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自分がどうありたいかは、論理思考で見つける。~正解のない問題の解き方(1)~
「やりたいことを知るための論理思考ってないんですか?」
ある時、学生から投げかけられたひとつの質問。
ここから、新しい論理思考の授業が始まった。
「質問されるまで、論理思考は手段だと思っていました。やりたいことをいかに実現するかを考えるときに使うものとして捉えていたからです。何かやりたいことは持っている前提だったんですよね。でも、そのやりたいことがないと言われてしまったんです」
そう語るのは、立教大学の髙橋俊之さん。
論理思考を専門とし、ワークショップ型の授業を行っている。そのひとつ、「実践で学ぶ論理思考(BL3-C)」では、自分のやりたいことを考え将来のキャリアを考えていくという課題にも取り組む。
高橋先生はBL3-Cの開講以降、学生と共にキャリアについて考え続けている。
キャリアは人によって進む道も違えば、考え方も大きく異なるものだ。キャリアという大きな問いに対し、どのように答えを出していけばいいのだろうか。
■Profile
高橋 俊之(たかはし・としゆき)
プロジェクト・ファシリテータ
立教大学経営学部客員教授、BLP論理思考系科目コースリーダー。
淑徳与野中学・高等学校 教育顧問。
一橋大学法学部卒業、ミシガン大学MBA。情報機器系ベンチャー企業を経て、株式会社グロービスに入社。執行役員、グロービス・マネジメント・スクール統括責任者などを務めた後、独立してSCHOOL OF 未来図を設立、代表を務める。2014年より現職。
論理思考教育、リーダーシップ開発、キャリアビジョン開発などが専門領域。大学の他、企業・学校等で研修、プロジェクト支援を手がける。
1.自分がよくわからない。
―キャリアを考えるうえで悩んでしまうのは、どのようなところなのでしょうか?
とにかく「自分がよくわからない」という悩みが多いです。
「自分のやりたいことは何か」とか「自分の強みは何か」といった問いに対して答えが出せずに悶々としているように見えます。
―自分のことがわかる人とわからない人の差はどうして生まれるのでしょうか?
大きいのは育てられ方ではないかと思います。「やりたいことをやろう」と育てられてきたか「やるべきことをやれ」と育てられて来たかの違いですね。
やりたいことをしてきた人は、「これがしたい」ということがすぐに出てきます。自分のやりたいことが常にあって、どんなことならやりたいと感じるのか経験からわかっているんですよね。
一方でやるべきことばかりしてきた人は、やりたいことをあまりやらないできたので、やりたいことの備蓄がほとんどありませんし、やりたいことに反応するセンサーも退化しています。だから、何をやりたいのか聞かれても困ってしまうんですよね。常に自分に求められることをしてきたから、やりたいことの考え方も分からないんだと思います。
―「やるべき」ことをしてきたタイプの人が、やりたいことを考えられるようになるにはどうすれば良いのでしょうか?
一つは、やるべきことばかりやっていないで、やりたいことをやること。それができると分かるとやりたいことが増えてきます。もう一つは、自分でも気がつかないうちにはまっていることや、やっていて快感を感じることから、「なぜそうしているのか」「なぜそう感じているのか」を解釈することです。それが何かを生み出していることなら仕事にもつながりえます。
2.事実を受け止めるだけではなく、解釈をする。
ーやりたいことを考えるうえで、考え方が難しいのはどのようなところでしょうか?
一番は、世間で評価が高いことと本当にやりたいことの区別が難しいことではないかと思います。「世間で評価が高いからやった方がいい」ということを、自分自身のやりたいことだと勘違いしてしまうんです。でもそれだと、後々苦しくなる可能性があります。
―「評判がいいからやるべき」という考えを「評判がいいからやりたい」だと思い込んでしまうんですね。”苦しくなる"というはどういうことでしょうか?
実際にやってみて「好きではない」とか「楽しくない」とか感じてしまうということです。
例えば、「コンサルタントになりたい」と思ったとします。コンサルタントというのは難しい問題に正面から取り組み考え続ける人です。それを評判や憧れでコンサルタントになりたいと思った人が仮になれたとしても、おそらく問題にずっと向き合うことは楽しくなく、逃げたくなってしまうでしょう。また「本当にやりたい」人には全く勝てません。
一方で、問題解決が好きでコンサルタントを選んだ人だったら、熱量が下がることはなさそうですよね。
―世間の評価や憧れとやりたいことを区別するためにはどう考えればよいのでしょうか?
憧れを「やりたいこと」だと思い込まないためには、「コンサルタント」といった名詞ではなく「問題に取り組んで考え続ける」と動詞で考えてみることです。そして、そういうことを楽しんでいる自分がこれまでいたか、考えるというより、これまでの経験を振り返ってみると良いでしょう。もしそういう経験がないなら、おそらくそれは憧れであって本当にやりたいことではないでしょうね。
― 他にやりたいことを考えるうえで難しいところはありますか?
「キーワードだけで仕事を考えてしまう」ということでしょうか。やりたいことに関連するキーワードから連想した仕事が本当にやりたいことかは一度考えてみる必要があると思います。
例えば、人が好きだから人事の仕事をしたい、という人がよくいます。でも、人事の仕事は人を解雇するなど、人に対して厳しく対応しなければならない仕事も含まれます。それなのに「好きなこと=人」だから「人事」と、人という言葉でつながる仕事に飛びついてしまうと、幻滅してしまう恐れがあります。
それを防ぐにはやはり「人」といった名詞だけでなく、「育てる」といった「動詞」も含めて何をしたいのかを考えると良いですね。すると実は人事以外の仕事にもその機会があることも見えて来ます。教育もその一つですね。
―本当にやりたいことを見つけるためには、どのような力を養うと良いのでしょうか?
事実を解釈する力を着けると良いでしょう。
多くの人は事実を事実として受け止めて考えるのを止めてしまうのですが、それではもったいないです。
例えば、「BL3-C」では「インパクト体験棚卸し」という課題に取り組みます。過去に自分が体験したことを棚卸しして、どんな意味を持っているのか自分なりに解釈していく課題です。このように様々な事実を並べてそこから何かを引き出していくような考え方は必要だと思います。
3.考える力で差をつける。
―キャリアの選択肢は広がってきていると思います。どのようなことが大切だと思いますか?
「やりたいことをやっているか」と「それをやって成長しているか」というところです。
時代も変化してきているので、同じレベルに止まっていたり、同じやり方をしていたりしていては将来性がないなんてこともあり得ます。そこで、「自分が置かれている状況でどのようにさらに価値を出すか」とか、「他の場所へ移ったとしたら自分の持っているものをどのように活かすか」などを考えて成長していくことは大切だと思います。
―生きていくうえで、論理思考はどのような場面で活きてくると思いますか?
一見、実現が難しいように見える本当にやりたいことを実現するときです。難しそうに思えることも、どうしたら実現できるのか考えるようになれば、無理だと諦めてしまうよりも明らかに良い結果を得ることができます。考える力で差をつけることができるんです。
やりたいことの実現方法を考えることは、「自分がどうしたら幸せになれるのか」という問いへの答えに繋がります。「ここで一番幸せになりたい」と思う場面で自分の期待を超えるような結果を得られるよう、考える力を身に着けられると良いですね。
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人生で悩める場面に直面したとき、私たちはすぐにどう解決するかを考えてしまいがちだ。しかし本当に考えるべきなのは「どうしたらこの問題を解決できるか」ではなく「自分がどうありたいか」なのだろう。その場限りの答えを出すよりも、自分の理想に基づいて判断した方が着実に実現したい姿に近づいていくはずだ。
「キャリアをどうするか?」という大きな問いに対しても、少し先の未来に自分はどうなりたいかを考えることで、答えを見つけられそうだ。
人生で実現したいことがあるとき。論理思考は、強い武器になるといえるだろう。
文:ありぺい
イラスト:マミコ
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