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小児科医が教える!乳児湿疹の正しいケア方法

はじめに

乳児の湿疹は、全乳児の3分の1近くが経験するよくある悩みです。乳児の湿疹に関する基本的な情報から対処法、予防策までを詳しく解説します。乳児の健康を守るための具体的な方法を知りたい方に向けて書きました。

1-1 乳児湿疹の種類

乳児湿疹にはいくつかの種類があります。まず、乳児脂漏性皮膚炎は生後2週から2か月頃に発症しやすく、頭部や眉間などに脂っぽいカサブタができることが特徴です。また、新生児ざ瘡は顔面にニキビのような湿疹が見られます。そして、アトピー性皮膚炎は体幹や四肢にも広がる強いかゆみが特徴です。これらの湿疹は、赤ちゃんの皮膚にさまざまな症状を引き起こします。この記事では主に一番頻度の高い乳児脂漏性皮膚炎について解説します。

1-2 乳児湿疹の原因

乳児湿疹の原因は多岐にわたります。
皮脂の分泌亢進:生後2週~2か月頃の乳児は皮脂の分泌が盛んなため、皮脂を栄養源とするマラセチアなどの常在菌が増殖しやすく、これが皮膚に炎症を引き起こすと考えられています。 特に、頭部、顔面、脇の下など皮脂分泌の多い部分は、乳児脂漏性皮膚炎を発症しやすいです。

ホルモンの影響:新生児ざ瘡は、胎児期に母親から受け継いだ男性ホルモンと、生後一過性に分泌が亢進する男性ホルモンの影響で、皮脂の分泌が過剰になることが原因とされています。

皮膚のバリア機能の低下:乳児の皮膚はバリア機能が未発達なため、外部からの刺激を受けやすく、乾燥しやすい状態です。 皮膚が乾燥すると、さらに外部刺激の影響を受けやすくなり、炎症が悪化するという悪循環に陥りやすいです。

アレルギー反応:アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因や環境要因などが複雑に関係して発症すると考えられていますが、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。 食物アレルギーが原因で湿疹が出ることもあります。
接触:おむつ皮膚炎は、おむつによる摩擦や、尿や便による刺激が原因で起こります。 よだれかぶれは、よだれによる刺激が原因で、口の周りや顎などに湿疹がみられます。

真菌:おむつの中のような高温多湿の環境では、カンジダ菌が増殖しやすく、乳児分芽菌性紅斑(乳児寄生菌性紅斑)を引き起こすことがあります。
乳児湿疹は、これらの要因が単独または複合的に作用して発症すると考えられており、その原因を特定することは容易ではありません

1-3 乳児湿疹の症状
乳児湿疹の症状は種類によって異なります。乳児脂漏性皮膚炎は、頭皮や眉間、顔面などに脂っぽいカサブタが付着し、赤みのある湿疹が見られます。新生児ざ瘡は顔面にニキビのような湿疹が発生し、アトピー性皮膚炎は体幹や四肢にまで広がる強いかゆみを伴う湿疹が特徴です。

2. 乳児湿疹の対処法

2-1 自宅でできる乳児湿疹ケア


清潔: 入浴時に石鹸をよく泡立てて、やさしく洗い、その後十分に洗い流します。ゴシゴシこすったり、タオルで強く拭いたりするのは避けましょう。頭皮の痂皮は、ベビーオイルなどで柔らかくしてから洗うと、落としやすくなります。
保湿: 入浴後や洗浄後は、皮膚の乾燥を防ぐために、保湿剤を塗布します。保湿剤は、ワセリンやベビーオイル、ヘパリン類似物質などが使用されます。季節や肌の状態に合わせて、適切な保湿剤を選びましょう。

薬物療法: ステロイド外用薬は、炎症を抑える効果があり、症状に応じて使用されます。ただし、長期的な使用には注意が必要です。ステロイド外用薬の使用は、必ず医師の指示に従ってください。

その他: おむつ皮膚炎の場合は、こまめなおむつ替えと清潔を心がけ、症状がひどい場合は、薬剤の塗布が必要になることもあります。8 よだれかぶれは、よだれをこまめに拭き取り、保湿剤を塗布することで改善します。

2-2 医療機関での治療法

スキンケアのみで乳児湿疹が良くならない場合、医療機関での治療が必要です。ステロイド外用薬は炎症を抑える効果があり、症状に合わせて適切な強さのものを処方してもらいます。また、カンジダ症が疑われる場合には抗真菌薬が処方されることがあります。その他、保湿剤や軟膏などが処方される場合もあります。

2-3 効果的なスキンケア製品の選び方

赤ちゃんのスキンケア製品は低刺激性で無香料、無着色、アルコールフリーのものを選びましょう。また、ワセリンなど保湿効果の高い成分が配合されたものが適しています。アレルギーテスト済みの製品や、使用感が良く、毎日続けやすいものを選ぶことが重要です。

3. 乳児湿疹の予防策

3-1 毎日のスキンケアルーティン

毎日、ぬるめのお湯で優しく洗い、清潔を保ちます。入浴後や乾燥が気になる時には、こまめに保湿剤を塗布しましょう。また、爪を短く切り、湿疹を掻かないようにします。

3-2 環境改善と生活習慣

ハウスダストやダニ対策をしっかり行い、清潔な環境を保ちます。乾燥しやすい季節には加湿器を使用し、適切な湿度を保ちます。刺激の少ない綿100%の衣服を選び、赤ちゃんの肌に優しい環境を整えます。

4. 乳児湿疹に関するQ&A

Q 石鹸で洗うのは良い?

洗浄剤の種類: 新生児・乳児用の洗浄剤には、沐浴剤、固形石鹸、液状石鹸、泡状石鹸、ベビーシャンプーなど様々な種類があります。

沐浴剤は洗浄力がマイルドですが、洗い流す必要がありません。
固形石鹸は洗浄力が強いため、週に1回程度の使用が推奨されています。
液状石鹸や泡状石鹸は、沐浴剤よりも洗浄力が強く、毎日使用することができます。
ベビーシャンプーは、頭髪の汚れや匂いが気になる場合に使用します。
石鹸の選び方:
•低刺激性で、弱酸性、無香料、無着色であるものを選びましょう。生後1か月頃までは、石鹸の使用を控えて、ぬるま湯だけで優しく洗う方法もあります。石鹸を使用した後、肌が赤くなったり、かゆがったりする場合は、使用を中止して医師に相談しましょう。

Q アトピーとの見分け方は?


アトピー性皮膚炎と乳児湿疹は、症状が似ていて、特に初期段階では見分けるのが難しい場合があります。
発症時期と経過: 乳児脂漏性皮膚炎は生後1~3ヶ月頃に多く見られ、生後3ヶ月頃を過ぎると自然に軽快していくことが多いです。一方、アトピー性皮膚炎は生後2ヶ月頃から発症し、2歳までに発症するケースが多いです。乳児脂漏性皮膚炎が治らずアトピー性皮膚炎に移行したり、一度治まった後にアトピー性皮膚炎を発症するケースもあります。

症状が出る部位: 乳児脂漏性皮膚炎は、頭皮、眉間、顔面、脇の下など皮脂の分泌が多い場所に湿疹が出ることが特徴です。アトピー性皮膚炎は顔や頭だけでなく、体幹や四肢にも症状が出ます。特に、首、肘の内側、膝の裏側など、関節が曲がる部分に赤い湿疹が出やすいです。

乳児湿疹は、さまざまな原因で生じる湿疹の総称であり、アトピー性皮膚炎もその一つに含まれます。、乳児湿疹は、生後1年半程度で治癒するものを指し、それ以降も続く場合はアトピー性皮膚炎と診断されるという、昔の考え方もあります。しかし、早期に治癒するアトピー性皮膚炎も存在するため、この定義は現在では必ずしも当てはまらない可能性があります。
生後間もない時期の湿疹は、アトピー性皮膚炎かどうかの判断が難しいケースも少なくありません。湿疹が長引いたり、症状が重い場合には、自己判断せず、医師の診察を受けるようにしましょう。

5. まとめ

乳児湿疹は多くの親が直面する問題ですが、適切な知識と対処法を持つことで、安心してケアを行うことができます。この記事を参考に、赤ちゃんの健康を守りましょう。

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