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伊丹ミュージアムでの牛腸茂雄の写真展

先日、市立伊丹ミュージアムで行われている「牛腸茂雄 写真展 生きている ということの証」を見に行ってきました。彼の写真展には過去にも見に行ったことはありましたが、今回はそのときよりも展示数や資料が増えているようだったので見に行くことにしました。過去に見に行った牛腸茂雄の写真展も合わせて書いていきます。

■牛腸茂雄を知ったきっかけ

彼の事を知ったのは今から十数年前。ある大学で写真の講義を受けていて、その中で彼のドキュメンタリー映画『SELF AND OTHERS』(佐藤真監督)を見たことで知りました。その講義で彼について知った事と言えば、胸椎カリエスを患っていて、身体的ハンディを持っていた事、彼の写真は「コンポラ写真」と呼ばれるもの、インクブロット・マーブリングの作品があることでした。そして「牛腸」というあまり馴染みがない名前であることもとても印象に残った写真家でした。

■牛腸茂雄の写真展(2016年)

初めて彼の写真展を見に行ったのは2016年。六本木にあるFUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)写真歴史博物館で行われた「GOCHO SHIGEO 牛腸茂雄という写真家がいた。1946-1983」でした。壁一面に展示されていた作品は30点。その中で一番印象に残っているのが、やはり双子の女の子の写真でした。

■「『前衛』写真の精神:なんでもないものの変容」展(2023年)

今年、千葉市美術館で行われた「『前衛』写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄」展。ちょうど東京に行く予定があったので、どうせなら千葉まで行って作品展を見ようと思い行きました。また半年ほど前に日曜美術館の「友よ 写真よ 写真家 牛腸茂雄との日々」を見たこともあって、牛腸作品を久しぶりに見てみたいと思いました。見に行ってから、かなり経ってしまったので、印象に残った所だけ書いていきます。

最初に展示されていたのはウジェーヌ・アジェの作品。アジェは外国人の写真家で最初に好きになった写真家でした。次は「前衛写真」の展示になり、小石清の作品『疲労感<泥酔夢>』が目にとまり、その場で時間をかけて見ていました。この作品、以前どこかで見た記憶がありました。過去に行った作品展のチラシなどを振り返りながら探していると、2018年に東京都写真美術館で行われた「『光画』と新興写真 モダニズムの日本」展で見ていたことが作品リストを見てわかりました。気に入った作品を再び見る事が出来てとても嬉しく思いました。

大辻清司の作品では「陳列窓」「無言歌」がとても気に入りました。シュールなものからスナップ写真?まであり、面白かったです。

牛腸茂雄の作品では『日々』と『SELF AND OTHERS』の作品は2016年の写真展で見ていたので、この時は桑沢デザイン研究所に在籍していた頃の作品(気に入ったのは課題「テクスチュア」)やカラー写真での写真集『見慣れた街の中で』の作品がとても見応えがありました。物販では図録とポストカードを購入しました。

「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容(赤々舎)

■牛腸茂雄の写真展(2023年)

伊丹での写真展を見る前に、京都にあるギャラリーPURPLEで「牛腸茂雄トークイベント三浦和人 × 佐藤正子」があり参加しました。同級生だった三浦さんから桑沢時代の牛腸さんや大辻さんの話、課題が多かった事や暗室の事、そして当時の時代の事などの貴重な話を聞けて、写真展を見に行く前の予習として、とてもよかったです。また佐藤さんによる海外の写真家やカメラ雑誌などの書籍関連の話もとても勉強になる話が聞けて、良い体験ができました。


■「牛腸茂雄 写真展 生きている ということの証」

○第1会場
展示室に入ってすぐに撮影に使っていた二眼レフカメラ(ミノルタオートコード)がありました。次に「姉への手紙」をじっくりと読み、自分の写真はカメラ雑誌向きではないと書かれていたり、写真集を出すことへの強い思いが書かれていました。また手紙の中で、確かカメラ雑誌の部分で中平卓馬の名前が書かれていたのも興味深かったです。

展示されていた作品は写真集『日々』からで、スナップ的なものが多かったです。身体的なハンディがある中、カメラを持ち様々なイベントや場所に足を運び撮影をしていたことが作品を見てわかりました。何気ないものであっても、長生きできないと言われていた彼にとって、それらは特別なものだったのだろうと思いました。短編映画の中で気に入ったのは『The Grass Visitor』でした。映像の事は詳しくないけど、アングルとか各シーンの繋ぎ方とかが面白かったです。

○第2会場
写真集『SELF AND OTHERS』の作品が中心の展示でした。日曜美術館の放送やトークイベントでの三浦さんの話を聞いてから、作品を見てみると写っている人達がどういった人なのか、牛腸さんとどういった関係だったのかがわかるようになり、これまでよりも深く作品の事を考えることができました。

○第3会場
写真集『見慣れた街の中で』の作品と未完である『幼年の「時間」』の作品が展示されていました。オリジナル・ポジフィルム(複製)の展示もあり、写真作品を見つつ、フィルムも見るという流れで鑑賞ができとても楽しめました。そして写っている人達の服装や髪形、そして当時の街の姿を写した作品からその時代の雰囲気を感じ取ることができました。


牛腸茂雄が出した写真集は3冊。その3冊を3つの会場ごとに展開していた今回の写真展。各会場(展示室)が少しばかり離れていたことで、写真集を開き、見て楽しみ、見終えて閉じ、次の写真集へ行くというような写真集を楽しんでいる時と同じような感覚を味わえたような気がしました。また移動の間、余韻に浸ることもできたと思います。非常に満足のいく内容で良い写真展でした。


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