しあわせな国から学ぶ完璧な休息
世界幸福ランキングをご存知でしょうか。
毎年国連が発表する報告書で、世界中の国々の幸福度を評価しています。
このランキングは、各国の幸福度を数値化し、順位をつけたものです。
評価基準は以下のとおり
1GDP:経済的な豊かさ
2社会的支援:困難な時に頼れる人がいるかどうかなど、社会的なネットワークの充実度
3健康寿命:健康で長生きできるかどうか、平均寿命を基に算出
4自由度:生活の中で選択の自由があるかどうか
5寛容さ:寛容で他人を助ける姿勢がどれだけあるかを評価
6腐敗の少なさ:政府や企業の腐敗が少ないかどうか
これらの要素を基に、各国の幸福度が算出されます。
ちなみに日本は毎年50位前後を推移しています。この調査は約150カ国を対象としているので、50位はやや上位に位置するといえますが、先進国として見たときには、幸福度は低いと言えそうです。
皆さんの肌感覚では日本は何位ですか?
私としては「50位か。まぁそんなもんだろうな」といった感想です。
さて、この幸福ランキングは毎年めまぐるしく入れ替わるものではありません。
特に上位にランクされている国は、ほぼ同じ顔ぶれがランクインしています。
幸福ランキングには北欧が毎年のように上位を占めており、私が好きなデンマークは2位です。北欧は気候の厳しい環境ですが、ワークライフバランス先進国とも言われており、福祉がとても充実しているので、そういった理由もあって幸福度が高いのでしょうか。
意外なところでは、イスラエルは5位に入っています。紛争が絶えず、宗教が色濃く、日本より貧しいイメージのあるイスラエルが、日本の幸福度を遥かに上回っています。なぜでしょうか?
「人種も違えば文化も違う、風土だって違うんだから、幸福度を比べるなんてまったくのナンセンス。嫌なら日本から出ていけば?」
そういう厳しい意見もあるかとは思いますが、それで片付けてしまうのはあまりにもったいない気がします。
たとえばマラソン大会で毎年1位をとる選手と、50位で終わってしまう選手がいたとすると、1位の選手から学べることはたくさんあるはずです。それを人種やバネの違い、才能という言葉で片付けてしまったら、50位の選手は何も進歩がないままで終わってしまいます。1位の選手の習慣や練習方法、食生活など、よく研究して取り入れていくことができれば、今よりも速くなって充実した気分を味わうことができるかもしれません。
何か共通点はないのか。2位のデンマークと5位のイスラエル、このふたつの国について調べてみることにしました。
すると明らかになったのは、タイトルにもある「完璧な休息」です。
特にイスラエルにはシャバット(安息日)があります。
これはイスラエルの人口の70%以上を占めるユダヤ人の習慣で、週に1日何もしない日のことを指します。
この期間に「創造する。作業する。」という行為は禁じられています。
ショッピングセンターもレストランも閉店しますし、それどころか公共交通機関までストップし、街が静寂に包まれます。
電化製品はもちろん、スマホも使用できません。
では人々はどうやって過ごしているかというと、調理などの作業はシャバットの前日に全て済ませておきます。シャバットに入るとお祈りを捧げたり、聖書を読んだり、家族で豪華な食事を楽しみながら過ごしたり、散歩をして過ごすのが一般的なようです。
ちなみにイスラエル人は、シャバットに関係なく食事中に仕事の話と宗教の話はしないそうです。オンとオフをはっきり切り替えて、仕事中は無駄話をせず集中し、食事中にはたとえ仕事仲間との会食であろうと仕事の話は控えて、愛する家族の話をします。
仕事とプライベートをうまく切り離しているようです。
そんなユダヤ人には、非常に優秀な人が多いのです。
全世界の人口でみたユダヤ人の割合としては、わずかに0.2%程度と少数ですが、ノーベル平和賞をとった人物の実に20%以上をユダヤ人が占めています。
ユダヤ人の優秀さは、少なからずシャバットが関係しているのではないでしょうか?
ここからはデンマークについてお話しします。
デンマークは非常に小さく、人口も少ない国です。
イスラエルのシャバットに対し、デンマークには「ヒュッゲ」という感覚があります。
ヒュッゲを日本語にするのは難しく、「居心地の良い時間」や「くつろぎ」、「ほっこり」というニュアンスで表現できるかもしれません。デンマーク人はこのヒュッゲのひとときを大切にしているそうです。
国の大きさや人口で劣るぶん、デンマーク人は無駄を省いて仕事の生産性を上げています。16時になると仕事を切り上げ、あとは思い思い、ヒュッゲな自分の時間を過ごします。超個人主義なので、仕事終わりに同僚を誘っても断られるのがオチなのだとか。
デンマークでは1年を通して通常の休日のほかに、3週間前後のまとまった休みを皆がとります。プライベートが充実しているから仕事も頑張れる、という考え方のようです。国民が休みを多く取るので、そのぶん不便なことも出てくるのかもしれませんが、それでいいという共通の感覚なのでしょうか。
プライベートを充実させ、しっかり休息をとり、仕事のパフォーマンスを上げる。無駄を省くから仕事の効率も良い。楽しそうな生活ですね。
さて、「休息」について2つの国の共通点を挙げましたが、いかがでしたでしょうか?
イスラエルのシャバットとデンマークのヒュッゲは、一見異なる文化に思えるかもしれませんが、どちらも幸福感を高めるための重要な要素です。シャバットは毎週行われるものであり、物理的な活動を避け、精神的な豊かさに焦点を当てます。ヒュッゲは日常的に実践できるもので、シンプルでありながら心地よい生活を追求します。どちらも定期的な休息を通じて、持続可能な生活のリズムを作り出しています。
これらの習慣は、リラックスした時間を過ごすこと、社会的なつながりを大切にすること、シンプルさを重視すること、そして定期的な休息を取ることを通じて、心身の健康と幸福感を促進しています。
日本人はよく勤勉だと評価されますが、今の時代、それは悪習となるかもしれません。
哲学者であるラッセルはこう言います。
「勤勉は美徳という植え付けられた価値観のせいで、楽をすることは悪だとされ、人々は労働に時間を使いすぎ、日々苛立ち、時間に追われている」
本来私たちの労働時間は4時間で足りるはずだ、ともラッセルは言っています。
ラッセルの思想の正しさは、シャバットで週に1日経済がストップするイスラエルと、ワークライフバランスを徹底するデンマークの幸福度が裏付けています。
残念ながら日本人の睡眠時間は世界と比較して最低レベルで、有給取得率も世界最下位です。仕事とプライベートの境界線はどこか曖昧で、KAROSHI(過労死)という不名誉な言葉もあります。
まさに日々苛立ち、時間に追われているように思えます。
皆さんはどうお考えでしょうか?