水族館へ行く日だ。
《11:30》
ショースタジアムでの指定席は、後ろから3番目の右後ろの席。
イルカたちのパワフルなジャンプ、ゆっくりと泳ぐ姿、パタパタと胸ビレを振る姿。
テキパキと進行する飼育員さんの掛け声と、空気が震えるように高い笛の音。
空と海が見えるこの場所でのイルカショーは、パワーが補充されるようでとても満ち足りた気分になる。
悩んでいるときも、楽しいときも、どんなときでも行きたくなる。そんな魅力がここにはある。
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《14:00》
ほう、と息をついてパソコンから顔を上げる。
思い切り楽しんだ後は、海沿いのこのカフェで文章を書くと決めている。
静かな音楽が流れていて、人があまりいなくて、どこか暖かい雰囲気のある場所。
ここでなら、進まなかった原稿もするするとかたちになっていく。
自分の頭の中にあるイメージをすべて出力するように、言葉にしていく。
文章にすると、言葉がお行儀よく並んでいる感じがして、なんだか可愛く見える。
コーヒーを一口だけすすって視線をパソコンに戻し、キーボードをタン、と叩いた。
《16:30》
朝から活動した日は一日が長い。
文章を書いた後は、いろんな言葉が頭の中を巡る。
それらを見逃すことがないように、思いついた文章をiPhoneのメモに書いていく。
いつかこれが私にとって大事な核になるかもしれない、その思いだけでメモの習慣を続けてきた。
少しだけ混んでいる電車に揺られながら、メモを文字でいっぱいにしていった。
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《18:00》
カラン、とグラスの中の氷が音を立てる。
「憧れと尊敬って何が違うんだろうね?」
「あんな風になりたいが憧れで、ある部分をを尊重することが尊敬じゃない?」
真面目なまなざし。適切な表現を考え抜いて出す言葉。イメージを身振り手振りで伝える姿。
どこか哲学的で、真理を探すような議論は次第に熱を帯びていく。
私が考え抜いて発する言葉の一つ一つに対して、彼女たちは流さず受け止めてくれる。この安心感は、他には代えがたい。
ここにいる全員が意味のあるなしを抜きにして、真剣に想いを言語化する。
その姿にじん、ときて胸が熱くなった。私、ここにいるみんなが本当に好きだなあ。
《21:00》
シャワーを浴びてすこしぼーっとした頭でテレビを見ながら、アイスキャンディーを舐める。
アニメのギャグ要素が入った場面でにやけていたら、隣で同じ画面を見ている彼もにやっと笑っていた。
なんとなく気持ちがシンクロしたような感じがして、私はふっと息を吐くようにして笑った。
ソーダの甘ったるい味が口いっぱいに広がり、火照った身体の体温を少しずつ下げていく。
《23:00》
バタバタバタ……
どこかの家で誰かが走っている音を聞きながら、日記をつける。
今日したこと、思ったこと、覚えておきたいこと、心に響いた言葉……。
たまに頭の中を切り出してそこに貼り付けたいと思うくらい、日々起きたことや感じたことを忘れたくないし、記憶が薄れてほしくないと思う。
さすがに頭を開くわけにはいかないので、ひとつひとつの思い出を細かい字で書いてページを埋める。
一日一ページの日記のページを、白い余白がなくなるくらい文字やイラストでいっぱいにできると、なんだか嬉しくなる。
《24:00》
「今日ね、水族館からめちゃくちゃ富士山がきれいに見えたの」
照明を落とすと、いつも彼に何か話したくなってしまう。
カフェで食べたドーナツの話、読んだ小説の話、今度行きたい代官山のカフェの話……
まとまりも秩序もない話ばかりなのに、うんうん、と話聞いてくれる。
しだいに会話のペースが遅くなり、発することばもポツ、ポツと単語ばかりになっていく。
目を閉じると、重力でずずず、と下の階へ落ちていくような感覚がした。
じわじわと氷が解けていくように意識が輪郭を失って、私はそのまま眠りについた。
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朝起きてから、夜寝るまで。
今の私にとっての、「最高の一日」を考えてみました。
この記事を書くきっかけになったのオンラインコミュニティ「.colony」で「最高の一日を考える」ワークショップに取り組んだことです。
主催はのちさん。素敵なワークショップをありがとうございました!
最後に、最高の一日を考えてみてよかったことをまとめてみます。
・現実と理想のギャップを知れる
⇒今後の方向性を模索するきっかけになった!
・「本当はしたいこと」がわかる
⇒無理そうだからとフタをしてきた「本当はやりたいこと」が明るみに出た。これは実現可能性を気にせずに考えたから!
・「大切にしたいこと」がわかる
⇒「最高の一日」の中で何度も出てくること、時間をかけていることは、自分が大切だと思っていること。大切なものを守る方法を考えたい。
自分の立ち位置を知るためにも、定期的に考えてみようと思います。
次考えるときに内容がどれだけ変わるのか楽しみだなあ。
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