天井の歩き方 -Uchida
私は習っていたエレクトーンの練習が好きじゃなかった。
期限の中で上手にできる様にならなければならない、毎週火曜日にあるレッスンはそんなプレッシャーを感じる。
コツコツやることが苦手というより、完璧にこなしたいという気持ちの方が強い。
1日でもそのコツコツに値できなかった日ができてしまうと、コツコツやるということ自体がもう完璧じゃなくなるからだ。
毎週火曜日までの練習量を丁寧に配分してしまうと1日1日がプレッシャーになって嫌になる。
そんな几帳面すぎる私の性格上、1週間と期限の決まっている中での練習と発表の様なものとも捉えられる毎週のレッスン日の繰り返しは好きになれなかったのだ。
そんな私は、エレクトーンの練習をしたくないとき、エレクトーンの椅子に仰向けに寝て天井を眺めて現実逃避した。
そして、よく天井を歩いていた。
わたしの家の天井を歩くには気をつけなければならないことやルールがいくつかある。
ひとつ目は天井にあるはりだ。
これによって床を歩くよりも段差が多くなるから
足元を見ながらあることは大事なこと。
扉をくぐる時も、足元には必ず段差があることもお忘れなく。
なぜなら扉というものは床から天井にかけての辺に対して、床寄りについているから、天井側には膝ほどの高さの壁がどうしても発生してしまうからだ。
ふたつ目は照明だ。
照明は当然ながら天井についているから
足元から光が自分を照らす。
足元灯のような照らされ方になるから、空間全体は薄暗い。
扉を開けるときなんかは手元は見えづらくなるので注意が必要。
みっつ目は重力だ。
逆さになると重力は少し曖昧な世界となるのが私の天井歩行論。
例えばぶら下がっているモビールや吊るし照明は逆さになる前の向きのまま。
つまりそれらは天井を歩くときにはスタンド型と呼べるものになる。
モビールと自分の背の高さなんて比べることがないから不思議ながらも楽しいのはこのときだ。
しかしこれらに触れてしまうのはNGで、あくまでも通常の重力と別の動きをしているのは自分だけだということを忘れてはいけない。
かれこれ10年以上、何回か引っ越しても天井歩きをやってきた。
大体上のルールを守れば天井は歩きやすい。
今歩いてみたい天井は、天窓のある家と三角屋根の家かな。