ポルノグラフィティ「君の愛読書がケルアックだった件」をイメージした小説4
想像した日は、なかなか訪れなかったが、挨拶を交わしたり、少しずつ話をする機会が増えただけで僕は嬉しかった。
藤野から借りたケルアックは全て読み終えた。藤野は好きなだけ借りていていいと言ってくれたが、自分で買うことにした。漫画しかなかった僕の本棚にケルアックが仲間入りしたのを見ると、胸がちょっと高鳴る。
「ケルアック、増えたな~。」
放課後、漫画を借りるために藤野は僕の家に遊びに来た。そして僕の本棚を見ながら、藤野は感慨深げに言った。
「でしょ?」
その言葉にドヤ顔で応える。
「今まで漫画しか読まなかった今井がね~恋の力はすごいな。」
「からかうなよ。」
「ホントのことだろ?」
「ところで藤野ってたくさん本を読んでいるけど、自分で書いたりはしないの?」
新井さんの話題になっては分が悪い。僕は話題を無理矢理変えた。
「俺は読む専門。」
「そういうもんか~。書いてたら、これ勧めたんだけどな。」
藤野が僕の携帯を覗き込む。
そこに映し出されていたのは、高校生を対象とした小説の応募サイト。
「書いていたとしても応募しないな。選ばれるのは本当に才能があるやつだけだよ。そういえば今井、明日新井さんと日直だな。」
せっかく話題を変えたのに、いとも簡単に戻された。
「え!?」
「良かったな。」
藤野はニヤニヤしながら僕を見る。
「そろそろ怒るぞ。」
「悪い悪い。じゃあ、これ借りていくな。」
お目当ての漫画を見つけると、藤野は僕の家から帰っていった。新井さんと日直?全然、知らなかった。ついに想像した日が現実のものとなるかもしれない。
胸を踊らせて眠りについた僕だったが、期待は裏切られた。
なぜなら、新井さんは学校に来なかったのだから。