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【感想】きっと、澄みわたる朝色よりも、

ブランド: propeller
発売日 : 2009-07-24
シナリオ : 朱門優 
原画 : やすゆき / ヨダ(SD原画)

⚠️ここからネタバレあり⚠️






◾️ネタバレ感想

作品タイトルがあまりにも素敵。
優しさに溢れた名作秋ゲー。

★はじめに

季節に合わせてビジュアルノベルを楽しむ。
おそらく一度くらいは季節を意識してプレイする作品選んだり、楽しまれたりした方は多いのでないでしょうか。
現実世界と作品世界の季節がリンクする感覚って不思議なものですよね。
本来あるはずのない季節の匂いのようなものを感じるかのようで、なんとも風情がある嗜み方だと思います。

本作の舞台は秋。
貴重な秋ゲーでございます。
本作は秋のイメージどおりで、作品の世界の山々は赤く色付き、だんだんと冬に向かっていく季節の移り変わりを感じることが出来ます。
秋って不思議と感情的なイメージを抱いてしまうのですが、本作は溢れる優しさに満たされていました。

さて、今回の感想記事は、以前に批評空間に投稿した感想に加筆修正したものになります。
いつもよりはかなりコンパクトな内容です。
お時間さえ許せば、しばしの間お付き合いください。



★作品の印象は

Copyright ©WillPlus/propeller All right reserved.

ああ、なんて優しい作品なんだろう。
心が浄化されるようで、名作秋ゲーと言われるのも納得です。
思いやりと優しさに溢れ、暖かい気持ちにさせてくれる素晴らしい物語でした。
世界観とテーマ性が抜群に良い。

純愛物語として見事。
起承転結も見事。
締め方も素晴らしい。
個人的には粗を探さない限り欠点らしきものは感じませんでした。

ただ、正直申し上げて評価が割れやすい作品でもあります。
文章は独特で、物語は伝奇を織り交ぜた複雑な展開もあり若干難解。
これは作品との相性を問われるもので、評価もそれに起因します。
ここで言う相性とは、何に重きを置いて作品に触れるかであり、テーマ性や心情表現に重きを置く方にはスンと心に流れ込んでくる感動があるはずです。
もちろん全ての方がそうであるとは言いませんが、なんとなくそんな気がします。

それでも、扱った「優しさ」のテーマ自体は非常に分かりやすく、解釈も相当深いものでした。
このポイントが刺さった方はかなり高評価になるのではないでしょうか。自分はそうでした。




★本作の伝える「優しさ」について

「優しさ」の解釈が本当に素敵でした。
この体験を例えるならば上質な道徳の授業のような。

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自分の語彙では絶対に伝えきれないほど深い解釈で、自分の優しさへの理解の浅はかさを自覚しました。

・優しさは痛みを伴う。
・優しさは世界を回っている。
・人の思いやりを大切に、ふれあいを大事に心がけている世界は素敵である。

そのなかでも自分は「優しさとは人に伝わるものである」という、いたって普通の答えに心を大きく動かされました。

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優しさと甘さは違います。
その想いには、それに至るまでに出逢いやふれあいがあり、何気ないものでも心があると受け取りました。日々成長なわけですよ。
明日は今日より優しくありたいと素直に思えました。



★純愛物語として

この物語の恋は一途でした。人を想う気持ちは優しさと共にあります。ただ、その優しさがどのような形なのかは人それぞれ。
そして優しさは、どうやら儚さとも共にあるようです。

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想い人の為に優しくある。
優しくあるから想いを持てる。


自分勝手に解釈してみましたが、優しさへの解釈ってとても深いですね。
それが純粋な想いの起因からなら尚のこと。

本作のアララギの秘めた想いも、ひよの背負った想いも果てしなく高潔なものです。
一途ヒロイン大好きなのでたまりません。

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しかも切なさの中に、あまりに大きな優しさがあるので、数多の儚い出来事を経てたどり着いた最終章で、同じ目線で想いを伝えあう笹丸とひよのやりとりは万感の思いです。
泣くよね‥‥これ。

彼女たちは想いを寄せる相手のために、自分を犠牲にする事も厭わない。
綺麗事です。分かってます。
それでもこの作品で紡がれた物語と、彼女達の想いの高潔さを目の当たりにすれば、感覚で理解するんです。そうだよねって。
繋いだ手と手のふれあいが優しい、澄みきった純愛物語であったと思います。




★作品のタイトルについて

作品の題名でここまで感動したのは初めてかもしれません。
クリアした方なら分かってもらえる感動ですよね。
全て繋がって理解する真のタイトル。

今思えば『きっと、澄みわたる朝色よりも、』は、読点で終わっている事に違和感を感じながらも、そのまま流して気にかけぬままになってました。
ここに仕掛けがあったわけです。

句読点の読点、つまり「、」は文章を分ける時に使う記号。題名を一つの文章と見れば、句点で終わるはずが読点で終わるので、まだ文章は続くと捉えるが自然。
なるほど、これはやられました。

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きっと、澄みわたる朝色よりも、
今、確かに此処にいるあなたと、
出逢いの数だけのふれあいに、
この手は繋がっている。

クリアしたからこそ、この題名の意味は泣けるんですよ。
最後までこの優しい物語に寄り添えた方なら、タイトルの伝える意味が心に沁みる。

ノベルゲー史、いや、数多の創作物の中でこんなに素敵な題名の作品が他にありますか?

うわー、まじか。これまじか。うわー、まじか。

(ぽろぽろパチパチ、ぽろぽろパチパチ)
涙を流し拍手する音↑


優しさと思いやりとに溺れます。
笹丸とひよの繋がっていた手と手。もう最高です。



◾️最後にまとめ

「優しさ」というテーマを貫いた傑作秋ゲーでした。クリア後には心に染みわたるような優しさを感じ、暖かな気持ちにさせてくれる心の物語です。
こういった作品こそ本物の名作なのだと思います。心に豊かさと学びを貰った素晴らしい作品でした。
人とのふれあいを大事に優しくあろう。
この気持ちを忘れないようにします。
ではてば、お付き合いくださりありがとうございました。

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