必殺技だけで人生を乗りこなせたりなんかしない。
マリオカートが得意じゃない。
だいたいビリかビリから二番目になる。コンピューターに余裕で負ける。
ゲームで下手なのは、マリオカートだけじゃない。
スプラトゥーンは敵に攻撃されすぎて相手陣地まで辿りつかないし、スマブラは攻撃される前にステージから転落して終わるパターンが多いし、昔やっていたポケモンのゲームではカイオーガを捕まえそびれた。
昔からゲームというゲームが上手く操れない。単純に下手だしセンスがないんだと思っていた。でも最近、そうではないことに気づいた。
そもそも、上手くなろうとしていなかったのが原因だった。
参考までに、私が新しくゲームをやり始めるときの流れを説明しよう。
※マリオカートの場合（当時を思い出して書いています）
①ゲームを起動する。
②一緒にプレイする友達にどのボタンで何ができるか聞く。
③わかったつもりになってレースをスタートさせる。
④発進が遅くていきなりスロースタート。
⑤わかったつもりなので全ボタンを使いこなせない（十字ボタン頼り）
⑥曲線をドリフトせず普通に曲がったり、アイテムを投げそびれているうちにビリになる。
⑦「あっ抜かれた！」「甲羅投げたな～！」と話している友達の会話に参加できなくて寂しくなる（もう友達の姿は見えない）
⑦天からの恵みで『キラー』というフルスロットルキャラに変身する。
⑧二人くらい抜く。だがしかし、友達はずっと先を走行している。
⑨友達がみんなゴールする。元の姿に直る。
⑩友達がプレイバックを見ながら話しているところで、静かにゴールする。
初回ならしょうがないよね、と思ってもらえるかもしれない。
でも、問題なのは初回以降もこの流れを永遠と繰り返してしまうことだ。（②以外）
発進方法を改善しようとしない。ドリフトの方法を聞いても忘れる。アイテムの投げ方を知っても適当に投げるので誰にも当たらない。
負けたいわけじゃない。負けるのは悔しいし、友達の会話に入れないのは悲しい。それでも地道に改善しないのは「いざとなれば必殺技（キラー）がある」と思ってしまっているからだ。
引用元：マリオカートデラックス8公式HP
キラーとは、高速で自動的に進みカートを転倒させるアイテムのひとつ。画像を見てもらっても分かる通り、弾丸のようなフォルムをしている。速そうな見た目を裏切らないスピードを出してくれて、先を行く相手を追い抜いていく。たとえぶつかっても、こちらのスピードは弱まらない。強い。
キラーを使うと、どんなに遅くても誰かひとりは追い抜けてしまう。すると、何もしなくてもちょっとうまく戦えた気になってしまう。だから、途中途中の操作のスキルを上げようとしない。そしてまた負ける。
私は基礎スキルを上げるのを怠り、安易に必殺技を使ってしまう。
他のゲームでもそうだ。
マリオなら「無敵マリオ」になれるスーパースターを取って一気に前に進もうとするし、スプラトゥーンも必殺技で塗りの範囲を広げたりあわよくば一人倒しせたりしないかな、と願ったりする。
センスも何もない。そもそも努力していない。だから負けるのだ。
ゲームの必殺技は、いわばドーピング。
ドーピングで得た結果は、自分の実力ではない。
必殺技は目に付く。上手い人が使っているのを見ると、強い理由は必殺技を使っていることだと思いこんでしまう。でも、それは違う。上手いから強いのであって、必殺技が強さとイコールになるわけじゃない。
スポーツでのドーピングとは違って、ゲームの必殺技は禁止されているものではない。だから、使いどころを工夫すればとても強い武器になる。そして、上手く必殺技を使っている人は、たいてい基礎操作も上手い。
ゲームも、仕事も、恋愛も同じだ。
基礎スキルがなければ、うまくいくものもうまくいかない。
二か月くらい前、今後のキャリアについて話しているときに「すごく極端な考え方をしてるよね」と言われた。
その言葉がなんとなく心の中に残っていて、ずっともやもやしていたのだけど極端と言われる理由がやっとわかった。
私は大きく環境を変えることで、人生が180度変わると思っている。
仕事や住む場所など人生の基盤となる部分をガラッと変えれば、思うようにいかない現実も水が循環するように全てが上手くいくのではないか、と思ってしまっている。
環境を変えることは、人生がゲームだとするならば「必殺技」に近い行為だと思う。でも、現実はゲーム以上に様々な要素が絡み合ってできている。仕事を変えたらもっと上手くいかなくなるかもしれないし、住む場所を変えることによる不具合だってきっとある。思うような結果にならなければ、必殺技はただの無駄打ちだ。
人生逆転は、起こそうと思って起こせるものじゃない。ひとつひとつやるしかない。そう気づく機会は今までにも何回もあったし、何回もこうやって文章にしてきた。
でも私はすぐに楽をしようとして、必殺技を繰り出そうとする。
沁みついてしまった「必殺技で切り抜けよう」癖はなかなか抜けない。
だから、大きく何かを変えて切り抜けようとするたびに、基礎スキルは磨いてきたのか、本当に正しいタイミングなのかを自分で問い直すしかない。
必殺技だけでは人生を乗りこなせたりなんかしない。
生存戦略を見出すのは、マリオカートよりもずっと難しい。
▼「ものとことのきおく」はこちらのマガジンで更新しています。
いいなと思ったら応援しよう！
