スペイン語学習者が教える、jaleoのかけ方上級編
フラメンコのjaleo:掛け声について再びお話します。
基本的な声のかけ方については、前回お話しました。
今回はもう一歩進んで、演者を喜ばせるための方法です。
スペイン語学習者だからこそ、できることがあります。
調子が乗ってきて、場が盛り上がります。
決まりがないとはいえ、効果的なタイミングはあります。
やたらに声を発すればいい、というわけではありません。
雰囲気を作れるようになりたいものです。
・まずは踊りや演奏をよく観察する
・出演者が発する言葉を聞き取る
・間を大事にすること
これらについて説明します。
◆ ◇ ◆ ◇
出だしの部分では、声を掛けずにじっくりと見聞きします。
ギター演奏、出演者の立ち姿勢、歌い手の声など。
その雰囲気や世界観を、味わうことから始めます。
鑑賞しながら、どんな言葉を掛けようか考えておきます。
ひと段落ついた時点で、jaleoを入れるのが理想です。
足さばき(zapateado)の時などもかけやすいです。
杖(bastón)を使った演目でも同様です。
次第に速くなっている時、もっとやれと囃し立てるように。
なお、スペイン人の演者にはjaleoを掛けないようにしています。
ものすごい上手な方に、素人が口を出すのも失礼だと思うから。
じっくり鑑賞し、最後に拍手と共にOle!と控えめに言うのみです。
俳優天本英世さんは生前、大のスペイン好きで有名でした。
フラメンコをよく知っていて、演者が手を抜くと怒鳴ったそうです。
見方が分かっていれば、臆せずに声を掛けてもいいでしょうが。
◆ ◇ ◆ ◇
気の利いたjaleoを掛けるためにどうすればいいのか?
プロの演奏家や歌い手が発する言葉を聞くのがいいです。
本場スペインで修行してこられた方も少なくありません。
いいなと思ったら、自分にも取り入れるようにしています。
また、スペインの動画を視聴するのもいいと思います。
同じ言葉ばかりにしたくないので、語彙を豊富に持ちたいもの。
何度か鑑賞し、覚えてきた言葉をいくつか紹介します。
定番の言葉に、これらを織り交ぜています。
Eso e(s), Toma que venga! いいぞ
¡Qué buen ritmo! いいリズムだ
¡Qué baila bien! いい踊りだ
¡Arriba! それそれ
¡Guapísima! (最後の演目に)最高にきれいだ
プロでないギター奏者に向けて、励ますために言います。
¡Qué sabe tocar! さすが!
※弾き方がわかっている=さすがだね
◆ ◇ ◆ ◇
フラメンコは、高尚な芸術ではなく、庶民の踊りです。
演者からすれば、黙ってみているより声を掛けてほしい。
jaleoが疲労を癒し、調子を上げてくれる効果があります。
とはいえ、なんでもありというわけにはいきません。
また、プロレスのマイクパフォーマンスとも違います。
プロレスを卑下するつもりは全くありません。
優劣じゃなくて、それぞれの場にあった掛け声がほしいだけ。
たまに取り違えていませんか?と思う観客もおられます。
内緒の話、踊りの先生でも疑問符のつく方も。
楽しみ、場を盛り上げたいという気持ちは分かりますが。
日本語にも、『間抜け』という言葉があります。
現代は周囲との歩調が悪い者、ズレている者を指しますが。
もともとは、娯楽や興行からきています。
間(ま)とは、芝居や音楽の拍手や調子のことです。
間が抜けることで、雰囲気が崩れる様を表したものです。
間抜けなんて言葉ができるくらい、拍手や調子は大事です。
それはフラメンコでも同じです。
くどく説明しましたが、間をつかんでから声を発してください。
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jaleoのかけ方について、思うことをお話しました。
私のスペイン語の生徒さんが出演した発表会でのこと。
終わってから楽屋で、jaleoが話題になったそうです。
スペイン語で声をかけてくれる人がいて、うれしかったと。
彼女は、私のスペイン語の先生なんだよって自慢したとのこと。
なお私もたまに、外したなって思うこともありますよ。
多少ならばそれもご愛嬌ということで。
お読みいただきありがとうございます。