絡まったネックレス
出かける前に見つけて、落胆してしまうもの。
付けようとしていたネックレスが絡まっていたとき。
一応解いてみようとするものの、焦りからくる手汗で滑ってしまい全然解くことができない。そのため、そのまま付けずに家を出ることになる。しかし、その日のファッションをネックレスありきでコーディネートしているからため、なんとなくさみしい印象になる。だから「絡まってさえいなければ……!」と残念な気持ちでいっぱいになってしまうのである。
そもそも、絡まっているネックレスを元通りにするのが苦手だ。いつも同じような形で絡まっているのに、毎回どう絡まっているのか全然わからない。しかも、チェーンが切れてしまったら完全に使えなくなってしまうので無理やり引っ張ったりもできない。
壊れないように慎重に扱いながら、絡まっている原因となっている箇所を突き止めて、少しずつていねいにほどいていく。そうしてやっと、元通りになる。
ほどきながら、誰かとケンカしたあとの仲直りみたいだな、と思った。
お互いの主張がすれ違いから起こったケンカは、同じようなテーマであってもどう解決したものか……と毎回途方に暮れてしまう。なぜなら、ケンカの原因は、今と昔、悲しみと期待、など様々なことが複雑に絡み合ってできていることが多いから、前回と同じ話をしたら終わり! なんてことが起きにくいからだ。
だから、さっさと解決しようとして、表面上に見えていることだけ解決しようとしてもうまくいかない。面倒だからと強引に謝らせたり、強い言葉でねじ伏せようなんてするのは、ふたりの関係性に修復不可能な深い溝ができてしまうから論外だ。
そのため、お互いが嫌だと思っていることや悲しいと感じていることを無理のないペースで丁寧に聞き合うことが、一番の近道になる。そこを面倒くさがったら、もう元には戻れない。
ネックレスの絡まりと違うのは、原因を突き詰めてから解くまでにかなり時間がかかる場合があることだ。お互いの性格の問題だったり、癖の部分を直すとなるとすぐには上手くいかない。またすぐに同じことがケンカの種になってしまう可能性もある。
だからといって、絡んだ状態のまま問題を放置しておくわけにはいかない。気兼ねなく付き合いたいと思っている相手であればあるほど、ケンカの種になりそうなものは無くしておきたい。無くすのが無理そうなら、少しでも小さくしたい。それがきっとお互いが心地よく過ごすために必要なことだから。
ちなみに、絡まったネックレスは絡んだ部分をグリグリして、先の長いものをすき間に通すと割と早くほどけます。
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