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けいれんを止めよう! ②

11 月 1 日なりました。今年も後 2 ヶ月ですね。と月並みな挨拶をしてみますが、、、この後はあっという間に年末になり、年が明けると一気に年度が替わる、、というのが毎年恒例になっています。一日一日を大事に生きたいものです。

月初は「読んで頂いた記事ランキング」を、と思いますが、予約投稿していますので、これは明日ですね。お楽しみに、というか、楽しみにしている人はいるのか、、、

ということで、けいれんをまとめておきます。thiopental の話でした。

Thiopental にまつわる誤解

thiopental の添付文書(インタビューフォーム)によると、

チオペンタールを3.5mg/kg静脈内投与したとき、血漿中濃度の減少は3相性を示し、それぞれの半減期は2.8分、48.7分、5.7時間である

とあります。実際、thiopental を鎮静を目的に単回静注で用いた場合、数分で覚醒します。これをもって、thiopental の作用時間は非常に短いから安全だ、と考えていらっしゃる先生方に多く出会います。

そもそも、thiopental は麻酔の導入薬ですので、呼吸を止めて、挿管をするために用いるような薬ですので、いわゆる気道確保を前提としない鎮静に用いるのはどうなんだ、と思っていますが、実臨床では汎用されている背景もありますね。MRI の鎮静になど努々つかわれませぬよう、、、と願いますが、、、本日はそこではなく drug induced coma を目的として使用されるときのお話しです。

thiopental は単回投与と持続投与で全く異なる薬物動態を示します。以下の図をご覧ください。

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持続投与を中止した際の半減期を、context - sensitive half time (CSHT)と呼び、単回投与の半減期と区別します。thiopental は脂溶性であるが故、持続投与時には細胞内に蓄積されていきます。この為、持続投与を行った場合の半減期は覿面に延びていきます。例えば 5 時間持続投与した場合の半減期は150 分ということになります。インタビューフォームに記載されている半減期は単回投与のもので、持続投与は前提とされていません。この為、このあたりを誤解して記憶されている先生もおられるようです。

また、前述したように、呼吸循環動態に対して大変強い影響を与えます。特に持続投与に当たっては血管作働薬(つまり強心薬、昇圧薬)が必要になることもしばしばです。

そもそもけいれんに対して thiopental の持続投与を考慮するような状況では集中治療室での管理になるのでしょうが、このあたりに習熟した集中治療医と協力して診療に当たることがとても重要だと思います。

propofol について

けいれん重積に対する介入として、プロポフォールが効果的であるという報告が散見され、海外のガイドラインなどでは成人を中心に選択薬として記載されています。

一方で、プロポフォール投与により、横紋筋融解等が生じることがあります。これは、プロポフォール注入症候群(Propofol infusion syndrome, PRIS)と呼ばれ、死亡率が非常に高いことが知られています。当初は小児で発見されたため、わが国のプロポフォールの添付文書では「小児での人工呼吸器を使用するための鎮静に用いること」を禁忌としています。しかし、のちに成人でも小児でもその発生頻度と重症度に差異がないことがわかっています。

プロポフォールはけいれんを止める作用としては、チオペンタールと同等とする報告もあり、大変有効な薬であることに間違いはありませんが、重篤な副作用には十分に配慮し、有効性と危険性のバランスを考慮して使用すべきです。

【参考文献】
1. Epilepsy Curr. 2016 Jan-Feb;16(1):48-61
2. Cochrane Database of Systematic Reviews 2018, Issue 1. Art. No.: CD001905.
3. プロポフォールの小児集中治療領域における使用の必要性、及び、適切な使用のための研究
https://www.jsicm.org/news-detail.html?id=65



小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン