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『MIU404』キャッチした伊吹とすくいあげられなかった九重

「誰と出会うか、出会わないか」

西武蔵野署管内で頻発していたイタズラの通報の犯人たちは、最後にと決めたRUNで、捕まった。出会わない人なんて、出会っていないから普段はわからない。そして出会いには、運命的なものを感じて、何か意味を紐付けようとしがちだ。一人だけ行方知らずになってしまった成川は、ある男(菅田将暉)に辿り着いてしまう。

こちらから見ている側だけが知れた、成川の分岐点。

「辿る道は真っ直ぐじゃない。障害物があったり、それを避けたと思ったら横から押されて違う道に入ったり、そうこうするうちに罪を犯してしまう」

陸上部内でドーナツEPが流行し、「連帯責任」を取らされて部活は廃部。大会で売りつけられていたという他校生からの証言を聞けば、後輩たちにだって売りつけていただろう。

残された罪のない後輩たちの賞状は、部活の存在自体なかったことにする為に、シュレッターにかけられた。部室という居場所がなくなった彼らはコンビニにたむろする。そして、指導者も走る道もなくなってしまった彼らは、自分たちでルールを決め、選んだランウェイが「イタズラの通報」だった。

「俺たちはクスリなんてやってない」彼らは避けて、ただ走りたいだけだった。学校が彼らの走る道を失くし、違う道に迷い込んでしまった彼らが、罪を犯してしまったのだ。

九重「自己責任」
隊長「彼らが教育を受ける機会を損失した結果」
志摩「何かのスイッチで道を間違える」

全て正論だと思う。けれど九重が言った「自己責任」が、彼らを深く知れば知るほど、これに当てはまるとは思えなくなってしまった。志摩と伊吹は捕まえた生徒たちを連れて、拐われた元陸上部のマネージャー・真木を一緒に探す。その姿からは、彼らが正しい道へ戻れそうな行先が見えた。

しかし、成川だけは違った。成川は九重に出会ったことで、ドーナツEPを振ってニヤッと笑う赤い服の男と出会い、怪しい雲行きが見えてきている。

九重と出会わなくても、赤い服の男とは出会っていたかもしれない。けれど、志摩が転がしたピンボールが左右に置かれた障害物に当たって進んでいく様をみたとき、成川の通ってきた道には九重とぶつかったからこその赤い服の男との衝突があったのだとはっきり分かる。ここでは、かも、はない。物語であっても事実で結びつく出会いしかないし、それと同じことは現実でも言えるんだと思う。

だから、自分の体験から「あの人と出会わなければ」と思い返すことはできなかった。そして、自分が出会う人と出会わない人は選ぶことができないだと知った。成川はドーナツEPを、そしてその鍵を握っている赤い服の男なんて、一番に避けていたはずなのに、最終的に彼を今、すくい上げているのはその男なのだ。

「人によって障害物の数は違う。正しい道に戻れる人もいれば、取り返しがつかなくなる人もいる。誰と出会うか、出会わないか。この人の行先を変えるスイッチは何か。その時が来るまで、誰にもわからない」

今から、誰かと出会うことが、ちょっと恐ろしく感じた回だった。もしかしたら陣馬さんのように「正しい道に戻してやらないと」と自分と出会う人は幸せに、間違わないようにしてあげたいという気持ちを持った人もいるかもしれないし、それが一番良くて、最高な世界だ。

けれど、自分がこれから受ける影響の方が怖いと感じてしまった。今の世の中、出会いって求めればたくさんあるし、自分で動き出さず自粛生活をずっと続けていれば減っていくし。出会いがどれだけ必要なものなのか、分からなくなってしまった。

伊吹はピンボールを拾ったが、九重の足元にピンボールは落ちた。彼をすくい上げているのは赤い服の男。救ってくれた人が、良い人とは限らない世の中。

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