遅刻したWizard〜Sorry for Being Late〜
「え〜と。苺ショートの他に何がええかな。」
真っ青な空の下、ウキウキした足取りで俺は朝の街を歩いていた。
今日は日曜日。そして彼女の誕生日!
もうほんっっと楽しみにしてたんだよな😄
ちょっとした花束も買おかな。
楽しい想像をめぐらしていた俺は、前方の人だかりを見て足を止めた。
「邪っ魔やな〜」
5、6人ほどがスイーツショップの入口を塞ぐ形で談笑している。
その中心には、最も見たくなかった某音楽雑誌の女副編集長の姿があった。
口を開けば皮肉と嫌味と意地悪なことばかり言うので、多くのバンドマンや関係者からかなり煙たがられている。
…しかも今日はイケメン若手社員をぞろぞろ連れて、ぶりっ子しながら店長と話していた。
見つかると面倒なので、街路樹に隠れてそろ〜っと様子を伺う。
「はあ〜せっかくの休みやとゆうのに。
大名行列やあるまいし…」
あ、そうや。
ちょっといたずらしたろかな。
あることを思いついた俺は、深く息を吸って瞑想すると、素早くミニシェルティーに変身した。
「よっしゃ!完璧や」
シェルティーは勢いよく木陰から飛び出した。
ビュン!-=≡ヘ(* – -)ノ
クネクネと媚びながら、店長に話しかける副編集長へとまっしぐらに駆けるミニシェルティーの俺。
「ワンッ」
「うわっ!何だ何だ!」
「きゃあーっ 追っ払ってちょーだいっ💦」
「おい!そっちに行ったぞ捕まえろ!」
「わあ〜!俺犬苦手なんすよ〜😫」
あたふたと追いかける男性陣。
その足元を華麗にスルーしながら、俺はじゃれるフリをして副編集長のヒールの足に「オリャッ」とばかりにタックルをかました。
「ぎゃっ」
バランスを崩した副編集長は、ついでに段差に足を取られてド派手に尻餅をついてしまった。
「一体なんなのよこのバカ犬ーっ!」
「ふ、副編大丈夫ですか!」
「あ、スカートが破れてま…」
「わかってるわよっっ」
肩を震わせながら笑いを堪えているイケメン男性社員たち。
「何がおかしいのよっ
早く車呼んでちょうだいっ!
それとね!あのバカ犬の飼い主を探し出しなさい!
スカート弁償してもらうんだからっ
あ痛たたたっ 治療費も請求してやるー!」
一体なんの騒ぎかと集まった通行人たちに気づいた副編集長は、顔を真っ赤にしながらタクシーに乗り込んで去っていった。
元の姿に戻った俺は、クスクス笑いながら木陰からその光景をを見ていた。
「ん〜ちょっとやり過ぎたかな🙃」
あ、LINE。
「おーい!遅いぞSHIGE(笑)」
「ヤバい!遅刻遅刻!あ、ケーキ買わないと」
苺ショートとレアチーズ、ザッハトルテを買い込んだ俺は、彼女の家へと大急ぎで向かう。
5月の風が街路樹の葉を優しく揺らしていた。