読み手を惹きつけるべくtú:君と呼びかける
スペイン語学習初心者さんへ
人称代名詞の二人称単数túについてお話します。
たぶん、市販の教材には載っていないことです。
スペイン語には、tú/ustedという二つがあります。
学習を始めてすぐに習ったことでしょう。
親しい人に向けては、túを使うと教えられます。
親が子に対して、あるいは友人同士にやりとりに。
反対に、目上の人や親しくない人には、ustedですね。
ここで注目するのは、読み手の関心を引くための表現です。
ustedではなくて、あえてtúの形にすることがあります。
当然、動詞、所有形容詞などもそれに従います。
特に宣伝広告の文言としてよく用いられています。
純日本人の私からすれば、違和感大ありなものですが。
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画像は、ネット上によくあるものを参考に作っています。
1.No te lo pierdas. お見逃しなく
2.Ofertas para ti 君へのおすすめ
3.Tu lugar de descanso favorito 君のお気に入りの休憩の場
4.tu mejor opcion 気にとって最良の選択
これらの文言は、頻繁に使われています。
※人称代名詞は登場しませんが
1.の"No te lo pierdas"は、覚えておきたい決まり文句です。
英語で言うところの、"Don't miss it!"に相当します。
テレビ番組の予告には、必ずと言っていいほど出てきます。
2.はクリスマス商戦など、大売り出しの際のフレーズです。
3.は旅行会社が提案する旅行プランのものです。
こんな文言を、きれいな風景写真と重ね合わせています。
4.は携帯電話、保険などのサービス分野に使われています。
数あるプランの中から、あなたにぴったりの選択肢ですと。
これらは、純日本人の私からすれば違和感大アリです。
日本では、お客様は神様という考えが浸透しています。
常連客と一見さんを区別することもあるくらいですから。
しかもサイトの訪問客は、どこの誰なのかも知りません。
一見さんを君呼ばわりなんて、馴れ馴れし過ぎではないか。
初対面の人に向かって、誰も君とは言わないでしょうに。
では、背景に何があるのか、もう一歩深く考えてみます。
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スペイン語圏の宣伝広告では、一見さんもtuで呼びかけます。
他の誰でもない、読み手のあなた向けだと訴える手段です。
不特定多数向けの表現では、メッセージが伝わらないから。
対象範囲が広いと、どうしてもぼんやりしてしまいますから。
それを人称代名詞や所有代名詞の形でもって表現しています。
ちょっと外国語学習から逸脱することはご容赦ください。
キャッチコピーづくりのノウハウに属する話になります。
日本のCMでは、『そこのあなた』という呼びかけがあります。
多くの場合、俳優やアイドルが手招きし、微笑んで訴えます。
・ターゲットに向けて直接的に呼びかける
・自分事に感じてもらう
スペイン語では、品詞の形で表現しています。
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読み手に直接的に呼びかける、tuの使い方をお話しました。
ネット検索していると、頻繁にこういう事例に出会います。
最初は違和感を覚えるかもしれません。
彼らなりの表現の仕方なんだと思ってください。
お読みいただきありがとうございます。