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ポルノグラフィティ「君の愛読書がケルアックだった件」をイメージした小説9

僕は時間さえあれば新井さんのお見舞いに行くようになった。お見舞いに行く度に新井さんは嬉しそうに笑って僕を迎えてくれた。そして小説の新作を僕に見せてくれた。その感想や学校の出来事など、他愛ないのない話をするこの時間が僕にとってはかけがえのないものになっていた。

”今日もお見舞いに行ってもいいかな?”

お見舞いに行く前に、新井さんへ連絡をする。返信は程なくして返ってきた。

”ごめん。今日は体調が優れない。”

いつもとは違った返信だった。

”気にしないでゆっくり休んで。お大事に。”

前に会った時、新井さんは少し痩せたように見えた。心配ではあったが、この返信からして行くのは迷惑だろう。何日か経ったらまた連絡しよう。

数日後にまた連絡をした。いつもは割りとすぐ返信があるのだが、その日は返信がなかなかこなかった。
胸騒ぎがする。

「あ、今井~今日、お前の家に…。」

「藤野、ごめん!今日は用事があるから帰るね。」

「お、おぅ。じゃあな。」

僕の慌てぶりに藤野は驚いていたが、今はそれに構っている暇はなかった。一刻も早く病院へ向かいたい。

息を切らしながら、新井さんの病室へ入る。新井さんが寝ているであろうベッドの周りには医師と看護婦が何やら焦っている様子で処置をしている。僕は新井さんのベッドに駆け寄った。

「今井君!?」

新井さんのお母さんの驚いた声が聞こえたが構わず僕は新井さんのベッドへ向かった。

「!?君、離れなさい。」

医師の制止の声も今の僕には聞こえない。

「新井さん!!」

「今井君?」

微かだが新井さんの声が僕の名前を呼んだ。僕はとっさに新井さんの手を握る。温かかった。

「そうだよ!新井さん、しっかりして!!」

「今井君、来てくれたんだ。最近、会えなくてごめんね。」

「そんなこと気にしなくていいよ。」

僕の声は震えていた。

「なんて顔してるのよ。」

「ごめん…。」

「旅に出るだけだよ。」

「え?」

新井さんの顔を見る。新井さんは優しく微笑んだ。

「だから大丈夫。」

その瞬間、新井さんのベッドの近くにあった機械からアラ—ムが鳴り響いた。僕は看護婦さんにベッドから引き離され新井さんはベッド毎、病室から連れ出された。

「今井君。悪いけど、今日はもう帰りなさい。」

床に座り込んだままの僕に新井さんのお母さんは言った。

どうやって家に帰ってきたのだろう。あの後からの記憶がない。気づけば朝になっていて、胸騒ぎを覚えたまま学校へ向かった。

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